水虫やカンジダに処方される抗真菌薬がエンペシドクリームです。
ジェネリック医薬品としてタオンクリーム1%やクロトリマゾールクリーム1%「イワキ」で処方されることもあります。
エンペシドクリームが処方される患者さんから、薬局で聞かれる質問の回答をまとめました。
エンペシドクリームを使用する方の疑問の解決にお役に立てると幸いです。
有効成分・作用機序
エンペシドクリームには1g中にクロトリマゾールが10mg含有されています。
エンペシドの有効成分である「クロトリマゾール」は真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を阻害します。
より細かく作用機序を解説します。
真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールは下記のように合成されます。
メバロン酸
↓
スクアレン
↓
ラノステロール
↓
エルゴステロール
エルゴステロールはメバロン酸からラノステロールを経て合成されます。
ラノステロールはエルゴステロール合成酵素(ラノステロール-14-α-デメチラーゼ)によって変換され最終的にエルゴステロールが作られます。
エンペシド(クロトリマゾール)はエルゴステロール合成酵素(ラノステロール-14-α-デメチラーゼ)の働きを抑えることで、真菌の細胞膜の構成成分であるエルゴステロールの合成を抑え抗真菌作用を示すのです。
人間の細胞膜に「エルゴステロール」は存在しないことから人の細胞を傷つけず、真菌のみに作用するのが特徴です。
またクロトリマゾールの濃度が高くなると真菌の細胞膜を直接攻撃し殺菌的にも作用します。
効能・効果
エンペシドクリームの効能・効果です。
白癬
足部白癬(汗疱状白癬,趾間白癬),頑癬,斑状小水疱性白癬カンジダ症
指間糜爛症,間擦疹,乳児寄生菌性紅斑,皮膚カンジダ症,爪囲炎癜風(でんぷう)
ニキビに効果ある?
ニキビは「アクネ菌」や「ブドウ球菌」といった細菌が原因となります。
エンペシドには細菌を抑える作用はないため、ニキビには効果はありません。
ヘルペスに効果ある?
口唇ヘルペスや性器ヘルペスはヘルペスウイルスが原因となります。
エンペシドにはヘルペスウイルスを抑える作用はないため、ヘルペスには効果はありません。
塗り方(足・陰部など)
エンペシドクリームは1日2〜3回患部に塗ります。
入浴後は皮膚に浸透しやすく最も効果的ですので、お風呂上りのタイミングで1回は使用するのがオススメです。
塗る範囲は患部以外にも、真菌が付着している可能性があるため足全体に塗ることが推奨されていますが、範囲については主治医の指示にしたがうようにしてください。
陰部に使用する際は指や綿棒などで塗るのがよいでしょう。
膣内にはエンペシド膣錠が処方されますので、指示がない場合はエンペシドクリームは膣内に塗らないようにしてください。
妊娠・授乳中の使用
妊娠中は「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」となっています。
妊婦(3ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ使用すること〔妊娠中の使用に関する安全性は確立していない.〕
引用元 エンペシドインタビューフォーム
そのため妊婦さんでもエンペシドクリームが処方されることはありますが、エンペシドクリームで催奇形性は報告されていませんので安心して使用してください。
また授乳中の場合は添付文書に注意書きはなく「授乳を続けていい」と指導されるケースがあります。
市販薬はある?
エンペシドの有効成分であるクロトリマゾールが入った市販薬が販売されています。
- クロトリンゼリー
- タムチンキパウダースプレー
- ピロエースWクリーム
- ピロエースW軟膏
- ピロエースW液
エンペシドクリームとクロトリマゾールの濃度が同じ市販薬はクロトリンゼリーです。
タムチンキやピロエースはエンペシドクリームに比べてクロトリマゾールの濃度が低くなっています。
エンペシドクリームはカンジダの治療薬として婦人科でもよく使用されることから、女性の患者さんからエンペシドクリームについて相談を受けることがあります。
エンペシドクリームについて聞きづらいことなどありましたら下記の質問ボックスからコメントいただけると幸いです。