NHKのガッテンで話題になった睡眠薬のベルソムラ(一般名:スボレキサント)。

従来のベンゾジアゼピン系非ベンゾジアゼピン系の睡眠薬とは違った作用機序で自然に近い眠りに近づけるのが特徴です。

ベルソムラについて不眠症に効くメカニズムや作用時間、服用の注意点についてまとめました。

作用機序(メカニズム)・オキシレチンとは?

ベルソムラ(スボレキサント)は「覚醒」を抑えることで、
覚醒と睡眠のバランスを「睡眠」に傾け自然に近い眠りに導きます。

細かいメカニズムについて説明します。

脳の視床下部では「覚醒」に関与するオレキシンという物質が分泌されています。

オキシレチンがオキシレチン受容体に結合すると、
「覚醒」を維持するように働きます。

ベルソムラ(スボレキサント)は「オレキシン受容体拮抗薬」と呼ばれ、
オキシレチンがオキシレチン受容体に結合するのを邪魔することで、覚醒を抑えるのです。

オレキシン受容体には「OX1」「OX2」と2つのタイプが存在するのですが、
ベルソムラ(スボレキサント)は両方の受容体にオキシレチンが結合するのを邪魔します。

効果発現時間・持続時間(Tmax・半減期T1/2)

製薬メーカーの資料(インタビューフォーム)によると、
ベルソムラ(スボレキサント)40mgを空腹時に1回服用した時に、
血中濃度が最大になるまでの時間であるTmax(読み方:てぃーまっくす)は1.5時間、
血中濃度が最大に達したあと、血中濃度が半分ずつに分解されていく時間(T1/2または半減期)は10時間となっています。

つまり、服用後1.5時間で血中濃度は最大に達し、その後10時間おきに薬の血中濃度が半分ずつに分解されていきます。

一般的には持続時間は6〜8時間といわれています。

翌日への持ち越し(次の日の朝まで薬の効き目が残ること)は少ないと言われていますが、
僕が薬局で患者さんと接する中で、次の日の朝がしんどくなっり、頭がぼーっとすると訴える患者さんも時々いらっしゃいます。

寝る直前に服用・食後には飲まない

ベルソムラは就寝「直前」に服用することとなっています。

食後に服用することで血中濃度が最大になるまでの時間(Tmax)が1時間延びてしまうことが報告されているためです。

日本人データ本剤40mgを低脂肪食摂取後に単回経口投与した場合、空腹時と比較してスボレキサントのCmaxは23%増加したが、AUCは変化しなかった。Tmaxは1時間延長した。

引用元 ベルソムラ インタビューフォーム

お酒(アルコール)との併用

「ベルソムラを服用しているけどお酒は飲んでいい?」

薬局でも時々聞かれる質問ですが、ベルソムラを服用中に「お酒は避けること」となっています。

ベルソムラとアルコールを併用することで「ふらつき」「めまい」などが増強してしまう可能性があるからです。

副作用(疲労・頭痛・悪夢)

ベルソムラ(スボレキサント)の頻度の高い副作用として、疲労、頭痛、悪夢などがあります。
服用を続けて体のだるさが残る、頭痛が我慢できない、悪夢が続くなどの症状があれば主治医に相談するようにしましょう。

クラリス・クラリシッド(クラリスロマイシン)と併用禁忌

風邪の時に処方される抗菌薬、クラリスやクラリシッド(一般名:クラリスロマイシン)とベルソムラは一緒に服用できない「併用禁忌」となっています。

ベルソムラは肝臓のCYP3A(シップスリーエー)という代謝酵素によって代謝されるのですが、クラリスロマイシンがCYP3Aの働きを邪魔するため、ベルソムラの代謝がされにくくなり血中濃度が上がりすぎてしまうからです。

基本的には薬剤師が飲み合わせのチェックをし、問題がある場合はお薬を切り替えるように医師に疑義照会をしてくれますが、万が一、ベルソムラとクラリス、クラリシッド、ジェネリックであればクラリスロマイシンが処方されている場合は主治医に伝えるようにしましょう。

ベルソムラと併用禁忌薬一覧・CYP3A を強く阻害する薬剤

ベルソムラと併用禁忌の薬の一覧です。

下記の薬剤は代謝酵素であるCYP3A4を強く阻害するため、ベルソムラの血中濃度が顕著に上昇してしまいます。

絶対に一緒には服用できない薬ですので注意しましょう。

一般名商品名
クラリスロマイシンクラリス
クラリシッド
イトラコナゾールイトリゾール
リトナビルノービア
サキナビルインビラーゼ
ネルフィナビルビラセプト
インジナビルクリキシバン
テラプレビルテラビック
ボリコナゾールブイフェンド