「腸管の運動異常」「腸管粘膜での水分吸収・分泌異常」が原因となる下痢に処方される薬がロペミンカプセル(一般名:ロペラミド塩酸塩)です。
ロペミンについて薬局で患者さんから聞かれる質問をまとめました。
ジェネリック医薬品との違い
ロペミンカプセルには薬価の安いジェネリック医薬品があります。
ロペラミド塩酸塩カプセル1mg+メーカー名で「サワイ」や「フソー」「JG」から販売されています。
先発品と比べて添加物に違いはありますが、有効成分や効能・効果は全く同じです。
作用機序
便の7〜8割は水分で構成されています。
便の水分の割合が増えると軟便や下痢となってしまいます。
ロペミン(ロペラミド)は便に含まれる水分を減らすことで下痢や軟便を改善します。
具体的に作用機序(メカニズム)を説明していきますね。
食事を摂取すると「胃→腸→肛門」を経て便として排泄されます。
腸は食物に含まれる水分を体内に吸収する働きがあるのですが、腸の動きが早いと、水分の吸収ができず便が水分を多く含んだ状態、つまり「軟便」や「下痢」になってしまいます。
ロペミンは直接腸の細胞壁にあるオピオイドμ(ミュー)受容体に作用し、腸の蠕動運動を活発にするアセチルコリンの遊離を抑えます。
過剰な腸の運動を抑えることで、腸粘膜で吸収される水分量を増やし、軟便や下痢を改善するのです。
細菌性の下痢には原則禁忌
ロペミン(ロペラミド)は細菌やウイルスによる下痢には原則として使用できません。
作用機序を読んで鋭い方ならお気づきかもしれませんが、ロペミンは胃腸の動きを抑えて、胃腸内の食物が排泄される時間を長くすることで下痢を抑えますよね?
つまり体にとって有毒な細菌やウイルスを長く胃腸内に留めてしまうのです。
細菌やウイルス感染時の下痢は、異物を外に出そうとする目的もありますので、むやみに下痢を止めるのはよくありません。
飲み方・服用間隔
ロペミンカプセルは「下痢時」に頓服で処方されるケースがほとんどです。
1日1〜2mgを2回までが目安になっていますので、医師から特別指示がない場合は1日2回までの服用がよいでしょう。
また間隔は4時間はあけて服用するケースが多いです。
妊娠中の服用
妊婦さんには「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)引用元 ロペミンカプセル添付文書
日本の製薬メーカーの説明書では催奇形性が確認されていない薬剤ではだいたいがこのような「有益性が危険性を上回る場合に投与」の表記になっています。
ロペミンでも赤ちゃんに悪影響があったケースは報告されていませんので、妊婦さんに処方されるケースはあります。
授乳中の服用
製薬 メーカーの説明書によると母乳中に移行するため「授乳は避けること」とされています。
授乳中の婦人には本剤投与中の授乳は避けさせること。
ヒトで母乳中に移行することが報告されている。引用元 ロペミン添付文書
しかし、実際に母乳に移行する量はごくわずかで、赤ちゃんに影響がでないケースも多くあります。
ロペミンについて海外の基準では「比較的安全」に位置付けられています。
L2概ね適合(比較的安全):probably compatible
少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。参照元 Medications and Mothers’ Milk
そのため医師によっては「授乳を続けてもよい」と指導されるケースもあります。
市販薬はある?同じ?
ロペミンカプセルの有効成分であるロペラミドが入った市販薬は販売されています。
ロペラマックサット(佐藤製薬)
ペロット下痢止め(ゼリア新薬工業)
ロペラミドは医療用のロペミンカプセルと同じ1mgが含有されています。