爪白癬(つめはくせん)は名前の通り、爪にできる水虫です。
爪白癬に処方される塗り薬がクレナフィン外用液(一般名:エフィナコナゾール)です。
クレナフィン爪外用液は、市販薬としては売っておらず、病院で顕微鏡や培養などで「爪白癬」と確定診断された場合のみ処方されます。
クレナフィン爪外用液について作用機序や使い方、薬局で患者さんから聞かれる質問をまとめました。
爪白癬(爪水虫)とは?
爪白癬はTrichophyton rubrumやTrichophyton mentagrophytesといった真菌が主な原因となる爪の感染症です。
治療せずに放置すると、爪が分厚くなったり、変形し、歩行にも支障がでてきてしまいます。
また家族へ感染することから、爪白癬は早めの治療が必要となってきます。
従来の外用薬では爪の奥まで薬が浸透しないため内服薬(飲み薬)で治療が行われていましたが、肝臓に負担がかかったり、他の薬との飲みわせ(相互作用)に問題があったり、内服薬が適さない患者さんもいらっしゃいました。
爪の奥まで浸透する爪水虫専用の塗り薬の誕生によって、今まで飲み薬が使えなかった患者さんにも使えるようになりました。
クレナフィン(エフィナコナゾール)作用機序
クレナフィン爪外用液は爪のケラチンに対して親和性(結合性)が低いため、爪の奥まで浸透することができます。
クレナフィン爪外用液の有効成分である「エフィナコナゾール」は真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。
より細かく作用機序を解説します。
真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールはざっくりと下記のように合成されます。
メバロン酸
↓
スクアレン
↓
ラノステロール
↓
エルゴステロール
エルゴステロールはメバロン酸からラノステロールを経て合成されます。
ラノステロールからエルゴステロール合成酵素(ラノステロール-14-α-デメチラーゼ)によって最終的にエルゴステロールが合成されます。
クレナフィン(エフィナコナゾール)はエルゴステロール合成酵素(ラノステロール-14-α-デメチラーゼ)の働きを抑えることで、真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を抑え抗真菌作用を示すのです。
人間の細胞膜に「エルゴステロール」は存在しないことから人の細胞を傷つけず、真菌のみに作用するのが特徴です。
クレナフィン塗り方・使い方
クレナフィン爪外用液は1日1回使用します。
皮膚が清潔な状態で塗るのがよいため、入浴後が推奨されています。
- 患部の水気や汗などを拭き取ります
- 容器を下にして「ハケ」に薬が浸透するようにします
容器を押さないように注意 - ハケを使って爪全体に塗ります
爪と皮膚の間全体に塗りましょう - 皮膚についた液はティッシュや綿棒で拭き取ります
爪が伸びた状態だと、皮膚と爪の隙間にしっかり浸透しないため、爪はこまめに切っておきましょう。
開封後の期限は4週間
クレナフィン爪外用液は開封して4週間経過した場合は、汚染したり薬の成分が変質している可能性があるため残薬は使用してはいけないこととなっています。
どれくらい塗る?治療期間は?
クレナフィン爪外用液は真菌によって一旦変化した爪の見た目を改善する薬ではないため、基本的には新しく爪が生え変わるまで治療は続きます。
爪が生え変わる期間は足や手の指によって異なりますが半年〜1年となっています。
効果は?効かない?
「クレナフィン爪外用液を使っているけど効かない・・・」
といった声を薬局で聞くことがあります。
製薬メーカーの臨床試験によるとクレナフィン爪外用液を52週間(約1年間)使用したケースで656例中117件(17.8%)が完全に治癒したとデータがでています。
うち日本人での完全治癒率は184例中53件(28.8%)となっています。
このように完全治癒率は決して高くありませんので、水虫治療は根気よく続けていかなければいけません。
クレナフィンは1本で何日分?
「クレナフィン爪外用液は何日分使えるの?」
薬局でも時々質問を受けます。
塗る爪の大きさや、爪の数によって異なってきますが、販売元の科研製薬のホームページに使用量の平均データがあったので抜粋します。
国際共同第Ⅲ相試験(DPSI-IDP-108-P3-01)においてクレナフィンを塗布した患者さんの平均罹患爪数は3.8枚であり、2週間の平均使用量は約2.5mLでした
引用元 科研製薬ホームページ
つまり平均的な治療(爪3〜4枚)においては3.2週間前後(約22日)で1本(4ml)を使い切ることとなります。