タバコは「百害あって一利なし」と言われるように、タバコを吸うことは「害」にしかならないと思っています。
私はこの記事を書いている時点で32歳ですが、タバコを吸う同級生と吸わない同級生とでは明らかに肌の質が異なります。
タバコを長年吸っている人の皮膚は乾燥し、血色も悪く、歯茎や歯も変色が進んでいます。
もちろんタバコを吸うことで、心のバランスをコントロールできるかもしれませんが、心だけでなく体の健康を守るためにもタバコを吸う患者さんには禁煙を勧めるようにしています。
最近ではCMの影響からか禁煙治療を始める男性が増えてきました。
以前は貼るタイプやガムタイプのニコチンの入ったお薬でした。
「カブれる」「ムカムカする」「気持ち悪くなる」といった副作用が問題だったのですが、保険が効く経口タイプの薬が登場してから「経口薬」が禁煙補助の主流となっています。
禁煙補助薬のチャンピックスについて、薬局で患者さんからよく聞かれる質問を中心にご紹介したいと思います。
禁煙補助薬チャンピックス
こちらの写真はスタートパックといって初めてチャンピックスが処方される時に出されるパック製剤です。
成分
バレニクリン酒石酸塩という成分が有効成分です。
日本では初めてニコチンを含まない禁煙補助薬になります。
作用機序
なぜチャンピックスが禁煙治療に効果があるのか?
作用機序(メカニズム)について説明します。
タバコを吸うと脳内にあるα4β2 ニコチン受容体というところにニコチンが結合し、ドパミンと呼ばれる快楽物資が放出されます。
チャンピックスはこのα4β2 ニコチン受容体に結合することでニコチンより少量のドパミンを放出させ、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減させます。
また同時にニコチンがα4β2 ニコチン受容体に結合することもブロックするため、喫煙による満足感を得られにくくなります。
飲み方・服用期間
チャンピックスの飲み方について説明します、
1~3日間(喫煙OK)
0.5mgを1日1回食後に服用します。
4~7日間(喫煙OK)
0.5mgを1日2回朝夕食後に服用します。
8日目~(ここから禁煙スタート)
1mgを1日2回朝夕食後
服用期間は?
治療期間は12週間となっています。
副作用
チャンピックスの主な副作用は、嘔気(28.5%)、不眠症(16.3%)、異常な夢(13.0%)、 頭痛(11.6%)鼓腸(8.3%)です。
いつから副作用がでるの?
特に8日目の1mgに量を増やしてから吐き気が強く出ることがありますので、ナウゼリンやプリンペランという吐き気止めが一緒に処方されることがあります。
また、めまい、眠気、意識障害等があらわれ、自動車事故に至った例も報告されているので、自動車の運転は避けるようにとなっています。
便秘やお腹がはるのは副作用?
チャンピックスの副作用の中でも便秘や鼓腸(お腹にガスがたまる)が高い頻度で起こることがあります。
チャンピックスを服用中は極力水分を多く摂取し、食事の際はゆっくりよく噛むことを心掛けてください。
効果(成功率)
「チャンピックスって実際どうなの?」
「これ飲んで本当に禁煙できるの?」
と薬局では良く聞かれますが、一番は本人に禁煙する意思があるかどうかです。
12週間しっかりと治療が完了した場合の禁煙成功率のデータが販売元のファイザーさんが発表しているので抜粋します。
第13~24週持続禁煙率
70.6 %(425/602)
第 13~52 週持続禁煙率
44.0 %(265/602)
12週間しっかり治療できた場合は、半年間の禁煙できる確率が7割、1年間禁煙できる割合が半分近くとなっています。
空腹時と食後どっちで服用
チャンピックスの用法は「食後」となっています。
しかし、朝食事を摂らなかったり、食事が不規則なビジネスマンからは「空腹時に飲んでもいい?」という質問を受けることがあります。
食事との関係についてファイザーさんが実験しているので抜粋します。
健康成人喫煙者12例にバレニクリン1mgを空腹時及び食後に単回経口投与し、薬物動態を比較 した。 AUC0-∞、AUC0-tlast及び Cmaxの投与群間の比の 90%信頼区間は、生物学的に同等とみなされる範囲 (80~125%)内であったことから、バレニクリンの薬物動態に対する食事の影響は認められなかった。
つまり、食後だろうが空腹時だろうが効果に差はないですが、ムカツキなどの副作用が空腹時だと強くでる可能性がありますので、極力何か食べて服用してください。
吐き気がひどい場合
もし、1mgを服用始めて吐き気やムカツキがひどい場合は、0.5mgに量を減らして処方してもらうことも可能です。
受診の際にドクターに吐き気やムカツキがひどいので量を減らせないか相談してみてください。
他のニコチン製剤との併用
ニコチネルパッチやニコレットなどの他のニコチン製剤と併用すると副作用が強く出る可能性があるため控えなければいけません。
他の禁煙補助薬と併用しないこと。(本剤の有効性及び安全性は単剤投 与により確認されており、他の禁煙補助薬と併用した際の有効性は検討されておらず、安全性についても経皮吸収ニコチン製剤との併用時に副作用発現率の上昇が認められている)
妊娠中の服用
「子供が産まれるから禁煙したい」
「妊婦だけど服用できる?」
という質問を受けることがあります。
基本的には「治療上の有益性が上回る場合のみOK」となっています。
下記にファイザーさんの資料を抜粋します。
本剤の妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。 バレニクリンをラットの妊娠~授乳期間中に経口投与した試験において、出生児に体重及び受胎能 の低下及び聴覚性驚愕反応の亢進が認められた。また、妊娠ウサギにバレニクリンを経口投与した ところ、胎児の体重低下が認められている。以上のことから、妊娠又は妊娠している可能性のある 婦人に本剤を投与する際には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
授乳中の服用
「チャンピックスを服用中に授乳はさせていいの?」
と聞かれることがありますが基本的には授乳は中止をしなければいけません。
下記にファイザーさんの資料から抜粋します。
本剤の授乳婦における乳汁中移行性については不明だが、ラットの妊娠~授乳期間中に経口投与した試験において、本剤が乳汁中に排泄されることが報告されている。以上のことから、授乳中の婦人への本剤の投与は避け、やむを得ず投与する場合には授乳を中止すること。