2型糖尿病患者さんで、
「内服薬を服用してもなかなか血糖値が下がらない・・・」
「食事が不規則で内服薬が飲めない時がある・・・」
などの際に処方される注射薬が「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス(一般名:デュラグルチド)」です。
トルリシティについて作用機序(メカニズム)や、特徴、使用時の注意点についてまとめました。
トルリシティの適正使用に少しでも繋がれば幸いです。
アテオスの由来は当てて押す
トルリシティはアテオスと呼ばれる注射器を使って使用します。
そのため製品名には「トルリシティ皮下注アテオス」という名前がついています。
アテオスは「当てて押す」という特徴から名付けられています。
トルリシティ皮下注アテオスには予め29ゲージの針がついているため、針の取り付けや空打ちの必要がありません。
名前の通りで皮膚に当てて押すだけで注射が可能で、針が見えないことから他の注射剤に比べて心理的な負担が少ないのが特徴です。
作用機序(メカニズム)・GLP-1受容体作動
トルリシティ(デュラグルチド)は血糖値の上昇に応じてインスリンの分泌を促し血糖値を下げる作用があります。
そのため他のインスリン製剤に比べて「低血糖が起こりにくい」のが特徴です。
もう少し詳しく解説していきます。
血糖値が高くなると小腸からインクレチンホルモンが分泌され、血糖値を下げるようにインスリンの分泌を促します。
しかしインクレチンホルモンはDPP4(Dipeptidyl Peptidase-4)という酵素によって不活性化されてしまいます。
このような欠点を改善しDPP4によって分解されず、インクレチンホルモンのように作用するように作られたのがトルリシティ(デュラグルチド)です。
トルリシティ(デュラグルチド)には主に下記の3つの作用があります。
- 血糖値に応じてインスリンを分泌を促進させる作用
- 血糖値を上昇させるグルカゴン分泌を抑制する作用
- 胃内容物の排泄を遅らせる作用
血糖値の上昇に応じてインスリンを分泌を促し、また血糖値を上昇させるグルカゴン分泌を抑えることで血糖値を下げる作用があります。
また胃の中のものを排泄させる速度を遅らせるため、食欲を低下させる作用もあります。
1週間に1回の理由(半減期・T1/2が長い)
トルリシティ(デュラグルチド)は分解されるまでの時間が長く持続性があることから1週間に1回の使用でOKとなっています。
薬を投与して血中濃度が最大になるまでの時間をTmax(ティーマックス)、その後血中濃度が半分ずつに分解される時間をT1/2(ティーハーフ)または半減期というのですが、トルリシティ(デュラグルチド)1mgを一回使用した場合のTmaxは48時間、半減期は115時間というデータが製薬メーカーの資料にでています。
つまり、トルリシティ(デュラグルチド)1mgを使用すると2日後に血中濃度が最大となりその後5日弱ごとに血中濃度が半分ずつに分解されていきます。
トルリシティ(デュラグルチド)の通常量は1回0.75mgですが、1mg投与時とTmaxやT1/2に大きな差はないと考えられます。
胃腸症状(吐き気・下痢・便秘)の副作用
トルリシティ(デュラグルチド)を使用すると高い確率で吐き気、下痢、便秘といった胃腸症状の副作用が現れることがあります。
胃腸症状の副作用は使用して1,2週間がピークで、継続で使用していくうちに発生頻度は低下するといわれています。
お腹のムカツキがある場合は、揚げ物や高脂肪食は避けて、腹八分目に抑えるようにしましょう。
低血糖の副作用
トルリシティ(デュラグルチド)は低血糖症状は起こりにくい薬剤ですが、スルホニルウレア製剤(SU剤)などの糖尿病薬を併用している場合は低血糖が起こる確率が上昇します。
下記のような低血糖症状が現れた場合は糖分を摂取するようにしましょう。
- 冷や汗
- 頭痛
- 動機
- 目のかすみ
- 空腹感
- 手足のふるえ
- 眠気・あくび
糖分のとり方ですが、
ブドウ糖(10g)orブドウ糖を含むジュース(150〜200ml)
もしくは砂糖(20g)
が目安となります。
αGIと呼ばれる種類の薬剤を併用している場合は「ブドウ糖」を摂取してください。
旅行時は冷蔵庫に保管?
トルリシティは基本的には冷蔵庫保管(2〜8℃)となっています。
しかし旅行に行く際などは室温(1〜30℃)で14日間までは保存が可能です。
直射日光を避けて車の中など高温になる場所には放置しないようにしましょう。
打ち忘れた場合の対応
使い忘れた場合の対応ですが、製薬メーカーの説明書では次回の投与まで72時間(3日)以上ある時はすぐに使用するようにとなっています。
次回まで72時間以内に打ち忘れに気づいた場合は、次回から正しい曜日に使用することとなっています。