動脈硬化は脂質異常症(高脂血症)がリスクファクターとなります。
脂質異常症でも、特にTG(中性脂肪)が高いこと、small dense LDL(小型の悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が減少した状態が動脈硬化のリスクを高めるとされています。
そのため悪玉コレステロール(LDL)だけでなく、善玉コレステロール(HDL)や中性脂肪(TG)のコントロールも不可欠です。
脂質異常症の中でもTG(中性脂肪)が高い方や、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い方に処方されるのがフィブラート系に分類される薬です。
日本では2017年に承認されたフィブラート系の薬剤がパルモディア錠(ペマフィブラート)です。
2018年1月時点ではまだ薬価収載されておりません。
作用機序(メカニズム)
パルモディア(ペマフィブラート)がなぜ中性脂肪を下げたり善玉コレステロール(HDL)を上げるのか、作用機序(メカニズム)について説明します。
ここからは少し専門用語もでてきますがご了承ください。
パルモディア(ペマフィブラート)は肝臓のペルオキシゾーム増殖剤活性化受容体α(PPARα:読み方ピーパーアルファ)を活性化させる働きがあります。
PPARαを活性化することで大きく2つの作用があります。
- 中性脂肪(TG)の合成を抑え、分解を促進し血中TGを下げる
- HDLコレステロール(善玉)を上昇させる
それぞれの作用機序について説明していきますね。
中性脂肪の低下作用
PPARαが活性化されると、中性脂肪を分解するLPLが活性化されます。
LPLには中性脂肪を遊離脂肪酸とグリセリンに分解する作用があります。
またパルモディア(ペマフィブラート)は肝臓での中性脂肪の合成も抑える働きがあります。
HDLコレステロールの増加作用
PPARαが活性化されるとHDLコレステロールの構成成分であるApoA-1やABCA-1というタンパク質を増加させ、HDLコレステロールを増加させます。
PPARαの選択的モジュレーター(SPPARMα)
PPARにはα(アルファ)、γ(ガンマ)、δ(デルタ)とあるのですが、パルモディア(ペマフィブラート)はαに選択的に作用することからSPPARMα(スパームアルファ)といわれます。
SPPARMα
=Selective Peroxisome Proliferator-Activated Receptor Modulatorα
既存のフィブラート系薬剤に比べてPPARαへ選択性が高いのが特徴です。
悪玉コレステロール(LDL)上昇の可能性あり
パルモディア(ペマフィブラート)を投与し、LDL-コレステロール(LDL-C)値の上昇するケースがありますので定期的に検査をすることとされています。
併用禁忌薬・理由
パルモディア(ペマフィブラート)と一緒に併用できない併用禁忌の薬は下記のとおりです。
併用禁忌薬 成分名 | 理由 |
---|---|
サンディミュン ネオーラル シクロスポリン | OATP1B1、OATP1B3、CYP2C8、CYP2C9、CYP3Aの阻害作用によりパルモディアの血中濃度上昇 |
リファジン リファンピシン | OATP1B1、OATP1B3の阻害作用によりパルモディアの血中濃度上昇 |
フィブラートとスタチンとの併用
脂質異常症の治療薬で悪玉コレステロール(LDL)を低下させるスタチン系といわれる薬剤と、フィブラート系の薬剤を併用する場合、腎機能に検査異常がある方では横紋筋融解症の副作用の発現率が高まるため原則として併用しないこととされています。
しかしパルモディア(ペマフィブラート)についてはスタチン薬との併用の臨床実験で、有害事象の発生率に差がなかったと報告されています。
スタチン系の薬一覧
- メバロチン(成分:プラバスタチン)
- リボバス(成分:シンバスタチン)
- ローコール(成分:フルバスタチン)
- リピトール(成分:アトルバスタチン)
- リバロ(成分:ピタバスタチン)
- クレストール(成分:ロスバスタチン)
妊娠・授乳中の服用
パルモディアは妊婦さんには禁忌(きんき)となっており「投与しないこと」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと。(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)
引用元 パルモディア錠インタビューフォーム
妊娠を希望する場合は早めに主治医に伝えるようにしましょう。
また授乳中は母乳中に移行するため授乳中の方には避けて、やむを得ず処方する場合は「授乳を中止すること」となっています。