病院で処方される医療用医薬品の中でも処方頻度の高い整腸剤がビオスリー配合錠とビオフェルミン錠です。

人の腸内は様々な腸内細菌が共存しバランスが保たれた生態系として成り立っています。

この生態系のことを腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)と呼ばれます。また腸内を覗くと腸内細菌が植物の群集のように見えることから「お花畑=フローラ」の名前をとって腸内フローラとも呼ばれます。

腸内細菌叢のバランスが崩れると下痢や便秘といった症状が現れます。

ビオスリー配合錠とビオフェルミン錠は「腸内菌叢のバランスを整えることにより、便秘、下痢などに効果のある整腸剤」です。しかし、効果を比較した実験もなく特に明確に使い分けがされていないのが現状です。

有効成分や働きに違いがありますので、それぞれの違いについてまとめてみました。

有効成分の違い

ビオスリー配合錠、ビオフェルミン錠1錠、ビオフェルミン配合散1gあたりの有効成分と含有量は下記の通りです。

 成分名/商品名ビオスリー
配合錠
ビオフェルミン錠ビオフェルミン
配合散
乳酸菌
(ラクトミン)
2mg 6mg
酪酸菌10mg  
糖化菌10mg 4mg
ビフィズス菌 12mg 

 

ビオフェルミン錠剤にはビフィズス菌のみが入っています。

ビオスリー配合錠にはビフィズス菌を増殖させる糖化菌、腸管病原菌(o-157やサルモレラ菌)の増殖を抑制するラクトミンと酪酸菌が配合されています。また糖化菌は乳酸菌を、乳酸菌は酪酸菌を単独時投与に比べ10倍増殖させることが報告されています。

ビオスリー配合錠は3つの菌を配合することでそれぞれの効果を高める特徴があります。

ビオフェルミン配合散にはラクトミンと糖化菌が入っています。

ビフィズス菌・ラクトミン・糖化菌・酪酸菌の特徴・働き

成分名働き
ビフィズス菌・小腸下部〜大腸で増殖。
・乳酸・酢酸を産生。
→有害菌の発育抑制
偏性嫌気性菌
ラクトミン
(乳酸菌)
・小腸下部〜大腸で増殖。
・乳酸を産生。
→有害菌の発育抑制
・酪酸菌の増殖を促す。(約10倍)
通性嫌気性菌
酪酸菌・大腸で増殖。
・芽胞形成のため酸・熱・アルカリに強い。
・酪酸・酢酸を産生
→有害菌の発育を抑える。
→腸の蠕動運動を促進。
偏性嫌気性菌
糖化菌・小腸上部から増殖。
・芽胞形成のため酸・熱・アルカリに強い。
・乳酸菌の増殖促進。(約10倍)
・ビフィズス菌の増殖促進
好気性菌

酸素がないと生育できない・・・偏性好気性菌
酸素があると生育できない・・・偏性嫌気性菌
酸素に関わらず生育できる・・・通性嫌気性菌

抗生物質(抗生剤)の併用

抗生物質(抗菌薬)を服用すると腸内細菌のバランスが崩れ下痢をおこすことがあります。抗生物質によるお腹の乱れを防止するためにしばしば整腸剤がセットで処方されます。

ビオフェルミン錠のビフィズス菌は、抗生物質を投与すると抵抗できずビフィズス菌が殺されてしまいます。一般的に抗生物質と併用するときは、抗生物質に耐性のあるビオフェルミンRが処方されます。

ただし、ニューキノロン系やホスホマイシン系の抗生物質の併用にはビオフェルミンRの効能がなくビオフェルミン錠が処方されることがあります。

一方でビオスリー配合錠に入っている酪酸菌は芽胞を形成し抗生物質に抵抗性を示すため、抗生物質との併用時に処方されることがあります。

薬品名抗菌薬との併用
ビオフェルミン錠
ビオフェルミン配合散
使用されない
ビオフェルミンRが処方
ビオスリー配合錠使用される

 

まとめ(特徴)

・ビオスリー配合錠とビオフェルミン錠はどちらも腸内細菌叢のバランスを整える。
・ビオスリー配合錠、ビオフェルミン錠はどちらも小腸〜大腸で効果を発揮。
・ビオフェルミン錠の有効成分はビフィズス菌のみ。
・ビオフェルミン配合散の有効成分はラクトミンと糖化菌。
・ビオスリー配合錠の有効成分はラクトミン、糖化菌、酪酸菌の3種類が相乗効果を発揮。
・抗菌薬の耐性があるのはビオスリー配合錠。