甲状腺ホルモンの合成や分泌が障害されることで起こる甲状腺機能低下症に処方される薬がチラーヂンS(成分名:レボチロキシンナトリウム水和物)です。

チラーヂン

出典 あすか製薬

チラーヂンについて特徴や薬局で患者さんから聞かれる質問についてまとめました。

甲状腺ホルモンとは?種類や役割

甲状腺ホルモンは首にある甲状腺から分泌されるホルモンで、全身の細胞に働き代謝を高める作用があります。

甲状腺ホルモンには、トリヨードチロニン(別名:トリヨードサイロニンまたはT3)とチロキシン(別名:サイロキシンまたはT4)があるのですが、1日あたり、T3が約4μg分泌、T4が約80μg分泌され、体にはチロキシン(T4)が多く存在しています。

甲状腺ホルモンが多くなると、動悸発汗体重減少体が疲れやすくなるといった症状がでます。
甲状腺ホルモンが多くなる代表的な病気がバセドウ病です。

一方、甲状腺ホルモンが少なくなると皮膚の乾燥脱毛むくみなどが現れます。
先天的な甲状腺機能低下症であるクレチン症や甲状腺の炎症が原因となる原発性甲状腺機能低下症があります。

チラーヂンSの成分・規格

チラーヂンS錠の有効成分ですが、レボチロキシンナトリウム水和物という甲状腺ホルモン(T4)が入っています。

チラーヂンS錠は含有するレボチロキシンナトリウム水和物の量によって、12.5μg、25μg、50μg、75μg、100μgの5種類があり、症状に合わせて量を細かく設定します。

チラーヂンS錠の効能・効果・作用機序

チラーヂンS錠の効能・効果は下記の通りです。

粘液水腫、クレチン病、甲状腺機能低下症(原発性及び下垂体性)、甲状腺腫

これらの疾患によって低下した甲状腺ホルモンを補うのがチラーヂンS錠です。

副作用でやせる?ダイエットになる?

チラーヂンS錠は甲状腺ホルモンなのですが、甲状腺ホルモンは体の代謝を高めるため、頻度は不明ですが「体重減少」の副作用が報告されています。

しかしダイエット目的で自己判断で服用したり量を増やすのは極めて危険です。必ず主治医の指示のもと、治療を目的として服用しましょう。

またその他の副作用として、頭痛筋肉痛動悸発汗などの副作用がでることがあります。

妊娠・授乳中の服用

「妊娠中だけどチラーヂンS錠は赤ちゃんに影響でますか?」

時々患者さんから聞かれますが、医師の指示のもと正しく服用している限り問題はないと考えられます。

以下の製薬メーカーの見解を抜粋します。

甲状腺ホルモンは胎盤をほとんど通過しないため、胎児への副作用はない。母体の甲状腺ホルモンが不足していると間接的に(胎盤の発育が悪くなるために)胎児に影響し、流産、早産、 胎児発育不全等を起こしやすい。このため、妊娠を維持させるためにも、適正量の甲状腺ホルモン剤の投与による補充療法が大切である。

引用元 チラーヂンS錠インタビューフォーム

また授乳中の服用については下記の通りです。

甲状腺ホルモンが乳汁中にどの程度分泌されるかについては一定した成績がなく、乳児に対する意義は不明である。母親の血中甲状腺ホルモンを正常に維持する量であれば、乳汁中に正常者と同じ量が分泌されるはずであり、投与した甲状腺ホルモン剤は、乳児に悪影響を及ぼさない

引用元 チラーヂンS錠インタビューフォーム

医師の指示のもと、適正にチラーヂンS錠を限りでは、授乳を中止することなく服用して問題ないと考えられます。