アルツハイマー型認知症治療薬にレミニール錠(一般名:ガランタミン臭化水素酸塩)があります。
有効成分のガランタミンはマツユキソウ(Galanthus woronowi)という植物の球根から発見されました。
アルツハイマー型認知症の症状や、レミニール錠(ガランタミン)の作用機序についてまとめました。
中核症状と周辺症状(BPSD)
認知症の症状には中核症状と周辺症状の2つがあります。
周辺症状はBehavioral and Psychological Symptoms of DementiaからBPSD(ビーピーエスディー)とも呼ばれます。
中核症状の症状
中核症状の具体的症状は下記のとおりです。
- 記憶障害
- 見当識障害(例 時間の認識ができなくなる)
- 失語(例 言葉がでてこない)
- 失行(例 野菜を等間隔に切れない)
- 理解・判断力の低下
周辺症状(BPSD)は行動異常と心理症状に分類
行動異常の例
- 暴言・暴行(易攻撃性)
- 活動障害(徘徊・無目的・無意味な行動)
- 食行動の異常(過食・異食・拒食)
- 睡眠覚醒障害(不眠・レム睡眠行動異常)
心理症状の例
- 不安
- 多幸
- 妄想・幻覚
- 自発性・意欲の低下
- 易怒性
認知症の初期症状では、時間や場所が分からなくなったり、簡単な計算ができない、言葉が出ないなどの中核症状が現れ、中核症状によって今までのような生活が送れなくなる不安や焦りから周辺症状(BPSD)が現れると考えられています。
レミニール(ガランタミン)作用機序
レミニール(ガランタミン)は認知症そのものを治すのではなく、認知症の進行を抑える作用があります。
アルツハイマー型認知症では、脳の中に異常なたんぱく質がたまり、シミ(老人斑)ができたり、神経細胞の中の繊維にねじれ(神経原線維変化)がみられます。
これらによって脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンの量が低下することが記憶障害の原因と考えられています(コリン欠乏仮説)。
アセチルコリンはアセチルコリンエステラーゼ(AChE)という酵素によって分解されてしまいます。
レミニール(ガランタミン)は脳内に移行し、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)の働きを阻害することで、アセチルコリンの分解を抑え、脳内のアセチルコリンの量を増やします。
脳内のアセチルコリンを増やすことで神経伝達を促進させ認知症の進行を抑えると考えられています。
APL作用とは?アリセプト(ドネペジル)との違い
認知症治療薬で同じアセチルコリンエステラーゼ阻害薬がアリセプト(ドネペジル)です。
アリセプト(ドネペジル)はアセチルコリンエステラーゼ阻害作用のみを有するのですが、レミニール(ガランタミン)にはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用に加えてAPL作用があるのが特徴です。
APL作用によって脳内へのアセチルコリンの放出を増加させたり、アセチルコリンの働きを増強させます。
APL作用の細かい作用機序について説明します。
APL作用とはallosteric potentiating ligand(アロステリック活性化リガンド)の頭文字をとったものです。
アセチルコリンは後シナプスに存在するアセチルコリン受容体に結合することで陽イオンが流入し神経伝達物質として働きます。
アセチルコリン受容体にはムスカリン性とニコチン性の2つがあるのですが、レミニール(ガランタミン)はニコチン性アセチルコリン受容体のアロステリック部位(アセチルコリンが結合しない部位)に結合し、アセチルコリンが単独で結合するときよりも陽イオンの流入を増加させる、つまりアセチルコリンの働きを強めるのです。
またレミニール(ガランタミン)は前シナプスに存在するニコチン性アセチルコリン受容体にも結合し、アセチルコリンの放出を増加させます。
このようにレミニール(ガランタミン)は、
- アセチルコリンの分解を抑える作用(アセチルコリンエステラーゼ阻害作用)
- アセチルコリンを増やし働きを増強させる作用(APL作用)
の2つの角度からアセチルコリンの量を増やしたり、アセチルコリンの作用を増強させるのです。
またレミニール(ガランタミン)は軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症の進行抑制に適応がありますが、アリセプト(ドネペジル)は軽度〜高度のアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の進行抑制に適応があります。
薬品名 (一般名) | 作用機序の比較 | 効能・効果の違い |
---|---|---|
レミニール (ガランタミン) | アセチルコリンエステラーゼ阻害作用 APL作用 | 以下の進行抑制 アルツハイマー型認知症 (軽度〜中等度) |
アリセプト (ドネペジル) | アセチルコリンエステラーゼ阻害作用 | 以下の進行抑制 アルツハイマー型認知症 (軽度〜高度) レビー小体型認知症 |
主な副作用
製薬メーカーの臨床試験での主な副作用は、悪心(14.9%)嘔吐(12.4%)食欲不振(8.3%)下痢(6.2%)食欲減退(5.4%)頭痛(4.6%)となっています(1)。
カッコ内は744例中の確率
高い確率で悪心や嘔吐などの消化器症状が報告されているため、極力何か食べて服用することが推奨されています。
(1)レミニール錠インタビューフォーム