テトラサイクリン系抗菌薬の抗生物質であるビブラマイシン錠(一般名:ドキシサイクリン塩酸塩 略号DOXY)。

皮膚科領域でニキビざ瘡治療の内服薬として処方される機会の多い薬剤です。

ビブラマイシンがどのような薬か、解説していきたいと思います。

ビブラマイシン作用機序・メカニズム

ビブラマイシン(ドキシサイクリン)は細菌のたんぱく質の合成を阻害することで抗菌作用を示します。

ここからは少し専門的は話になります。

細菌のたんぱく質合成の過程

DNA
↓(転写)
mRNA
↓(翻訳)
たんぱく質

たんぱく質はDNAからmRNAを経て合成されます。
mRNAからたんぱく質に翻訳される際に活躍するのがリボソームとよばれる器官です。

リボソームはアミノアシルtRNAと結合することでたんぱく質への翻訳作用を発揮します。

リボソームは50Sと30Sに分けられるのですが、ビブラマイシン(ドキシサイクリン)はリボソーム30Sと結合することで、リボソームがアミノアシルtRNAに結合するのを防ぎ、細菌のたんぱく質が作られるのを阻害する作用があります。

ビブラマイシン効能・効果

ビブラマイシンに効能・効果のある細菌は下記のとおりです。

<適応菌種>
ドキシサイクリンに感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、淋菌、炭疽菌、大腸菌、赤痢菌、肺炎桿菌、ペスト菌、コレラ菌、ブルセラ属、Q熱リケッチア(コクシエラ・ブルネティ)、クラミジア属

ビブラマイシンに効能・効果のある適応症は下記のとおりです。

<適応症>
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、乳腺炎、骨髄炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、膀胱炎、腎盂腎炎、前立腺炎(急性症、慢性症)、尿道炎、淋菌感染症、感染性腸炎、コレラ、子宮内感染、子宮付属器炎、眼瞼膿瘍、涙嚢炎、麦粒腫、角膜炎(角膜潰瘍を含む)、中耳炎、副鼻腔炎、歯冠周囲炎、化膿性唾液腺炎、猩紅熱、炭疽、ブルセラ症、ペスト、Q熱、オウム病

ビブラマイシンはニキビへ処方頻度が高い

ビブラマイシンは皮膚科のDrからざ瘡(ニキビ)の治療薬として処方されるケースが多くあります。

日本皮膚科学会では抗菌薬の中でも最も評価の高い「炎症性皮疹に強く推奨する」に位置付けられているからです。

ニキビ治療薬としては同じテトラサイクリン系抗菌薬のミノマイシンが抗菌作用は同程度とされていますが、「めまい」の副作用が問題となることから皮膚科学会ではビブラマイシンの方がやや評価が高くなっています。

歯の着色・エナメル質形成不全のため8歳未満の子供に注意

ビブラマイシンのようにテトラサイクリン系に分類される抗菌薬に特有の副作用で、歯の着色や歯のエナメル質の形成不全が問題になることがあります。

そのため歯が形成される時期(特に8歳未満の小児)には、他の薬剤が使用できない場合にのみ使用するようにされています。

食欲不振・嘔吐など消化器系の副作用があり

製薬メーカーの資料によると、主な副作用は悪心・嘔吐、食欲不振等の消化管障害が10.93%で報告されています。(9505例中)

サプリメント(鉄・カルシウム)との併用に注意

ビブラマイシンなどテトラサイクリン系の抗菌薬は金属イオンとキレートを作り吸収されにくくなってしまいます。

  • カルシウム
  • マグネシウム
  • アルミニウム
  • 鉄剤
  • ビスマス塩

これらの成分が入った医療用医薬品、市販薬、サプリメントを併用する場合は2〜4時間は間隔をあけなくてはいけません。

妊娠・授乳中のビブラマイシンの服用

ビブラマイシンの妊婦さんへの処方は下記のとおり「有益性が危険性を上回る場合にOK」となっています。

妊娠後半期の投与により、胎児に一過性の骨発育不全、歯牙の着色・エナメル質形成不全を起こすことがあり、また、動物実験で胎仔毒性が認められているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上まわると判断される場合にのみ投与すること。

引用元 ビブラマイシン錠インタビューフォーム

授乳中にビブラマイシンの処方する場合は「授乳を中止させること」となっています。

母乳中へ移行することが報告されているので、授乳中の婦人には投与しないことが望ましいが、投与する場合には授乳を中止させること。

引用元 ビブラマイシン錠インタビューフォーム

現役薬剤師Yu現役薬剤師Yu

ビブラマイシンは食道で滞留すると食道潰瘍を引き起こす可能性がありますので、多めの水で服用し、服用後すぐに横にならないようにしましょう。