気管支喘息の際に、気管支を広げる目的で処方されるのがテオドール錠(一般名:テオフィリン徐放錠12〜24時間)です。
テオドール錠についての特徴や注意点、薬局で患者さんから聞かれる質問をまとめました。
テオドール錠を服用する方の悩みの解決にお役に立てると幸いです。
有効成分(テオフィリン徐放錠12〜24時間)
テオドール錠には有効成分であるテオフィリン徐放錠(12〜24時間持続タイプ)が50mg、100mg、200mg入った規格が存在します。
作用機序
テオフィリンは「気管支の拡張作用(メイン)」と「気管支の炎症を抑える作用」の2つを合わせ持った薬です。
少し専門的な話になりますが、狭くなった気管支を拡げるのに「cAMP(サイクリックエーエムピー)」という物質が関与しています。
cAMPは「アデニル酸シクラーゼ」によって生成され、「ホスホジエステラーゼ」によって分解されます。
テオフィリンはcAMPを増やすアデニル酸シクラーゼを活性化し、分解するホスホジエステラーゼを阻害することで、結果的にcAMPを増やし気管支を拡張させるのです。
有効血中濃度を超えると中毒症状がでる
テオフィリンの有効血中濃度は5〜15μg/mlと狭いのが特徴です。
血中濃度が有効値を超えると中毒症状がでてきてしまいます。
20μg/ml以上
悪心、嘔吐、下痢
40μg/ml以上
不整脈、けいれん
などが起こります。
そのため、テオフィリンは緩やかに吸収される「徐放錠」となっています。
ユニフィルLAとの違い
テオフィリン製剤にユニフィルLA錠があります。
テオドール錠はテオフィリン徐放錠が12〜24時間持続に対して、ユニフィルLAは24時間持続となっており、より持続性があるのがユニフイルLAとなっています。
そのため、用法に違いがあります。
- ユニフィルLA :1日1回夕食後
- テオドール錠:1日2回朝・寝る前
飲み忘れた場合の対応
テオドール錠は1日2回朝・寝る前に服用する薬剤です。
飲み忘れに気付いた場合、次回分との間隔が近い場合はとばさなければいけません。
服用間隔が短くなると中毒症状がでてきてしまうためです。
目安は次回服用まで6時間以内の場合はとばすとよいでしょう。
2回分を一度に服用するのは絶対に避けてください。
24時間持続で1日1回服用タイプのユニフィルLAやユニコンの場合は、その日中であれば気付いた時に服用することとなっています。
コーヒー(カフェイン)との飲み合わせ
テオドールを服用中にカフェインを多く含むコーヒーや紅茶を大量に摂取すると、動悸や手の震えなどが強く現れることがあります。
テオフィリン製剤を服用中はカフェインを含むものは極力控えるようにしましょう。
セントジョーンズワートとの飲み合わせ
ハーブティやサプリメントに含まれるセントジョーンズワート(別名:セイヨウオトギリソウ)と併用すると、テオドールの代謝が促進され、血中濃度が低下してしまいます。
そのためテオドール錠を服用中は、セントジョーンズワートの摂取は控えるようにしましょう。
タバコの影響(CYP1A2)
テオフィリンは肝臓の代謝酵素であるCYP1A2(シップワンエーツー)で代謝されます。
タバコを吸うと代謝酵素であるCYP1A2が誘導されるため、タバコを吸わない人に比べて、テオフィリンが分解されやすく効きにくい状態になっています。
突然禁煙してしまうと、今まで効きにくい状態だったのが、急に効きすぎてしまい中毒症状が現れやすくなってしまいます。
禁煙を希望する場合は、タイミングを主治医と相談するようにしましょう。
炭火焼肉に注意
炭で肉を焼く際に生じる「ポリサイクリックカーボン」がテオフィリンの代謝酵素を誘導することが報告されています。
そのため、炭火焼肉を大量に摂取する場合、薬が効きにくくなることがありますので念のため注意してください。
発作時に効果ある?
テオドールは徐放錠で、緩やかに吸収されるため発作の予防に適した薬剤です。
そのため発作時に頓服で服用するのは絶対に避けてください。
発作時には即効性のある吸入薬が使用されます。
妊娠中・授乳中の服用
妊婦さんには「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。
動物実験(マウス,ラット,ウサギ)で催奇形作用等の生殖毒性が報告されている。また,ヒトで胎盤を通過して胎児に移行し,新生児に嘔吐,神経過敏等の症状があらわれることがある。引用元 テオドール錠インタビューフォーム
また製薬メーカーの説明書では授乳中の場合は母乳に移行するため「授乳を避けること」となっています。
本剤投与中は授乳を避けさせること。
〔ヒト母乳中に移行し,乳児に神経過敏を起こすことがある。〕引用元 テオドール錠添付文書
大分県の産婦人科医会、小児科医会、薬剤師会の研究チームによると
通常量で蓄積毒性起こらないと思われる 。
3ヶ月未満、特に生後15日まで排泄遅く、 この時期において注意が必要。引用元 大分県「授乳と薬剤」研究会
とされています。
海外の基準では「授乳と両立可能」となっていることもあり、医師によって判断が異なるケースがあります。