緑内障の治療は基本的には1種類の点眼薬からスタートしますが、
単剤で眼圧が下がらなかった場合に、別の種類の目薬が追加されることがあります。
目薬を併用する場合、5〜30分の間隔をあける必要がありますが、
最近では2つの成分が入った配合剤で処方される機会が増えてきました。
ミケルナ配合点眼液(ラタノプロスト+カルテオロール塩酸塩)は緑内障治療薬の配合剤で、
キサラタン点眼液とミケランLA点眼液2%が配合されています。
ミケルナについて作用機序や点眼時の注意点についてまとめました。
有効成分・作用機序(メカニズム)
ミケルナ配合点眼液(ラタノプロスト+カルテオロール塩酸塩)は「房水の排泄を促す作用」と「房水の産生を抑える作用」の2つの働きで眼圧を低下させます。
配合成分別の働きは下記の通りです。
有効成分 | 働き 作用機序 |
---|---|
ラタノプロスト | 房水の排泄促進 FP受容体刺激 |
カルテオロール塩酸塩 | 房水の産生抑制 β遮断 |
眼圧は房水の産生と排泄によって調整されているのですが、
房水の産生が多かったり、房水の排泄が上手くいかなくなると眼圧が上昇してしまいます。
緑内障治療薬は大きく分けて2つに分類されます。
- 房水産生を抑える薬
- 房水の流出を促す薬
房水の流出を促す薬は「流出する経路」によってさらに2つに分類されます。
- 繊維柱帯-シュレム管経路(主経路)
- ぶどう膜強膜流経路(副経路)
房水の排泄の割合は繊維柱帯-シュレム管経路の方が高いため、
主経路は繊維柱帯-シュレム管経路、副経路がぶどう膜強膜流経路とされています。
ミケルナに含まれる「ラタノプロスト」は房水排泄促進薬の中でも副経路であるぶどう膜強膜流経路に作用する薬です。
もう少し詳しいメカニズムについて説明します。
体内にはPGF2α(プロスタグランジンF2α)という物質があり、FP受容体に結合するとぶどう膜強膜流経路の抵抗が減り、房水の排泄が促される点に着目されて開発されたのがラタノプロストです。
ラタノプロストはプロスタグランジンF2αのようにFP受容体に作用し、ぶどう膜強膜流経路の抵抗を減らし、房水の排泄を促します。
そしてミケルナに含まれる「カルテオロール塩酸塩」は交感神経β遮断作用により房水の産生を抑えます。
このように、ミケルナ配合点眼液は「房水の排泄を促す薬」と「房水の産生を抑える薬」を配合させ2つのアプローチで眼圧を低下させるのです。
着色防止のために液を拭き取る
ミケルナ配合点眼液を点眼し、こぼれた液をそのままにしておくと、付着した場所が黒っぽく変色する「眼瞼色素沈着」の副作用が報告されています。
ミケルナの配合成分である「ラタノプロスト」が皮膚に付着するとメラニンが増加するため黒っぽく変色してしまうのです。
そのため、点眼した後はティッシュなどで目の周りを拭くことが推奨されていますが、お風呂に入る前に点眼しお風呂で目の周りの皮膚を洗い流すか、もしくは点眼後に洗顔をするように僕は薬局で指導しています。
まつ毛が増える理由
ミケルナ配合点眼液を点眼すると、
「まつ毛が増えた」
「まつ毛が濃くなった」
といった眼周囲の多毛化の副作用が高い確率で報告されています。
ミケルナに配合されている「ラタノプロスト」にまつ毛の成長期を延長させる作用があるためです。
片方の目だけに使用を続けると、片側だけのまつ毛が濃くなられた患者さんと遭遇することもあります。
点眼後に洗顔する理由は着色防止だけでなく、このような発毛を抑える目的もあるのです。
併用時の間隔は10分以上
ミケルナ配合点眼液を他の目薬と併用する場合、主治医から特別指示がない場合はミケルナを最後に使用します。
もしミケルナを先に使用した場合は10分以上は間隔をあけなくてはいけません。
ミケルナに含まれる「カルテオロール塩酸塩」の持続性を発揮させるためアルギン酸という添加物が入っています。
他の目薬との間隔が近いと、併用薬やミケルナ自身にも影響がでてくるためです。