亜鉛(Zn)は生体内の微量元素であり主に下記に関与しているといわれています。
- 小児の身長の伸び
- 味覚・嗅覚の維持
- 皮膚代謝
- 生殖機能
- 免疫機能
- 精神・行動への影響
- 骨格の発達
亜鉛が不足することで起こる症状、亜鉛の血中濃度が低下する原因、低亜鉛血症に処方される治療薬について解説していきます。
亜鉛が不足の症状
亜鉛の摂取量が低下した時や、亜鉛の吸収低下、亜鉛の排泄増大、亜鉛の必要量が増えた場合などに、亜鉛不足となってしまいます。
亜鉛が不足となった時の主な症状は下記のとおりです。
- 皮膚炎
- 脱毛
- 味覚障害
- 性腺機能不全
- 下痢
- 易感染症
- 食欲低下
低亜鉛となる原因
亜鉛が不足する原因は主に下記の4つが考えられます。
- 亜鉛の摂取不足
- 亜鉛の吸収不全
- 亜鉛の需要増大
- 亜鉛の排泄増加
亜鉛の摂取不足
下記のように亜鉛の摂取自体が少ない場合に、血中の亜鉛濃度が低下してしまいます。
- 低亜鉛母乳による乳児の亜鉛不足
- ベジタリアンなど動物性タンパクの少ない食事(低亜鉛食)
- 静脈栄養で亜鉛補充が不十分の場合
- 高齢者
亜鉛の吸収不全
下記の場合で亜鉛の吸収が低下し血中の亜鉛濃度が低下する可能性があります。
- 慢性肝炎・肝硬変
- 炎症性腸疾患
- フィチン酸・食物繊維の過剰摂取
- 高齢者
亜鉛の需要増大
- 妊娠
亜鉛の排泄増加
亜鉛の排泄が増加する場合も、亜鉛の血中濃度が低下するケースがあります。
亜鉛の排泄が増加するケースは下記のとおりです。
- 糖尿病
- 腎疾患
- 血液透析
- アルコール過剰摂取者
- キレート形成のある薬剤の長期服用者
皮膚疾患と亜鉛
特に皮膚疾患には亜鉛不足が関与するケースが多くあります。
生体内で亜鉛の約20%は皮膚に存在し、亜鉛は皮膚の新陳代謝に関わる酵素や活性酸素を除去する酵素(SOD:スーパーオキシドジスムターゼ)に関与するため、皮膚の機能を正常に保つために不可欠な微量元素です。
褥瘡(じょくそう)の患者さんは健康な方に比べて血液中の亜鉛が低いとの報告があります。
亜鉛は傷の修復を促進させる作用があるため長引く皮膚疾患の患者さんでは血液中の亜鉛の低下が関係している可能性があるのです。
亜鉛不足と脱毛の関係
亜鉛が欠乏することで脱毛(抜け毛)が問題となる可能性があります。
亜鉛はたんぱく質の合成に関与しています。
亜鉛が欠乏すると、髪の毛のたんぱく質であるケラチンの合成ができず、髪の成長ができにくくなるため抜け毛が増えてしまいます。
また亜鉛は髪の毛のキューティクルを保護するコラーゲンの合成にも関与するため、丈夫な髪の毛を育てるためにも不可欠なのです。
低亜鉛血症の治療薬
低亜鉛血症状に使われる主な治療薬について解説していきます。
低亜鉛血症状に適応があるのがノベルジン錠(一般名:酢酸亜鉛水和物)です。
ノベルジン錠は先天的に銅の排泄がうまくできず、体に銅が過剰に蓄積するウィルソン病の治療薬として開発されました。
亜鉛は銅と結合しキレートを形成することから、消化管から血液中へ銅が吸収されるのを抑えるためにウィルソン病の治療薬として用いられています。
ノベルジン錠は成分自体が亜鉛ですので、2017年3月に低亜鉛血症の効能・効果を取得しました。
また胃潰瘍治療薬のプロマック錠・顆粒の有効成分、ポラプレジンクは亜鉛とL-カルノシンの錯体です。
プロマックに低亜鉛血症の適応はありませんが、亜鉛が含まれているため、亜鉛不足による味覚障害の改善目的で処方されることがあります。
商品名 | 一般名 | 低亜鉛血症の適応 |
---|---|---|
ノベルジン錠25mg/50mg | 酢酸亜鉛水和物 | あり |
プロマックD錠 | ポラプレジンク | なし |
プロマック顆粒 | ポラプレジンク | なし |
亜鉛の含有量(ノベルジン・プロマック)
ノベルジン、プロマックに含まれる亜鉛の量は下記のとおりです。
薬品名 | 亜鉛含有量 |
---|---|
ノベルジン錠25mg | 25mg |
ノベルジン錠50mg | 50mg |
プロマックD錠75mg | 16.9mg |
プロマック顆粒1g | 33.9mg |
ノベルジン錠の方がプロマック錠に比べて亜鉛の含有量が多く、薬価もノベルジンの方が高くなります。
ちなみに市販で販売されているサプリメントの場合、食品衛生法上、亜鉛として1日15mgしか摂取できないように規制がされています。