高脂血症(脂質異常症)の中でも特に中性脂肪(TG:トリグリセリド)が高い場合に処方されるのがフィブラート系のベザトールSR錠(一般名:べザフィブラート)です。

中性脂肪の基準値である150mg/dlを超えると高いとされるのですが、中性脂肪は食事や運動によって変動が激しいのが特徴です。

ベザトールSR錠について、薬局で相談を受ける内容や、患者さんへの指導内容をまとめました。

SRの意味

Sustained Release=徐放

の略でゆっくり徐々に薬を放出し、血液中の薬の濃度を安定させるという意味があります。

ジェネリック医薬品との違い

ベザトールSRには薬価の安いジェネリック医薬品が販売されています。

  • ベザフィブラートSR錠「サワイ」
  • ベザフィブラートSR錠「日医工」
  • ベザフィブラート徐放錠「JG」
  • ベザフィブラート徐放錠「ZE」
  • ベザフィブラート徐放錠「トーワ」
  • ベスタリットL錠
  • ミデナールL錠
  • ベザレックスSR錠

先発品と添加物に違いはありますが、有効成分や効能・効果は全く同じとなっています。

働き・特長

ベザトールSRには主に下記の4つの作用があります。

数値は製薬メーカーの試験データを抜粋します。

  • 中性脂肪(TG)を低下・・30 ~ 57%
  • 総コレステロールを低下・・11 ~ 19%
  • LDLコレステロール(悪玉)を低下・・12 ~ 21%
  • HDLコレステロール(善玉)を増加・・32 ~ 48%

中性脂肪(TG)を下げる作用機序

ベザトールSRの作用の中で最も働きが強いのが中性脂肪(TG)を下げる作用です。

主に2つのアプローチで中性脂肪を低下させます。

  • 血液中の中性脂肪(TG)の分解を促進
  • 中性脂肪(TG)の生成を抑える

では詳しく解説したいと思います。

中性脂肪(TG)を分解するメカニズム

ベザトールSRは肝臓にあるペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α(PPARα:読み方ピーパーアルファ)を活性化させる働きがあります。

PPARαが活性化されると、LPL(リポ蛋白リパーゼ)という酵素が活性化されます。

LPLは血液中の中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解します。

分解された遊離脂肪酸は脂肪細胞など各組織に取り込まれエネルギー源として活用されます。

このように中性脂肪の分解が促進されることで結果的に血液中の中性脂肪が低下します。

中性脂肪(TG)の生成を抑えるメカニズム

中性脂肪はアセチル CoAから肝臓で生成されるのですが、ベザトールSRは「アセチル CoA カルボキシラーゼ」を抑制することで肝臓から中性脂肪が生成されるのを抑える作用があります。

このようにベザトールSRは、中性脂肪の分解を促すだけでなく、中性脂肪の生成を抑えることで、血液中の中性脂肪を低下させます。

HDLコレステロール(善玉)増加の作用機序

ベザトールSRはHDLコレステロールの構成成分を増やすことでHDLコレステロールを上昇させます。

ベザトールSRはペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α(PPARα:読み方ピーパーアルファ)を活性化させる働きがあります。

PPARαはHDLコレステロールの構成成分であるApoA-1,ApoA-2というタンパク質を増加させ、HDLコレステロールを増加させます。

LDLコレステロール(悪玉)低下の作用機序

ベザトールSRはLDLコレステロールを低下させる働きがあります。

コレステロールは肝臓でアセチルCoAからメバロン酸を経て合成されます。

ベザトールSRはアセチルCoAからメバロン酸への合成を抑えることで肝臓でのコレステロールの合成を抑えます。

肝細胞内でのLDLコレステロールが減ると、血液中からLDLコレステロールを取り込もうとするため結果的に血液中のLDLコレステロールを低下させるのです。

妊娠・授乳中の服用

ベザトールSRは妊婦さんには禁忌(きんき)となっており「投与しないこと」となっています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)

引用元 ベザトールSRインタビューフォーム

妊娠を希望する場合は早めに主治医に伝えるようにしましょう。

また授乳中は母乳中に移行するため「授乳を中止すること」となっています。

粉砕や割って飲んでいい?

ベザトールSR錠は徐放錠となっているので、噛んだり割ったりすると、徐放性が発揮しなくなってしまいます。
必ずそのまま水で服用するようにしましょう。

エパデール(イコサペント酸エチル)との併用・飲み合わせ

高脂血症治療薬のエパデール(一般名:イコサペント酸エチル)と一緒に飲んでも大丈夫?

と聞かれることがありますが、同じ高脂血症治療薬でも作用機序に違いがあるため、併用には問題ありません。

もし同時点に服用する場合は食事のすぐあとにエパデールを服用し、その後にベザトールSR錠を服用するようにしましょう。

エパデールを先に服用する理由ですが、エパデールは食事のすぐ後に服用することで吸収がより増大するためです。

ナイシトール(防風通聖散)との併用・飲み合わせ

皮下脂肪を減らす市販薬「ナイシトール(成分名:防風通聖散)」と一緒に飲んでいい?

と聞かれることがありますが、相互作用は問題ありません。