お腹の調子がなんとなく悪いといった慢性胃炎に処方される薬がガナトン錠50mg(一般名:イトプリド塩酸塩)です。
ガナトンの特徴や、薬局で患者さんから聞かれる質問についてまとめました。
ガナトンを服用する方の悩みや疑問を少しでも解決できると幸いです。
効能・効果
ガナトンが保険で処方される効能・効果です。
慢性胃炎における消化器症状(腹部膨満感、上腹部痛、食欲不振、胸やけ、悪心、嘔吐)
作用機序(メカニズム)
なぜガナトンが食欲不振や悪心に効果を示すのか作用機序について説明します。
ガナトンは消化管の副交感神経を亢進させアセチルコリン量を増やし胃腸運動を促進させます。
体がリラックスした状態、すなわち副交感神経が優位な状態では消化管からアセチルコリンという物質が放出され、胃腸の運動を活発にしています。
アセチルコリンは消化管にあるドパミンD2受容体で制御されており、ドパミンD2受容体にドパミンが結合することで、アセチルコリンの分泌が抑えられます。
ガナトン(イトプリド)はドパミンD2受容体にドパミンが結合するのを邪魔したり、アセチルコリンを分解するアセチルコリンエステラーゼという酵素の働きも邪魔することで、アセチルコリンの濃度を高め胃腸運動を促進し、悪心や食欲不振を改善します。
胃腸運動が遅いと、食事によって分泌された胃酸などの攻撃因子と胃粘膜の接触時間が長くなりますが、胃腸運動を速くすることで、攻撃因子と胃粘膜の接触時間を減らすことにも繋がります。
また消化管のドパミン受容体を遮断することで、吐き気も抑える作用も持っています。
飲み方・食前に服用する理由・Tmax
ガナトン(イトプリド)は1日3回毎食前に服用します。
食前とは食事の20〜30分前のことをいいます。
薬を服用して血中濃度が最大になるまでの時間をTmax(ティーマックス)といいます。
ガナトンは服用して血中濃度が最大になる時間(Tmax)が0.58時間となっており、服用して約35分後に効果が最大となります。
つまり、ガナトンを食前に服用することで、食事中に効果を最大限に発揮させる目的があるのです。
錐体外路障害やプロラクチン分泌亢進が少ない
ドパミンD2受容体拮抗薬の中で脳に移行する薬を長期間連用した場合、錐体外路障害(パーキンソン様症状など)や乳腺を発達させるプロラクチン分泌亢進が問題になることがあります。
消化管の運動を整えるドパミンD2受容体拮抗薬にナウゼリン(一般名:ドンペリドン)やプリンペラン(一般名:メトプロクラミド)があります。
ナウゼリンやプリンペランといったドパミンD2受容体拮抗薬に比べて、ガナトンは錐体外路障害やプロラクチン分泌亢進による乳汁分泌や女性化乳房などの副作用が0.1%未満と少ないのが特徴です。
妊娠中・授乳中の服用
妊婦さんの場合、「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」とされています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること (妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)
引用元 ガナトン添付文書
授乳中の場合、母乳中に移行するため「授乳を中止すること」とされています。
授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、 やむを得ず投与する場合は授乳を避けさせること(動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている)
引用元 ガナトン添付文書
慢性胃炎の時はお菓子などの甘いものや揚げ物などの脂の多い食事は控えるようにしましょう。
カフェインを多く含むコーヒーや紅茶は胃酸を分泌しますので過剰に摂取するのは控えてください。
何よりもストレスをためずリラックスして日々過ごすことを心がけましょう。
疲れた時はしっかり睡眠をとって、休みの日は自分の好きな事に時間を費やしてみてはいかがでしょう。