C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV:hepatitis C virus)に感染することで罹患します。
自覚症状が乏しく、感染から平均して20年〜40年かけて肝硬変や肝臓癌を発症するとされています。
C型肝炎の従来の治療はインターフェロン(IFN)療法が主流でした。
しかしIFNは発熱、頭痛、倦怠感、抑うつ症状などの副作用によってQOLの低下が問題となります。
そこで登場したのが直接作用型抗ウイルス薬、通称DAA(Direct Acting Antiviral)です。
インターフェロンは免疫作用を高めてC型肝炎ウイルスの増殖を抑えますが、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は名前の通りウイルスに直接作用し、肝細胞での増殖を抑えます。
直接作用型抗ウイルス薬でアメリカの製薬会社のアッヴィが開発したマヴィレット配合錠は、インターフェロンやリバビリンといった従来のC型肝炎治療薬の併用が不要な薬剤です。
マヴィレット配合錠がどのような薬剤なのか、C型肝炎ウイルスに効果を示すメカニズム(作用機序)や薬の飲み方について解説していきます。
C型肝炎のタイプとマヴィレットの効能・効果
C型肝炎ウイルスはウイルスの遺伝子型(ジェノタイプ)により1〜6が存在します。
日本人のジェノタイプは下記のとおりです。
()は日本人のC型肝炎の割合。
- ジェノタイプ1a (なし)
- ジェノタイプ1b(約70%)
- ジェノタイプ2a(約20%)
- ジェノタイプ2b(約10%)
上記のタイプによって治療方針が異なりますので、ジェノタイプを調べてから治療が行われます。
ジェノタイプ1はインターフェロンが効きにくく、ジェノタイプ2はインターフェロンが効きやすいといった特徴があります。
マヴィレット配合錠はジェノタイプ1、2にも効果を示すだけでなく、3〜6に対しても効果を示します。
マヴィレット配合錠の効能・効果です。
C型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善
代償性肝硬変とは、肝臓の機能が残った状態のことで、進行すると肝臓が機能しなくなる非代償性肝硬変となります。
治療期間は最短8週間〜12週間で、1日1回3錠を食後服用でSVR率(C型肝炎ウイルスの持続陰性化率)がおよそ100%となっています。
8週間投与での治療は日本ではマヴィレット配合錠が初となります。
以下に治療実績をピックアップします。
直接作用型抗ウイルス薬未治療のC型慢性肝炎患者への8週間治療で,ジェノタイプ1は99.1%(105/106),ジェノタイプ2は97.8%(88/90)のSVR12(投与終了後12週時点の持続性ウイルス学的著効率)を達成した。
直接作用型抗ウイルス薬未治療のC型代償性肝硬変患者への12週間治療で100%(58/58)のSVR12率を達成した。
直接作用型抗ウイルス薬既治療)のC型慢性肝炎及びC型代償性肝硬変患者への12週間治療で,93.9%(31/33)のSVR12率を達成した。
引用元 マヴィレット配合錠 インタビューフォーム
マヴィレット配合錠の有効成分
マヴィレット配合錠の1錠中には下記の2つの成分が配合されています。
- グレカプレビル (GLE)100mg
- ピブレンタスビル(PIB)40mg
マヴィレット配合錠の作用機序
C型肝炎ウイルスの蛋白にはウイルス粒子を形成する構造蛋白と、ウイルスの複製に関わる非構造蛋白が存在します。
直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は非構造蛋白に作用し、C型肝炎ウイルスの複製を抑えます。
より細かい作用点は下記の図のとおりです。
DAAが主に作用するのはC型肝炎ウイルスの非構造蛋白領域に存在するNS3/A4、NS5A、NS5Bです。
- NS3/4A
HCVの蛋白の適切な切断に関与 - NS5A
HCV複製過程で複合体の形成に関与 - NS5B
HCVのRNA複製に関与
マヴィレット配合錠が作用する部位はNS3/4AとNS5Aで、下記の2つの成分による異なるアプローチでC型肝炎ウイルス(HCV)の増殖を抑えます。
グレカプレビル(GLE)
HCV 遺伝子にコードされる複合タンパク質のプロセシング及びウイルス複製に必須な HCV NS3/4Aプロテアーゼを阻害
ピブレンタスビル(PIB)
C型肝炎ウイルスのRNA複製やウイルス粒子の構築や放出に関わるHCV NS5Aを阻害
マヴィレット配合錠の用法・用量
- セログループ1(ジェノタイプ1)またはセログループ2(ジェノタイプ2)のC型慢性肝炎の場合
通常,成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回,食後に経口投与する.投与期間は8週間とする.なお,C型慢性肝炎に対する前治療歴に応じて投与期間は12週間とすることができる.
引用元 マヴィレット配合錠 添付文書
- セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のC型代償性肝硬変の場合
- セログループ1(ジェノタイプ1)又はセログループ2(ジェノタイプ2)のいずれにも該当しないC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変の場合
通常,成人には1回3錠(グレカプレビルとして300mg及びピブレンタスビルとして120mg)を1日1回,食後に経口投与する.投与期間は12週間とする.
引用元 マヴィレット配合錠 添付文書
C型慢性肝炎 | C型代償性肝硬変 | |
---|---|---|
ジェノタイプ1 | 8週間 前治療歴に応じて12週間 | 12週間 |
ジェノタイプ2 | 8週間 前治療歴に応じて12週間 | 12週間 |
上記以外 | 12週間 | 12週間 |
飲み忘れた場合の対応
通常は服用予定から18時間以内の場合は気づいた時に服用することとされています。
18時間を超えた場合は、1回分をとばして次回分から通常量を服用します。