薬の説明書(添付文書)には

「妊娠中の場合は治療の有益性が上回る場合に投与すること」
「母乳中に移行することから、授乳時に服用する場合は授乳を避けること」

といった記載があります。

製薬メーカーは非常に無難な書き方をするためこのような表示となっていますが、実際には妊娠中でも安全に服用できたり、授乳を避けなくても問題がないケースもあります。

その判断基準となる

「米国FDA基準」
「Medications and Mothers’ Milk 2012基準」

についてご紹介したいと思います。

妊娠中の胎児への危険度・影響の基準

 

カテゴリー米国FDA基準
Aヒトの妊娠初期3ヶ月間の対照試験で、胎児への危険性は証明されず、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠のないもの。
B動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(または出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3ヶ月では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。
C動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること。
Dヒトの胎児に明らかに危険であるという証拠があるが、危険であっても、妊婦への使用による利益が容認されることもある(たとえば、生命が危険に曝されている時、または重篤な疾病で安全な薬剤が使用できない時、あるいは効果が無い時、その薬剤をどうしても使用する必要がある場合)。
X動物またはヒトでの試験で胎児異常が証明されている場合、あるいはヒトでの使用経験上胎児への危険性の証拠がある場合、またはその両方の場合で、この薬剤を妊婦に使用することは、他のどんな利益よりも明らかに危険性のほうが大きいもの。ここに分類される薬剤は、妊婦又は妊娠する可能性のある婦人には禁忌である。

 

授乳中の赤ちゃんのへ危険度・影響の基準

 

カテゴリーMedications and Mothers’ Milk 2014基準
L1適合(安全):compatible
多くの授乳婦が使用するが、児への有害報告なし。対照試験でも児に対するリスクは示されず、乳児に害を与える可能性はほとんどない。又は、経口摂取しても吸収されない。
L2概ね適合(比較的安全):probably compatible
少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。
L3概ね適合:probably compatible
授乳婦の対照試験はないが、児不都合な影響が出る可能性がある。又は対照試験でごく軽微で危険性のない有害作用しか示されていない。母親の潜在的な有益性が児の潜在的なリスクを凌駕する場合のみ投与(論文でのデータがない新薬は安全と考えられても自動的にL3)
L4悪影響を与える可能性あり:possibly hazardous
児や乳汁産生にリスクが有るという明らかな証拠があるが、授乳婦の有益性が児へのリスクを上回る場合は許容。
L5危険:hazardous
授乳婦の研究で児に重大な明らかなリスクがヒトでの使用経験を元に示されている。よって児に重大な障害を引き起こすリスクが高い。母乳育児の女性は禁忌

 

参照:今日の治療薬(南江堂)