「おしっこに行きたいのを我慢できない・・・」
「トイレに間に合わず尿を漏らしてしまった・・・」
「夜に何度もトイレで目が覚める・・・」
このような過活動膀胱の治療に処方される薬がベタニス錠(一般名:ミラベグロン)です。
ベタニスについて作用機序、特徴についてまとめました。
効能・効果・過活動膀胱の定義
ベタニスの効能・効果です。
過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
過活動膀胱の定義は「症状として尿意切迫感を訴え、通常は頻尿や夜間頻尿を伴い、切迫性尿失禁を合併することもあるが、これらの症状を説明する感染や他の明らかな疾患がないもの」とされています。
過活動膀胱はおしっこに行きたい気持ちを我慢できない「尿意切迫感」があることを必須とし、
頻尿(1日8回以上)や夜間頻尿(1日1回以上)の症状を伴います。
またトイレに行くまでに我慢できずおしっこを漏らしてしまう切迫性尿失禁(読み方:せっぱくせいにょうしっきん)を伴うこともあります。
作用機序(メカニズム)
正常な人の尿を膀胱にためる蓄尿期では膀胱は弛緩し、尿道は収縮しています。
そして排尿時には膀胱が収縮し、尿道が弛緩します。
しかし過活動膀胱になると蓄尿期に膀胱が収縮してしまうため、十分な尿を溜めることができず、おしっこの回数が増えてしまいます。
ベタニスは膀胱を弛緩させることで膀胱へ尿が溜まる量を増やし、尿の回数を減らしたり、おしっこが我慢できないのを抑える作用があります。
ベタニスの具体的なメカニズムについて説明したいと思います。
ここからは少し専門的な話になります。
膀胱を収縮させる筋肉は膀胱平滑筋(排尿筋)と呼ばれます。
膀胱平滑筋にはβ3受容体というものが存在します。
交感神経から放出されるノルアドレナリンがβ3受容体にくっつくと膀胱平滑筋が弛緩します。
ベタニスはβ3受容体作動薬と呼ばれ、β3受容体を刺激することで膀胱平滑筋を弛緩させます。
抗コリン薬(ベシケア)との違い
過活動膀胱の治療にはベシケアなどの抗コリン薬が第一選択薬として処方されます。
抗コリン薬は膀胱平滑筋の収縮を抑えることで膀胱を弛緩させます。
つまり、ベタニスと膀胱を弛緩させる点では同じですが弛緩のさせ方に違いがあります。
膀胱平滑筋にあるムスカリンM3受容体にアセチルコリンが結合すると膀胱平滑筋が収縮します。
抗コリン薬はムスカリンM3受容体にアセチルコリンが結合するのを防ぎ、膀胱の収縮を抑えます。
しかしムスカリンM3受容体は唾液腺や消化管にも存在し、アセチルコリンが結合することで唾液を分泌したり、腸の蠕動運動を活発にしています。
ベシケアなど過活動膀胱治療の抗コリン薬は膀胱以外にも作用してしまうため、「口渇」や「便秘」の副作用がでてしまいます。
ベタニスはムスカリン受容体には作用しないため、「口渇」や「便秘」の副作用が少ないのが特徴です。
抗コリン薬(ベシケアなど)との併用
ベタニスとベシケアなどの抗コリン薬との併用ですが、製薬メーカーの説明書では下記のようになっています。
現時点では、過活動膀胱の適応を有する抗コリン剤と併用した際の安全性及び臨床効果が確認されていないため併用は避けることが望ましい
引用元 ベタニス添付文書
しかし絶対に併用してはいけない「併用禁忌」ではありませんし、作用点に違いがありますので、抗コリン薬で効果がイマイチの場合に併用されるケースもあります。
飲み忘れた場合の対応
ベタニスを飲み忘れた場合は、飛ばして次回から正しいタイミングに正しい量を服用するようにされています。
主治医から指示がある場合はそちらを優先するようにしましょう。