血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と診断されます。

高尿酸血症となる大きな理由は下記の3つです。

  1. 尿酸の産生が過剰になる
  2. 尿酸の排泄が低下
  3. 尿酸の産生が過剰+排泄が低下(混合型)

特に日本人では「尿酸排泄低下型」が理由となるケースが全体の約6割を占めるといわれています。

尿酸が血液中にたまり続け関節で結晶化すると痛風関節炎となり痛風発作を引き起こしてしまいます。

また問題になるのは関節だけでありません。

尿から排泄される過程で結晶化すると尿路結石となったり、腎臓に沈着して腎機能が低下してしまうことも問題となります。

高尿酸血症の治療薬、尿酸値を下げるための対策について解説していきます。

高尿酸血症の治療の基本

高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインによる基本的は治療方針は下記のとおりです。

血清尿酸値  
7.0mg/dL以上痛風関節炎or痛風結節あり薬物治療
7.0〜8.0mg/dL合併症なし生活指導 
8.0mg/dL以上合併症あり 薬物治療
8.0〜9.0mg/dL合併症なし生活指導
9.0mg/dL以上薬物治療 

合併症とは高血圧や心血管系疾患のことで、合併症がある場合は血清尿酸値6.0mg/dL以下に維持することが望ましいとされています。 

あくまでガイドラインに沿ったもので治療方針は医師によってそれぞれ異なります。

高尿酸血症の治療薬一覧

尿酸値を下げる薬は尿酸排泄促進薬尿酸生成抑制薬の大きく2つに分類されます。

分類商品名
一般名
尿酸排泄促進薬  ベネシット錠
プロベネシド
パラミヂンカプセル
ブコローム
ユリノーム錠
ベンズブロマロン
尿酸生成抑制薬  ザイロリック錠
アロプリノール 
フェブリク錠
フェブキソスタット
トピロリック錠
ウリアデック錠
トピロキソスタット

 

尿酸排泄促進薬作用機序

尿酸は腎臓の尿細管から血液中に再吸収されるのですが、ユリノームやベネシットといった尿酸排泄促進薬は腎臓で尿酸が血液中に再吸収するのを阻害し、尿中から尿酸を排泄させます。

具体的には腎臓の尿細管にある尿酸トランスポーター(URAT1)という尿酸を輸送するトンネルのような場所で、腎臓から血液中に尿酸が再吸収されるのを防ぎます。

尿酸排泄促進薬の中でも鳥居薬品から販売されているユリノーム(一般名:ベンズブロマロン)が尿酸排泄作用が最も強いことから、処方される頻度の高い薬剤です。

尿酸生成抑制薬作用機序

尿酸生成抑制薬は尿酸の生成に深く関与する酵素であるキサンチンオキシダーゼを阻害することで、尿酸の生成を低下させます。

尿酸が生成される経路はざっくり下記のとおりです。

プリン体

ピポキサンチン

キサンチン

尿酸

ピポキサンチンからキサンチン、キサンチンから尿酸が生成される過程でキサンチンオキシダーゼという酵素が必要になります。(赤のの部分)

尿酸生成抑制薬はキサンチンオキシダーゼの働きを邪魔するのですが、邪魔の仕方に違いがあります。

尿酸生成抑制薬として古くから使われているザイロリック(一般名:アロプリノール)はキサンチンオキシダーゼの競合的阻害薬(きょうごうてきそがいやく)といわれます。

少し難しい言葉がでてきましたが、ザイロリックの構造式と、キサンチンオキシダーゼの構造式は似たような形をしており、共通のプリン骨格とよばれる構造を持ちます。

そのため尿酸が生成される過程で、酵素であるキサンチンオキシダーゼと勘違いしてザイロリックが使われてしまうため結果的に酵素としての働きが落ちてしまい尿酸の生成が低下するのです。

一方でフェブリク(一般名:フェブキソスタット)、トピロリック錠・ウリアデック錠(一般名:トピロキソスタット)はキサンチンオキシダーゼの直接阻害薬です。

キサンチンオキシダーゼに直接結合することで働きを邪魔するのです。

キサンチンオキシダーゼを直接阻害する薬のほうが、競合阻害するザイロリックに比べて尿酸生成抑制作用は強い傾向にあります。

尿酸生成抑制作用の強さは下記の順といわれています。

  1. フェブリク(フェブキソスタット)
  2. トピロリック・ウリアデック(トピロキソスタット)
  3. ザイロリック(アロプリノール)

痛風・高尿酸血症と食事の対策

「尿酸値を下げたいのですがどんな食事をとったらいいですか?」

薬局でも相談を受けるケースが非常に多くあります。

明太子ビールなど「プリン体」の多いものが原因と思われがちですが、
高尿酸血症の大きな原因は「食べすぎ」「飲みすぎ」です。

プリン体の高い食事を控えることは基本ですが、食品にはプリン体が含まれるものがほとんどですので、
まずは全体的な食事の量を減らすことが尿酸値を下げるポイントです。

下記に僕が薬局で患者さんに指導する食事での注意点をピックアップします。

牛肉・豚肉・鶏肉は脂肪の少ない部位を

エネルギーの高い肉類は普段より少なくとるのがベストですが、
脂肪の少なく、エネルギー量の低い部位を選ぶことも大事です。

脂肪の少ない部位

ヒレ→もも→肩→肩ロース→サーロイン→バラ
豚肉
ヒレ→もも→肩→肩ロース→ロース→バラ

油を控える

調理方法は油を極力控えることを心がけます。

ゆでる→網焼き→蒸す→煮る→炒める→揚げる

の順で油が多くなります。

肉や魚を煮た時の汁はプリン体や脂肪分が溶け出しているので、残すか取りすぎないことをオススメします。

酸性尿を中性化するアルカリ性食品の摂取

尿が酸性になると結晶化しやすくなり尿酸の排泄が低下します。
尿を酸性から中性に傾けることで、尿酸の排出がより多くなります。

そのため酸性の食品を大量に摂取するのは避けて、アルカリ性の食品を積極的に摂取することが推奨されています。

酸性食品牛肉・豚肉・鶏肉
魚介類
卵・チーズ
白米
アルカリ性食品大豆、ごぼう、にんじん
なす、大根、かぶ、さつまいも
ひじき、わかめ
りんご、バナナ、牛乳、コーヒー

干し椎茸はアルカリ性の食品ですが、干し椎茸自体にプリン体が多く含まれるので、
積極的な摂取は避けるほうがよいでしょう。

プリン体含有の多い食品は最小限に抑える

プリン体の多い食品を完全に辞めることは難しいと思いますので、
少量を嗜むことを心がけるとよいでしょう。

非常に多い
100g中300mg以上
干ししいたけ、煮干し、カツオ節
白子、鶏レバー
多い
100g中200〜300mg以上
エビ、カツオ、牛・豚レバー
サンマ干物、アジ干物、真イワシ 

 

プリン体の1日摂取の目安は400mgまで

プリン体の1日の摂取目安量は400mgとなっています。

水分を1日2リットルとる

尿酸は尿から排泄されますので、1日2Lくらいの水分を摂取し、尿を出すことを心がけましょう。

アルコール自体に尿酸値を上げる(焼酎・ウイスキー・ワイン)

「焼酎やウイスキー、ワインは飲んでも大丈夫?」

薬局でも時々聞かれる質問です。

焼酎はプリン体はゼロですし、ウイスキーやワインはプリン体が少ないお酒です。
プリン体ゼロの発泡酒のビールもありますよね。

しかし、アルコール自体に尿酸値を上げる作用があるのです。

アルコールに含まれるエタノールは尿酸の産生を促し、排泄を抑制する作用があるため、仮にプリン体がゼロのお酒でも尿酸を上げてしまいます。

またアルコールには食欲を高める作用がありますので、お酒を飲んでついつい食べ過ぎてしまうことも問題です。

アルコールの適量・目安は1日20g

1日のアルコールの摂取の目安は純アルコールで20gです。

お酒種類1日目安量
ビール500ml
焼酎70ml
日本酒180ml
1合
ワイン200ml
グラス2杯
ウイスキー
ブランデー
60ml
ダブル

 

現役薬剤師Yu現役薬剤師Yu

食生活が原因の高尿酸血症は適切な食生活を続けることで、改善ができる疾患です。

高いお金を出して食事をして、痛風になってまた診察代と薬代がかかり続ける人生なんてバカらしいですよね。

病気になって無駄な時間や、お金を使わないようにするためにも、正しい知識をつけて食生活を楽しみましょう。