気管支炎や気管支喘息に処方される去痰薬がムコソルバン錠(成分名:アンブロキソール塩酸塩)です。
ムコソルバンは錠剤だけでなくシロップタイプ(内用液)やドライシロップが販売されています。
「授乳中だけど服用できる?」
「ムコソルバンはムコダインと違いはあるの?」
「市販薬は売ってる?」
ムコソルバン錠について薬局で聞かれる質問を中心にまとめてみました。
作用機序
ムコソルバン(アンブロキソール)がなぜ痰に効果があるのか?
作用機序について説明したいと思います。
ムコソルバン(アンブロキソール)には主に下記の3つの作用があります。
- サーファクタント(肺表面活性物質)分泌促進作用
- 気道液の分泌促進作用
- 線毛運動亢進作用
ムコソルバンは気道を潤すことによって痰を外に排出しやすくする働きがあります。
ムコダイン(Lカルボシステイン)との違い
去痰薬でよく使われるものにムコダイン錠(成分名:Lカルボシステイン)があります。
ムコソルバンは気道潤滑薬といわれているのに対して、ムコダインは気道粘液修復薬といわれています。
細菌やウイルスが入った時、人間の防御作用が働き、細菌やウイルスが体の奥まで入らないように粘度の高い膜を作り、外敵をくっつけます。
しかし、この防御システムが過剰に働くと痰の粘性が強くなり、痰を外に出し辛くなってしまいます。
ムコダインには粘液の構成バランスを整えるとともに、障害された粘膜上皮を正常化し痰を外に出す働きがあります。
一方でムコソルバンは気道を潤すことによって痰を外に排出します。
ジェネリック医薬品・ムコサールとの違い
ムコソルバン錠にはジェネリック医薬品(後発医薬品)が多数販売されています。
アンブロキソール塩酸塩錠〇〇といって成分名+メーカー名が薬の名前となっています。
サワイ製薬やトーワ薬品、日医工などから発売されています。
またムコソレート錠もムコソルバンのジェネリック医薬品です。
ムコサール錠という薬がベーリンガー社から販売されていますが、ムコソルバンと効能・効果や成分は全く同じとなっています。
1日1回で効くL錠・Lカプセル
ムコソルバン錠剤は1錠中にアンブロキソールが15mg含まれており、1日3回で服用しますが、1日1回でゆっくり長く効くムコソルバンLカプセルまたはムコソルバンL錠が発売されています。
ムコソルバンLにはアンブロキソール塩酸塩徐放剤が45mg含まれており、1日1回服用すれば1日中効果があります。
特に朝の痰が切れにくい方には効果的と言われています。
妊娠・授乳中の服用
「妊娠中だけどムコソルバンは服用できる?」
患者さんから聞かれることがありますが、製薬メーカーの説明書では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与することとなっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
引用元 ムコソルバンインタビューフォーム
また授乳中の服用については、製薬メーカーの説明書では「授乳を避けさせること」となっています。
授乳中の婦人には本剤投与中は授乳を避けさせること。[動物実験(ラット)で母乳中へ移行することが報告されている。]
引用元 ムコソルバンインタビューフォーム
製薬メーカーの説明書では少しでも母乳に移行する薬は「授乳を中止すること」となっています。
しかし実際に母乳に移行するのはごくわずかでほとんど問題にならないケースが実は多くあります。
大分県の産婦人科医会と小児科医会、薬剤師会の研究チームの発表ではムコソルバンと授乳との関係について下記のように発表しています。
授乳婦服用による有害事象の報告が見当たらない。小児に適応を持ち、移行したとしても問題にならないと思われる
引用元 大分県「母乳と薬剤研究会」
そのためムコソルバンが処方されても「授乳を続けてもいい」と指導するドクターもいらっしゃいますが大きな問題はないと考えられます。
市販薬は発売されている?
「ムコソルバン(アンブロキソール)の市販薬はある?」
薬局でも聞かれることがありますが「アンブロキソール」だけが入った市販薬は発売されていません。
アンブロキソールが配合された総合かぜ薬としてエスタックイブファインEXやコルゲンコーワIB透明カプセル、パブロンエースAXなどがあります。