「おしっこが我慢できない・・・」
「トイレに間に合わず漏らしてしまうことがある・・・」
「夜何度もおしっこで目が覚めてしまう・・・」
このような頻尿を改善する目的で処方される薬がトビエース(一般名:フェソテロジンフマル酸塩)です。
トビエースについて作用機序(メカニズム)や特徴、薬局で患者さんから聞かれる質問をまとめました。
効能・効果(過活動膀胱とは?)
トビエースの効能・効果です。
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
過活動膀胱はおしっこに行きたい気持ちを我慢できない「尿意切迫感」があることを必須とし、
頻尿(1日8回以上)や夜間頻尿(1日1回以上)の症状を伴います。
またトイレに行くまでに我慢できずおしっこを漏らしてしまう切迫性尿失禁(読み方:せっぱくせいにょうしっきん)を伴うこともあります。
作用機序(メカニズム)
トビエース(フェソテロジン)は膀胱平滑筋の収縮を抑えることで頻尿を改善します。
過活動膀胱とは言葉の通り、膀胱を収縮する筋肉(膀胱平滑筋)が過剰に活動することによって、尿が少ししか膀胱に溜まっていないのにトイレに行きたくなってしまいます。
ここからは少し専門的な話になりますが、アセチルコリンがムスカリン受容体に結合すると膀胱平滑筋が収縮します。
トビエースはアセチルコリンがムスカリン受容体に結合するのを邪魔することで膀胱の収縮を抑え、膀胱へ尿が溜まる量を増やし、尿の回数を減らします。
デトルシトールとの違い・プロドラッグとは?
トビエース(フェソテロジン)はデトルシトール(酒石酸トルテロジン)の活性代謝物のプロドラッグです。
少し難しい言葉がでてきましたね。
「活性代謝物」と「プロドラッグ」についてもう少し詳しく説明します。
まず活性代謝物について説明します。
薬を服用すると代謝酵素によって代謝されるものがあります。
代謝されたものが「薬としての効果を発揮するもの」を活性代謝物といいます。
活性代謝物には、
・代謝前と代謝物の両方が効果を発揮するもの
・代謝されて初めて効果を発揮するもの
の2つのパターンがあります。
プロドラッグとは、薬が腸から血液中に吸収されて初めて効果を発揮するように設計された薬のことをいいます。
デトルシトールもトビエースもどちらも「5HMT」とよばれる活性代謝物に変身して効果を発揮します。
しかしそれぞれ変身の仕方に違いがあります。
デトルシトールは肝臓の代謝酵素のCYP2D6によって「5HMT」に変身します。
しかしCYP2D6は個人差があるため、変身できる量に個人差が出てきてしまいます。
一方でトビエースはCYP2D6の代謝を必要とせず「5HMT」に変身されるのが特長です。
そのため薬剤師によっては
「CYP2D6の個人差よってデトルシトールの効果も変わる」
と認識される場合もありますが、
製薬メーカーの説明書によるとデトルシトールの成分であるトルテロジンも5HMTと同様の薬理作用があるため「CYP2D6の個人差によって薬理活性の影響をほとんど受けない」とされています。
口の渇き・便秘の副作用がでる?
トビエースは高い確率で「口の渇き」や「便秘」といった副作用がでてしまいます。
緊張して口が渇いた経験はないでしょうか?
緊張する場面では副交感神経に比べて交感神経が優位になるため口の渇きがでます。
トビエースの口渇のメカニズムも全く同じです。
トビエースは「アセチルコリンの働きを抑える」=「副交感神経の働きを抑える」作用があります。
そのため交感神経が優位になり「口渇」がでてしまうのです。
また交感神経が優位になると消化管の運動が悪くなりますので「便秘」になってしまいます。
口が渇く時に「水」や「お茶」を摂っても口渇は改善されません。
シュガーレスの飴やガムを摂ったり、唾液腺のマッサージで対処しましょう。
唾液腺マッサージについてはこちらに詳しくまとめられています。
口渇や便秘で日常生活に支障がでるようであれば主治医に相談するようにしましょう。
飲み忘れた場合の対応
トビエースの飲み忘れに気付いた場合、当日中であれば気付いた時に服用して問題ないとされています。
主治医から指示がある場合はそちらに従うようにしてください。
市販の風邪薬との飲み合わせ
トビエースは抗コリン作用のある薬です。
市販の風邪薬の中で咳止めや鼻水を抑える成分の中に抗コリン作用があるものがあります。
併用すると「口渇」「眠気」「便秘」などの副作用が強く現れることがあります。
絶対に併用してはいけないわけではないですが、慎重に併用しなければいけませんので必ず薬剤師に相談するようにしましょう。