腹部の痛みに頓服で処方される機会が多いのがブスコパン錠(一般名:ブチルスコポラミン臭化物)です。
ブスコパンについて作用機序や特徴、薬局で聞かれる質問についてまとめました。
効能・効果
ブスコパン(ブチルスコポラミン)の効能・効果は下記の通りです。
下記疾患における痙攣並びに運動機能亢進
胃・十二指腸潰瘍,食道痙攣,幽門痙攣,胃炎,腸炎,腸疝痛,痙攣性便秘,機能性下痢,胆の う・胆管炎,胆石症,胆道ジスキネジー,胆のう切除後の後遺症,尿路結石症,膀胱炎,月経困難症
作用機序(メカニズム)
ブスコパン(ブチルスコポラミン)は鎮痙剤(読み方:ちんけいざい)と呼ばれる薬です。
鎮痙剤とは名前のとおり、過剰な痙攣を抑える作用があるのですが、ブスコパンは胃腸などの過剰な痙攣を抑えることで腹痛を改善します。
具体的なメカニズムについて説明します。
自律神経には交感神経と副交感神経があるのですが、体がリラックスした状態、すなわち副交感神経が優位な状態では胃腸の運動が亢進します。
ブスコパン(ブチルスコポラミン)は副交感神経の神経伝達を抑制することで、胃腸の過剰な痙攣を抑え痛みを緩和するのです。
胃腸だけでなく胆管や膀胱にも同じように作用します。
副交感神経の働きを抑えることから「抗コリン薬」といわれます。
またブスコパン(ブチルスコポラミン)には胃液の分泌を抑える作用もあります。
妊娠・授乳中の服用
妊婦さんには「治療上の有益性が危険性を上回る場合に投与すること」とされています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
引用元 ブスコパン 添付文書
授乳中については添付文書に注意書きはありません。
海外の基準では概ね適合のL3 に位置付けられています。
L3 概ね適合:probably compatible 授乳婦の対照試験はないが、児不都合な影響が出る可能性がある。又は対照試験でごく軽微で危険性のない有害作用しか示されていない。母親の潜在的な有益性が児の潜在的なリスクを凌駕する場合のみ投与(論文でのデータがない新薬は安全と考えられても自動的にL3)
引用元 Medications and Mothers’ Milk
そのため「授乳を中止しなくてもよい」と指導されるケースもあります。
眼のピント調節障害のため車の運転に注意
ブスコパン(ブチルスコポラミン)を服用すると目のピント調節がうまくできなくなることが報告されています。
そのため「自動車の運転はしないこと」とされています。
口の渇きの副作用が起こる
ブスコパン(ブチルスコポラミン)を服用すると高い確率で「口の渇き」の副作用がおこります。
緊張して口が渇いた経験はないでしょうか?
緊張した状態は副交感神経に比べて交感神経が優位になっています。
ブスコパン(ブチルスコポラミン)は副交感神経の働きを抑えますので、緊張した時に「口が渇く」のと同じメカニズムで「口渇」が起こります。
口渇がひどい場合はシュガーレスのアメやガムなどで唾液が分泌されます。
市販薬はある?
ブスコパンの有効成分であるブチルスコポラミンが入った市販薬は存在します。
- ブスコパンA錠
- ブチスコミン
有効成分のブチルスコポラミンは1錠あたり10mgで、
病院で処方される医療用医薬品のブスコパンと同じ量となっています。
またブスコパンMカプセルという市販薬もありますがブチルスコポラミンに胃酸を中和するメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが配合されたものになります。