日本で開発されたペネム系抗菌薬であるファロム錠(一般名:ファロペネム)。
黄色ブドウ球菌、化膿レンサ球菌、肺炎球菌、腸球菌等のグラム陽性菌、大腸菌、インフルエンザ菌等のグラム陰性菌、バクテロイデス・フラジリス、アクネ菌等の嫌気性菌に対して抗菌力を示します。
ファロム錠について作用機序や薬局で聞かれる質問を中心に解説していきます。
ファロム(ファロペネム)作用機序・メカニズム
ファロム(ファロペネム)は細菌の細胞壁の合成を防ぐことで抗菌作用を示します。
細胞壁は人間にはないため、細菌に選択的に効果を示します。
細菌の細胞壁はペプチドグリカンといって糖鎖をペプチドとよばれるもので架橋のように結合された状態になっています。
細胞壁が作られる際に、ペニシリン結合蛋白(PBP)が酵素として働くのですが、ファロム(ファロペネム)はPBPと結合し、細胞壁を作る酵素としての働きを阻害します。
ペニシリン耐性菌に対しても有効
抗生物質で問題となるのが、抗生物質が効かなくなる耐性菌の存在です。
ペニシリンなどの抗菌薬の構造にあるβラクタム環を分解して不活性化させる「β-ラクタマーゼ」を細菌が産生し耐性菌となるケースがあるのですが、ファロム(ファロペネム)はβ-ラクタマーゼに分解されにくい特徴があります。
ファロム錠効能・効果
ファロム錠に効能・効果のある細菌は下記のとおりです。
〈適応菌種〉
ファロペネムに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、腸球菌属、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、プロテウス・ミラビリス、インフルエンザ菌、ペプトストレプトコッカス属、バクテロイデス属、プレボテラ属、アクネ菌
ファロム錠に効能・効果のある適応症は下記のとおりです。
〈適応症〉
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、ざ瘡(化膿性炎症を伴うもの)、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、精巣上体炎(副睾丸炎)、バルトリン腺炎、子宮内感染、子宮付属器炎、涙嚢炎、麦粒腫、瞼板腺炎、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、外耳炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎
ニキビ(ざ瘡)にも処方される
ファロムは化膿しているざ瘡(ニキビ)にも適応があります。
日本皮膚科学会のガイドラインでも「推奨する」に位置付けられているため抗菌薬の中では処方される頻度の高い薬剤です。
ファロム妊娠・授乳中の使用
妊婦さんにファロム錠を処方する場合、「有益性が危険性を上回る場合にのみOK」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔妊娠中の投与に関する安全性は確立していない〕
引用元 ファロム錠インタビューフォーム
授乳中については、製薬メーカーの資料では母乳中に移行することから「授乳を避けること」とされています。
本剤投与中の授乳は避けさせること。〔本剤はヒト母乳中への移行が認められている〕
引用元 ファロム錠インタビューフォーム
ファロムの副作用
製薬メーカーが市販後の実施した調査での主な副作用は17,383例中下記のとおりです。
下痢・軟便 (2.1%)
腹痛 26 件(0.2%)
発疹 25 件(0.1%)
発疹がでたり、水のような下痢になった場合は主治医に相談するようにしましょう。
ロキソニン・バファリン・イブとファロムの飲み合わせ
「ファロムを服用しているけど市販の解熱鎮痛薬を併用してもいい?」
薬局でも相談を受ける機会がありますが、ファロムとロキソニンやイブプロフェンなどの解熱鎮痛剤との併用は特に問題ありません。
ファロムとアルコールの飲み合わせ
「ファロムを服用しているけどお酒を飲んでいい?」
薬局で相談を受ける機会がありますが、アルコールとは併用注意にはなっていないため飲み合わせ自体は問題ありません。
しかし細菌感染時には体に負担のかかることは極力控えた方がいいので飲みすぎないように注意しなければいけません。