バセドウ病などの甲状腺機能亢進症に処方される薬がメルカゾール(成分名:チアマゾール)です。
メルカゾールについて作用機序や薬局で患者さんから質問を受ける内容をまとめました。
メルカゾール(チアマゾール)の作用機序
メルカゾール(チアマゾール)は甲状腺ホルモンの生産を抑える作用があるため甲状腺機能亢進時に処方されます。
どのように甲状腺ホルモンの生成を抑えるのか、作用機序について簡単に説明したいと思います。
甲状腺ホルモンは、ヨウ素と、アミノ酸の一種であるチロシンによって生成されます。
メルカゾールは甲状腺ホルモンの元となるヨウ素の生成を抑えることで甲状腺ホルモンの生成を抑えます。
では、メルカゾールがどのようにヨウ素の生成を抑えるのでしょうか。
ヨウ素は体の中でヨウ素化合物がペルオキシダーゼという酵素によって分解され作られるのですが、メルカゾールはペルオキシダーゼを阻害することで、ヨウ素化合物からヨウ素が作られるのを阻害するのです。
副作用でかゆみ・脱毛ある?
メルカゾールを服用すると頻度は不明ですが「発疹やじんましん」「皮膚のかゆみ」が報告されています。
発疹やじんましんが出た場合は基本的に薬剤を切り替えますが、症状が軽い場合は抗ヒスタミン薬といわれる薬で様子をみます。
また皮膚の痒みに関しても、痒み止めの塗り薬や抗ヒスタミン薬と呼ばれる内服薬が処方されることがあります。
「脱毛」も頻度不明で報告されています。
メルカゾールの副作用は下記のとおりです。
頻度不明 | |
肝 臓 | AST(GOT)上昇、ALT(GPT)上昇等 |
皮 膚 | 脱毛、色素沈着、瘙痒感、紅斑等 |
消化器 | 悪心・嘔吐、下痢、食欲不振等 |
精神神経系 | 頭痛、めまい、末梢神経異常等 |
過敏症 | 発疹、蕁麻疹、発熱等 |
筋・骨格 | こむらがえり、筋肉痛、関節痛 |
血液 | 好酸球増多 |
その他 | CK(CPK)上昇、倦怠感、リンパ節主張、唾液腺肥大、浮腫、味覚異常(味覚原体を含む) |
併用(飲み合わせ)に注意する薬
「メルカゾールを服用しているけどロキソニン(ロキソプロフェン)を飲んでいい?」
「風邪薬との飲み合わせは?」
といった飲み合わせについて聞かれることがあります。
メルカゾールを服用中に併用に注意しないといけないのは、血液が固まるのを防ぐワーファリン(成分名:ワルファリン)やジゴキシンなどのジギタリス製剤です。
ロキソニンやバファリン、風邪薬、葛根湯などの飲み合わせは問題ありません。
妊娠・授乳中の服用
妊娠中のメルカゾールの服用ですが、「治療上の有益性が上回る場合のみ投与すること」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される 場合にのみ投与すること。[本剤はヒト胎盤を通過することが報告されている。]
引用元 メルカゾールインタビューフォーム
「授乳中はメルカゾール服用しても大丈夫?」
と聞かれることがありますが、製薬メーカーの説明書では「授乳を避けることが望ましい」となっています。
本剤投与中は授乳を避けさせることが望ましい。[ヒト母乳中へ移行(血清とほぼ同等レベル)し、乳児の甲状腺機能に影響を与えることがある。]
引用元 メルカゾールインタビューフォーム
しかし、大分県の小児医会、産婦人科医会、薬剤師会による資料によると1日10mgまでなら授乳と両立可能となっています。
10mg/日までなら授乳と両立可能
10mg/日以上であれば乳児の甲状腺機能が正常か確かめる必要がある