アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症の進行抑制に処方される薬がアリセプト錠(一般名:ドネペジル塩酸塩)です。
最近は薬価の安いジェネリック医薬品で処方される機会も増えてきました。
認知症の症状、アリセプト(ドネペジル)の作用機序や、薬局で患者さんから聞かれる質問を中心にまとめました。
中核症状と周辺症状(BPSD)
認知症の症状には中核症状と周辺症状の2つがあります。
周辺症状はBehavioral and Psychological Symptoms of DementiaからBPSD(ビーピーエスディー)とも呼ばれます。
中核症状の症状
中核症状の具体的症状は下記のとおりです。
- 記憶障害
- 見当識障害(例 時間の認識ができなくなる)
- 失語(例 言葉がでてこない)
- 失行(例 野菜を等間隔に切れない)
- 理解・判断力の低下
周辺症状(BPSD)は行動異常と心理症状に分類
行動異常の例
- 暴言・暴行(易攻撃性)
- 活動障害(徘徊・無目的・無意味な行動)
- 食行動の異常(過食・異食・拒食)
- 睡眠覚醒障害(不眠・レム睡眠行動異常)
心理症状の例
- 不安
- 多幸
- 妄想・幻覚
- 自発性・意欲の低下
- 易怒性
認知症の初期症状では、時間や場所が分からなくなったり、簡単な計算ができない、言葉が出ないなどの中核症状が現れ、中核症状によって今までのような生活が送れなくなる不安や焦りから周辺症状(BPSD)が現れると考えられています。
アリセプトの規格
アリセプトには下記の規格が存在します。
- アリセプト錠3mg・5mg
- アリセプトD錠3mg・5mg・10mg
- アリセプト細粒0.5%
- アリセプトドライシロップ 1%
- アリセプト内服ゼリー 3mg・5mg・10mg
アリセプト内服ゼリーははちみつレモン風味がついています。
アリセプト(ドネペジル)作用機序
アリセプト(ドネペジル)は認知症そのものを治すのではなく、認知症の進行を抑える作用があります。
アルツハイマー型認知症は、脳の中に異常なたんぱく質がたまり、シミ(老人斑)ができたり、神経細胞の中の繊維にねじれ(神経原線維変化)が起こります。
これらによって脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの量が低下することが記憶障害の原因と考えられています(コリン欠乏仮説)。
アセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)という酵素によって分解されてしまいます。
アリセプト(ドネペジル)は脳内に移行し、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の働きを阻害することで、アセチルコリンの分解を抑え、脳内のアセチルコリンの量を増やします。
脳内のアセチルコリンを増やすことで神経伝達を促進させ認知症の進行を抑えると考えられています。
軽度〜高度のアルツハイマー型認知症に適応がある
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬の認知症治療薬にはレミニール(一般名:ガランタミン臭化水素酸塩)、イクセロン・リバスタッチ(一般名:リバスチグミン)、アリセプト(一般名:ドネペジル塩酸塩)があります。
2017年時点ではレミニールとイクセロン・リバスタッチは「軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症」の適応となっていますが、アリセプトは「高度のアルツハイマー型認知症」にも適応があるのが特徴です。
アリセプト(ドネペジル)は食後服用?
「食事を取れない場合にアリセプト(ドネペジル)飲ませてもいいですか?」
と質問を受けることがあるのですが、食事でも空腹時でも吸収に差はありません。
しかし「吐き気」や「食欲不振」といった消化器系の副作用が起こりやすいことから、極力何か食べて服用するのがよいと考えられます。
アリセプトドライシロップは水に溶かさないといけない?
アリセプトドライシロップは服用直前に水に溶かして服用するドライシロップ製剤ですが、粉のまま服用しても効果に差はないとされています。
アリセプトD錠の飲み方
アリセプトD錠は口の中で溶けるタイプの薬です。
口の中に入れて唾液で溶かしてそのまま飲み込むか、コップ半分くらいの水で服用します。
寝たきりの場合は、水なしで服用すると腸に届きにくくなる可能性があるため水で服用することをオススメします。
アリセプト(ドネペジル)飲み忘れた場合
通常は飲み忘れに気づいた場合は「気づいた時に服用すること」となっています。
ただし「半日以上過ぎた場合は飛ばして次回から正しい時間に服用すること」とされています。
主治医から特別な指示がある場合はそちらに従うようにしましょう。
ジェネリック医薬品(ドネペジル)との違い
アリセプト錠、アリセプトD錠、アリセプト内服ゼリーには薬価の安いジェネリック医薬品が存在します。
ドネペジル塩酸塩+メーカー名の名前がついています。
添加物は先発品のアリセプトと違いはありますが、有効成分は同じとなっています。
レビー小体型認知症の進行抑制の適応については2017年時点で先発品のアリセプトのみとなっています。