高脂血症(脂質異常症)の中でも、中性脂肪(TG)が高い場合に処方されるのがトライコア錠やリピディル錠です。
どちらも「フェノフィブラート」が有効成分となっており、フィブラート系に分類される薬です。
フィブラート系の代表的な薬剤にはベザトールSR錠があります。
フェノフィブラートの作用機序(メカニズム)や特長についてまとめました。
ジェネリック医薬品はある?
フェノフィブラートを有効成分とする薬は下記の2つが販売されています。
- リピディル錠53.3mg、80mg
- トライコア錠53.3mg、80mg
どちらも先発医薬品となっていて、53.3mgと80mgのジェネリック医薬品は存在しません。
効果
フェノフィブラートの効果は主に下記の4つがあります。
製薬メーカーの資料をもとに、実際にどれくらいの数値を改善するのかを記載しました。
- 中性脂肪(TG)低下作用:40〜48%
- HDLコレステロール増加作用(善玉):35〜36%
- LDLコレステロール低下作用(悪玉):18〜25%
- 総コレステロール低下作用:12〜17%
作用機序(メカニズム)
フェノフィブラートがなぜ高脂血症に効果を示すのか、作用機序(メカニズム)について説明します。
ここからは少し専門用語もでてきますがご了承ください。
フェノフィブラートは肝臓のペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α(PPARα:読み方ピーパーアルファ)を活性化させる働きがあります。
PPARαを活性化することで大きく4つの作用があります。
- 中性脂肪(TG)の合成を抑え、分解を促進し血中TGを下げる
- HDLコレステロール(善玉)を上昇させる
- 総コレステロールを低下させる
- LDLコレステロール(悪玉)を低下させる
それぞれの作用機序について説明していきますね。
中性脂肪の低下作用
PPARαが活性化されると、中性脂肪を分解するLPLが活性化されます。
LPLには中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解する作用があります。
またフェノフィブラートは肝臓での中性脂肪の合成も抑える働きがあります。
HDLコレステロールの増加作用
PPARαが活性化されるとHDLコレステロールの構成成分であるApoA-1,ApoA-2というタンパク質を増加させ、HDLコレステロールを増加させます。
総コレステロール・LDLコレステロールの低下作用
フェノフィブラートは肝臓でのLDLコレステロールの合成を少しですが抑える働きがあります。
肝細胞内のLDLコレステロールが減ると、血液中からのLDLコレステロールの取り込むが促進され、結果的に血中のLDLコレステロールを低下させるのです。
尿酸低下の作用機序
フェノフィブラートは尿酸値も改善させる作用があります。
高尿酸血症を伴う高脂血症患者に対し、フェノフィブラート錠剤159.9mg~160mgに相当する用量を1日1回8週間投与した試験において、血清脂質全般改善度「中等度改善」以上の改善率は78.3%(54/69 例)であった。また、投与前に約8mg/dLであった血清尿酸値は投与8週後には約6mg/dL以下まで低下しており、尿酸値の低下率が15%以上である中等度改善以上の症例は23/30例(76.7%)であった。
引用元 リピディル インタビューフォーム
尿酸は通常は腎臓の糸球体でろ過をされた後、近位尿細管にある尿酸トランスポーター(URAT1)と呼ばれるポンプ機能によって90%近くが身体の中に再吸収されます。
フェノフィブラートは尿酸を身体に取り込むポンプである尿酸トランスポーター(URAT1)を阻害する作用があります。
そのため尿酸が身体の中に再吸収されず、外に排出させる働きがあるのです。
妊娠・授乳中の使用
妊婦さんには「禁忌」となっており、投与できない薬になっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある女性には投与しないこと(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)
引用元 リピディル添付文書
また授乳中の方にも母乳中に移行するため「投与しないこと」とされています。