下痢や便秘があったり、IBSと呼ばれる過敏性腸症候群に処方されるのがセレキノン錠(一般名:トリメブチンマレイン酸塩)です。

「なんとなく胃腸の調子がよくない」
「下痢と便秘を繰り返す」
「胃腸の動きが悪い」

といった方に処方される機会の多い薬です。

セレキノンについての特徴や薬局で聞かれることついてまとめました。

効能・効果

セレキノンの効能・効果です。

慢性胃炎における消化器症状(腹部疼痛,悪心,噯気(おくび),腹部膨満感)
過敏性腸症候群

上記の疾患がセレキノンが保険で処方できる対象になります。

過敏性腸症候群はIBSとも呼ばれ、ストレスによる腹痛や下痢にも効果があります。

IBSは神経質な人がなりやすい疾患であることから、パキシルやジェイゾロフトといったSSRIなどの抗うつ薬と併用されるケースがあります。

作用機序(メカニズム)

セレキノン(トリメブチンマレイン酸塩)は「胃腸の運動を適正に調節する薬」です。

消化管には平滑筋という筋肉があるのですが、平滑筋が収縮することで胃腸は動きます。

セレキノンは消化管の平滑筋に直接作用し、胃腸の動きが悪いときは活発にさせ、胃腸の動きが強すぎるときは抑えるといった、胃腸運動を調整する特徴があります。

では具体的にどのように調整するのか説明します。

ここからは少し専門的な話になります。

消化管平滑筋に対する作用

消化管平滑筋には細胞膜上Ca2+チャンネルK+チャンネルといって、Ca2+(カルシウムイオン)やK+(カリウムイオン)が通る部分があり、消化管平滑筋の収縮や弛緩をコントロールしています。

消化管平滑筋が過剰に収縮している時は、Ca2+チャンネルが過剰に開き、細胞内にCa2+が流れ込んでいる状態になっているのですが、セレキノンは過剰なCa2+チャンネルを抑えることで弛緩しやすい状態にもっていきます。

消化管平滑筋が弛緩しやすい時は、K+チャンネルが過剰に開いた状態になっているのですが、セレキノンは過剰なK+チャンネルを抑えることで収縮しやすい状態にもっていきます。

オピオイド受容体を介する作用

セレキノンは消化管の運動をコントロールするオピオイド受容体(κ、μ)にも作用することで、消化管運動の異常を正常に戻します。

消化管運動が過剰な時は、副交感神経からアセチルコリンの分泌が過剰になっています。
セレキノンは副交感神経のオピオイドμ受容体とκ受容体に作用することでアセチルコリンの分泌を抑え消化管運動を抑えます。

消化管運動が低下している時は、交感神経が興奮しアセチルコリンの分泌が少なくなっています。
セレキノンは交感神経のオピオイドμ受容体に作用することで交感神経の興奮を抑え、アセチルコリンの分泌を増やし消化管運動を亢進させます。

このようにセレキノンは胃腸の運動状態によって、働きを変え、胃腸の運動をコントロールするのです。

妊娠中・授乳中の服用

妊婦さんの場合、「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」となっています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。
〔妊娠中の投与に関する 安全性は確立していない。〕

引用元 セレキノン添付文書

催奇形性などは報告されておらず絶対使用してはいけない「禁忌(きんき)」ではありませんので、妊婦さんにも使用されるケースはあります。

また授乳中の場合は「授乳を避けること」となっています。

授乳中の婦人に投与することを避け,やむを得ず投与する場合には授乳を中止させること。
〔授乳中の投与に関する安全性は確立していない。〕

引用元 セレキノン添付文書

 

ジェネリック医薬品との違い

セレキノンには薬価の安いジェネリック医薬品が存在します。

  • トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「トーワ」
  • トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「アメル」
  • トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「オーハラ」
  • トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「サワイ」
  • トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「ツルハラ」
  • トリメブチンマレイン酸塩錠100mg「日医工」

先発品に比べて添加物に違いはありますが、効能・効果や有効成分は同じとなっています。

市販薬のセレキノンSとの違い

セレキノンの有効成分であるトリメブチンマレイン酸塩錠が入った市販薬が販売されています。

病院で処方されるセレキノン錠と同じで1錠中にトリメブチンマレイン酸塩錠が100mg入っていますので効き方にも変わりありません。

「市販で買うのと病院を受診するなら値段はどちらが安くなりますか?」

といった質問を受けることがあります。

市販のセレキノンSは定価が20錠あたり1780円(税別)ですので、1錠あたり89円(税別)になります。

病院で処方されるセレキノンだと1錠あたり15円、ジェネリック医薬品だと1錠あたり5.8円程度ですので、長期で服用するなら市販より病院で処方してもらう方が安くなります。

市販のセレキノンSは過去に病院で「過敏性腸症候群」と診断された方しか購入できませんので、市販薬を購入の際は薬剤師に相談するようにしてください。