心不全や、肝臓、腎臓が原因による浮腫(むくみ)をとる目的で処方されるのがルプラック(一般名:トラセミド)です。

ルプラックはループ系利尿剤に分類され、他のループ利尿剤に比べて利尿作用は緩やかでかつ持続力があるのが特徴です。

ルプラックについて作用機序や、同じループ利尿薬であるラシックス(一般名:フロセミド)との違いについて解説していきます。

ルプラック(トラセミド)作用機序(メカニズム)

ルプラック(トラセミド)の利尿作用のメカニズムについて簡単に解説していきます。

まず腎臓はどのような働きをしている臓器なのでしょうか?

腎臓の働きをざっと挙げてみます。

  • 血液をろ過し老廃物や塩分を尿として排泄する
  • 体に必要なものを血液中に再吸収する
  • 体液量を調整する
  • 血圧を調整する
  • 血液をつくる命令を出すホルモンを分泌する

このように腎臓はさまざまな役割があります。

その中でも特に重要な働きである「老廃物や塩分などを尿として排泄し必要なものは血液中に再吸収する点」に着目し開発されたのがルプラックです。

腎臓の尿細管は近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管に分かれますが、ルプラック(トラセミド)が作用するのはヘンレループです。

ヘンレループではNa+、Cl、K+が血液中に再吸収されているのですが、ルプラック(トラセミド)はヘンレループでNa+、Cl、K+が血液中に再吸収されるのを防ぎます。

Na+(ナトリウムイオン)が動くと水分も一緒に動きますので、血液中に水分が再吸収されるのを抑え、尿として排出するのです。

ループ利尿薬で低カリウム血症状が起こる理由

ループ利尿薬ではカリウムの排泄が増えることで血中のカリウムが低下することが報告されています。

低カリウム血症が起こる理由を説明します。

ループ利尿薬はヘンレループでNaの再吸収を阻害します。

Naが高濃度で遠位尿細管や集合管にたどりつくと、Na+-K+交換系が働き、Kの排泄が促進し、血中のKが低下するのです。

抗アルドステロン作用により低カリウム血症がおこりにくい

ループ利尿薬の中でもルプラック(トラセミド)は低カリウム血症が起こる確率が低い傾向にあります。

なぜルプラック(トラセミド)は低カリウム血症が起こりにくいのでしょうか?

理由は抗アルドステロン作用があるためです。

アルドステロンは腎臓の遠位尿細管でナトリウムの再吸収、カリウムの排泄を促すホルモンです。

ルプラック(トラセミド)はアルドステロンの作用を抑える特徴があり、カリウムの排泄が抑えられ、低カリウム血症が起こる確率を低くすることができるのです。

ラシックス(フロセミド)とルプラック(トラセミド)の違い

ルプラック(一般名:トラセミド)と同じループ利尿薬にラシックス(一般名:フロセミド)という薬があります。

どちらも作用機序は同じで、腎臓の尿細管のヘンレループでNaの再吸収を抑え、尿として水分を排泄します。

ルプラックを販売する製薬メーカーの資料によると、フロセミドに比較して、利尿作用が約10~30倍、抗浮腫作用が約10倍強力とのことです。

また作用発現時間や効果持続時間はほとんど変わりはありません。

薬品名
(一般名)
作用発現時間最大効果
発現時間
持続時間
ラシックス
(フロセミド)
1hr1〜2hr6hr
ルプラック
(トラセミド)
1hr1〜2hr6〜8hr

またルプラックに特有の作用として抗アルドステロン作用があります。

通常、ループ利尿薬はカリウムの排泄が促進し、血中のカリウムの値が低くなることがあるのですが、ルプラックは低カリウム血症が起こりにくい特徴があります。