水虫カンジダだけでなく脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)にも効能・効果のある抗真菌薬がニゾラールクリームです。

頭皮に適したローションの規格もあります。

ニゾラールクリーム・ローションについて薬局で指導する内容をまとめました。
ニゾラールを使用する方の疑問の解決に繋がれば幸いです。

有効成分・作用機序

ニゾラールクリーム2%、ローション2%には1g中にケトコナゾールが20mg配合されています。

有効成分である「ケトコナゾール」は真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。

より細かく作用機序を解説します。

真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールは下記のように合成されます。

メバロン酸

スクアレン

ラノステロール

エルゴステロール

エルゴステロールはメバロン酸からラノステロールを経て合成されます。

ラノステロールはエルゴステロール合成酵素ラノステロール-14-α-デメチラーゼ)によって変換され最終的にエルゴステロールが作られます。

ニゾラール(ケトコナゾール)はエルゴステロール合成酵素(ラノステロール-14-α-デメチラーゼ)の働きを抑えることで、真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を抑え抗真菌作用を示すのです。

人間の細胞膜に「エルゴステロール」は存在しないことから人の細胞を傷つけず、真菌のみに作用するのが特徴です。

効能・効果

ニゾラールの効能・効果です。

1. 白癬:足白癬、体部白癬、股部白癬
2. 皮膚カンジダ症:指間糜爛症、間擦疹(乳児寄生菌性紅斑を含む)
3. 癜風 (でんぷうう)
4. 脂漏性皮膚炎

抗真菌薬の中で脂漏性皮膚炎に適応があるのはニゾラールのみとなっています。

水虫・カンジダの塗り方

白癬、皮膚カンジダ症、癜風に対しては、1日1回患部に塗布します。
タイミングは皮膚が清潔な入浴後が推奨されています。

塗る範囲は基本的には症状のない部分(足全体)に塗ることが推奨されていますが、主治医からの指示のもと使用するようにしてください。

患部はできるだけ清潔に乾燥させることを心がけてください。

脂漏性皮膚炎の塗り方(顔・頭皮など)

脂漏性皮膚炎は皮膚に常在しているマラセチアというカビの一種が原因とされています。
マラセチアは皮脂を栄養分としているため、皮脂が多くなると増殖します。

脂漏性皮膚炎の場合はニゾラールを1日2回患部に塗布します。

水虫治療の場合は1日1回で十分ですが、脂漏性皮膚炎は1日2回の方が1回より効果発現が早く、効果もよいというデータがあったため「1日2回」と定められています。

タイミングは入浴後や洗顔後のタイミングで塗るのが最も効果的です。

頭皮にはローションが処方されますので手に薬を出して、患部より広く塗るようにしましょう。
ローションを直接容器のまま患部に付けると、容器が汚染されたり、患部を傷つけて炎症を悪化させる恐れがあるため手にとって指で塗るようにしましょう。

ステロイド(リンデロンなど)が併用された場合

脂漏性皮膚炎では炎症を抑えるステロイド薬(リンデロンやリドメックスなど)とニゾラールがセットで処方されることがあります。

赤みや痒みがひどいところにステロイドを塗るように指示された場合は、先にニゾラールを塗った後にステロイド薬を塗るのが一般的な使用方法になります。

ニキビには効果ある?

ニキビの原因となるのは「アクネ菌」や「表皮ブドウ球菌」といった細菌です。

ニゾラールには細菌を抑える作用はないためニキビには効果はありません。

妊娠・授乳中の使用

妊婦さんの場合、「治療上の有益生が危険性を上回る場合にOK」となっています。

妊婦、授乳婦及び妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると 判断される場合にのみ投与すること。
引用元 ニゾラールインタビューフォーム

皮膚からはほとんど全身に吸収されませんが、動物実験で経口投与した際に催奇形性が報告されていますので自己判断では使用しないようにしましょう。

授乳中の場合、添付文書に注意書きはなく「授乳を続けていい」と指導されるケースがあります。

市販薬では売っている?

ニゾラールの有効成分であるケトコナゾールの入った市販薬は販売されていません。

現役薬剤師Yu現役薬剤師Yu

抗真菌薬の中でも脂漏性皮膚炎に処方されるのがニゾラールです。
薬局やドラッグストアでは抗真菌薬入りのシャンプーやボディソープが売っていますので、少し値段は高いですが一緒に使うと効果的です。