「妊娠中だけどインフルエンザにかかってしまった・・・」
「授乳中だけど薬を服用して大丈夫ですか?」

薬局ではこのような質問を受けることがあります。

病院で処方されるインフルエンザ治療薬の内服と吸入薬は

  • タミフル
  • イナビル
  • リレンザ

の3種類があります。

それぞれの薬剤について妊娠・授乳中の服用についてまとめました。

タミフル妊娠中・授乳中の服用

妊娠中のタミフルの使用について、製薬メーカーの説明書では妊婦さんには「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」とされています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。

引用元 タミフル添付文書

アメリカのFDA基準では5段階中3番目に安全の「C」に位置付けられています。

動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること。

授乳中については製薬メーカーの添付文書によると「授乳を避けること」とされています。

授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。
ヒト母乳中へ移行することが報告されている。

引用元 タミフルインタビューフォーム

しかし、実際に母乳に移行する量は母親の体重換算量の0.5%とごくわずかで、赤ちゃんに影響が少ないことから海外の基準では「比較的安全」に位置付けられています。

「L2」 概ね適合(比較的安全):probably compatible
少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。

そのため「授乳を続けていい」と指導されるケースもありますが、赤ちゃんへのインフルエンザ感染に注意が必要です。

イナビル妊娠中・授乳中の服用

イナビルの妊婦への使用について、製薬メーカーの説明書では「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」とされています。

イナビルについては米国FDA基準やオーストラリア基準にはデータがありません。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。また、動物実験(ラット)で胎盤通過性が報告されている。

引用元 イナビル添付文書

また授乳中については「授乳を中止すること」とされています。

授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。
動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。

引用元 イナビル添付文書

 

Medications and Mothers’ Milk基準といった海外の基準にデータはありません。

リレンザ妊娠中・授乳中の服用

リレンザの妊娠中の使用ですが、製薬メーカーの添付文書では「治療上の有益性が危険性を上回る場合にOK」とされています。

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人に投与する場合には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。動物実験 (ラット、ウサギ)で胎盤通過性が報告されている。]

アメリカのFDA基準では5段階中3番目に安全の「C」に位置付けられています。

動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること。

授乳中の場合、製薬メーカーの説明書では「授乳を避けさせること」とされています。

授乳婦に投与する場合には授乳を避けさせること。[授乳婦に対する安全性は確立していない。動物実験(ラット)で乳汁中に移行することが報告されている。]

引用元 リレンザ添付文書

大分県の産婦人科医会、小児科医会、薬剤師会の研究チームでは「通常の使用であれば危険はない」とされています。

ヒトでの情報はない。消化管からの吸収率は2%と低く、通常の使用で 乳児に危険を及ぼすことはないと考えられる。

引用元 大分県「妊婦と薬剤」研究会