パーキンソン病は下記の4つを特徴とする疾患です。
- 振戦(手足のふるえ)
- 筋固縮(こわばり)
- 無動(動作が遅い)
- 姿勢・歩行障害
パーキンソン病は黒質メラニン含有神経細胞の変性によって中枢のドパミンが減少することが原因と考えられています。
そのためドパミンを補充する目的でドパミンの前駆物質であるL-DOPA(レボドパ)が処方されることがあります。
レボドパ製剤であるマドパー配合錠、イーシー・ドパコール配合錠、ネオドパゾール配合錠がどのような薬なのか?
服用中の注意点について解説していきます。
レボドパは脱炭酸酵素でドパミンに分解される
パーキンソン病は脳内のドパミン不足が原因になることから、ドパミンの補充が行われるケースがあります。
しかし脳には血液脳関門(BBB:Blood Brain Barrier)というバリアのようなものがあって、ドパミンを投与しても血液脳関門を通過できないため脳には届きません。
そこで、ドパミンの前駆物質であり血液脳関門を通過できるL-DOPA(レボドパ)を投与するのです。
L-DOPA(レボドパ)は脳内でレボドパ脱炭酸酵素によってドパミンに変換されます。
しかしL-DOPA(レボドパ)を単剤で投与しても90%以上が脳に到達する前にドパミンに変換されてしまい、脳に到達するL-DOPA(レボドパ)は数%にしかなりません。
脳内以外の腸管壁、肝、血管内皮細胞にもレボドパ脱炭酸酵素が存在するためです。
そのためL-DOPA(レボドパ)単独で効果を出すためには大量に服用しなければいけません。
レボドパの分解を防ぐベンセラジド
脳に達するまでレボドパがドパミンに変換されないように、脳以外の末梢でレボドパ脱炭酸酵素の働きを邪魔するベンセラジドという成分を配合したのがマドパー配合錠(中外製薬)、イーシー・ドパール配合錠(協和発酵キリン)、ネオドパゾール配合錠(第一三共)です。
販売されている製薬メーカーに違いがあるだけで配合されている有効成分は全く同じとなっています。
レボドパとベンセラジドが4:1で配合
マドパー配合錠、イーシー・ドパール配合錠、ネオドパゾール配合錠はレボドパとベンセラジドが4:1で配合されています。
ベンセラジドを配合することでレボドパの量を1/5に減量することが可能となります。
レボドパを内服で服用すると吐き気や食欲不振などの消化器系の副作用が問題になることから、レボドパの量を減らすことで副作用の軽減にも繋がるのです。
また不整脈や起立性低血圧の軽減にも繋がるとされています。
マドパー配合錠、イーシー・ドパール配合錠、ネオドパゾール配合錠の成分含有量
1錠中
レボドパ100mg ベンゼラジド25mg
ネオドパストン・メネシット長期服用の問題点
ドーパミン製剤を服用することで問題になる現象をピックアップしました。
下記のような症状があった場合は主治医に相談するようにしましょう。
wearing off(ウェアリングオフ)現象
レボドパの薬が効く時間が短くなり、次の服用前に症状が強くなる現象。
ドパミンアゴニスト(商品名:ビ・シフロール、レキップ)やMAO-B阻害薬(商品名:エフピー)、COMT阻害薬(商品名:コムタン)、ゾニサミド(商品名:トレリーフ)の追加で対応するケースあり。
non-on(ノンオン)/delayed on(ディレイドオン)現象
non-on現象はレボドパの効果が見られない現象。
delayed on現象は効果発現に時間がかかる現象。
レボドパの消化管からの吸収障害が原因となるため、吸収が高まるように空腹時や食前に服用変更などで対応。
on-off(オンオフ)現象
服用時間に関わらず急激に症状の改善(on)や増悪(off)が繰り返される現象。
ジスキネジア(不随意運動)
手、足、舌などが自分の意思に関係なく動く症状。
下記の2つのタイプがあり。
- peak dose dyskinesia
レボドパの血中濃度がピークの時に発現
顔、首、体幹、四肢に出現 - diphasic dyskinesia
レボドパの効果の出始めと終わりに出現
すくみ足
足が地面に貼りついたかのように、足が出ない状態。
足を地面にするように歩くため、前傾姿勢となり転倒のリスクが高くなる。
脳内のノルアドレナリンの減少が原因。
基本的にはwearing off症状と同じ対処をするが、レボドパが効いている時間に出現するすくみ足にはノルアドレナリン前駆物質のドロキシドパ(商品名:ドプス錠)で対応することあり。
尿・汗・唾液が黒くなる理由
レボドパ製剤を服用するとおしっこや汗、唾液が黒く変色することがまれにあります。
レボドパや代謝物は酸化されやすくアルカリや光に不安定なことから、変化を受けてメラニン重合体を生成し尿や汗、唾液に排泄されるためと考えられています。
衝動制御障害について
ご家族の方へ
ドパミンは快楽・興奮に関与する物質のためレボドパ製剤によって、衝動の制御がきかなくなることがあります。
- ギャンブルをしたい衝動を抑えられない
- 性衝動を抑えられない
- 買い物をしたい気持ちを抑えられない
- 食べ物を食べたい衝動が抑えられない
このような症状がでた場合は薬の量が調整されるケースがありますので、必ず主治医に相談するようにしてください。
またこれらの症状は薬によるものであることを理解しておきましょう。