高血圧に処方される利尿薬にセララ(一般名:エプレレノン)という薬剤があります。
セララ(エプレレノン)はカリウム保持性利尿剤といわれ、カリウムの血中濃度を低下させずに、体内の余分な水分を排泄させます。
セララ(エプレレノン)の作用機序や特徴について解説していきます。
作用機序(メカニズム)
セララ(エプレレノン)は腎臓でナトリウムや水の再吸収を抑えることで、余分な水分を体から排泄させます。
具体的にどのように作用するのか解説していきます。
腎臓の尿細管は大きく下記の4つに分類されます。
- 近位尿細管
- ヘンレループ
- 遠位尿細管
- 集合管
セララ(エプレレノン)が作用するのは遠位尿細管です。
遠位尿細管にはアルドステロンというホルモンが結合するアルドステロン受容体があります。
アルドステロンがアルドステロン受容体に結合すると、Na(ナトリウム)や水分が血液中に再吸収され、代わりにK(カリウム)が排泄されます。
セララ(エプレレノン)はアルドステロンがアルドステロン受容体に結合するのを邪魔する作用があるため、水分が血液中に再吸収されるのを抑え、尿から水分を排泄させるのです。
そのため体を循環する血液の量が減り、血圧が低下します。
アルドステロン受容体は腎臓だけでなく、心臓、血管、脳にも存在します。
アルドステロンがこれらに存在する受容体に結合すると、血管が繊維化したり心血管系の損傷や心肥大、心室性不整脈を引き起こしてしまいます。
セララ(エプレレノン)は心血管系の損傷を保護したり、抗心不全作用があります。
そのため高血圧症だけでなく、慢性心不全にも処方されるケースがあります。
アルダクトン(スピロノラクトン)とセララ(エプレレノン)の違い
セララ(エプレレノン)と同じカリウム保持性利尿剤にアルダクトン(スピロノラクトン)という薬があります。
どちらも作用機序は同じで腎臓の遠位尿細管でアルドステロンがアルドステロン受容体に結合するのを邪魔することで、水分が血液中に再吸収されるのを抑え、尿から水分を排泄させます。
一番の違いはアルドステロン受容体への選択性です。
セララ(エプレレノン)は選択的アルドステロンブロッカー(SAB:Selective Aldosterone Blocker)と呼ばれ、アルドステロン受容体に選択的に結合します。
しかしアルダクトン(スピロノラクトン)はアルドステロン受容体以外にもアンドロゲンやプロゲステロンといった性ホルモンの受容体にも結合してしまいます。
そのためアルダクトン(スピロノラクトン)を服用すると男性の場合は女性化乳房や、女性の場合は月経不順、多毛などの副作用が現れることがあります。
併用禁忌薬
セララ(エプレレノン)は一緒に服用できない併用禁忌(へいようきんき)薬が存在します。
カリウム保持性利尿薬
理由:血清カリウムが上昇するため
- スピロノラクトン(商品名:アルダクトンA)
- トリアムテレン(商品名:トリテレン)
- カンレノ酸カリウム(商品名:ソルダクトン)
代謝酵素のCYP3A4を強く阻害する薬
理由:セララ(エプレレノン)の代謝が阻害されるため
- イトラコナゾール(商品名:イトリゾール)
- リトナビル(商品名:ノービア)
- ネルフィナビル(商品名:ビラセプト)
カリウム製剤(高血圧症で処方される時のみ)
理由:血清カリウムが上昇するため
- 塩化カリウム(商品名:塩化カリウム、スローケー)
- グルコン酸カリウム(商品名:グルコンサンK)
- アスパラギン酸カリウム(商品名:アスパラカリウム、アスパラ)
- ヨウ化カリウム(商品名:ヨウ化カリウム)
- 酢酸カリウム(商品名:酢酸カリウム)