こんにちは。

現役薬剤師のYuです。

今回は注意欠陥/多動性障害について解説していきます。

注意欠陥/多動性障害は通称AD/HD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)とも言われ、7歳未満に発症する発達障害のひとつです。

AD/HDの症状、治療薬の特徴について解説していきます。

注意欠陥・多動性障害(ADHD)症状

AD/HDの主な3症状は

  • 不注意
  • 多動性
  • 衝動性

です。

忘れ物が多かったり、約束を守れない、気が散りやすいなどの不注意
落ち着きがない多動性
順番が待てない、思ったことを口にするなどの衝動性

どの症状が主になるのかによってAD/HDは下記の3つに分類されます。

  • 不注意優勢型
  • 多動性・衝動性優勢型
  • 混合型

AD/HDの中でも混合型が8割近くを占めています。

注意欠陥・多動性障害の理由・原因

注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の主な原因は脳の前頭前野での機能障害で、脳内伝達物質のドパミンやノルアドレナリンの作用不足がみられます。

また脳の前頭前皮質において神経間の情報伝達が弱くなっているとも考えられています。

注意欠陥/多動性障害(AD/HD)治療薬一覧

注意欠陥/多動性障害(AD/HD)の治療は環境調整・支援・精神療法といった非薬物療法薬物療法があります。

非薬物療法で効果がなかった場合に、薬物療法を行うケースもあれば、最初から薬物療法で治療が行われるケースもあります。

ADHDに効能・効果のある薬剤は下記のとおりです。

分類成分名商品名
中枢刺激メチルフェニデート塩酸塩コンサータ
非中枢刺激  アトモキセチン塩酸塩ストラテラ
グアンファシン塩酸塩インチュニブ

 

コンサータ(メチルフェニデート)作用機序・特徴

コンサータ(メチルフェニデート)は神経細胞間での情報伝達物質であるドパミンノルアドレナリンの量を増やすことで不注意、多動性、衝動性を改善します。

細胞から脳内放出されたドパミンやノルアドレナリンはトランスポーターというトンネルのような場所から細胞内に回収されてしまいます。

コンサータ(メチルフェニデート)はトランスポーターをブロックするため、脳内から細胞内に回収されるドパミンやノルアドレナリンを減らします。

そのため脳内のドパミンやノルアドレナリンが増えるのです。

またコンサータ(メチルフェニデート)には脳に直接作用してドパミンを放出させる作用もあるのが特徴です。

服用後、速やかに効果が発現し、12時間持続するように設計されています。

コンサータは徐放製剤といって徐々に薬が溶け出すように設計されているため、割ったり、粉砕することはできません。

食欲減退悪心不眠体重減少が主な副作用です。

向精神薬に指定されており、依存性もあることから登録された医師しか処方することができません。

ストラテラ(アトモキセチン)作用機序・特徴・副作用

ストラテラ(アトモキセチン)は脳内の神経細胞間での情報伝達物質であるノルアドレナリンの量を増やすことで不注意、多動性、衝動性を改善します。

細胞から脳内放出されたノルアドレナリンの一部は、ノルアドレナリントランスポーターというノルアドレナリンが回収されるトンネルのような場所から細胞内に再取り込みされてしまいます。

ストラテラ(アトモキセチン)はノルアドレナリントランスポーターをブロックするため、脳内から細胞内に回収されるノルアドレナリンを減らします。

そのため脳内のノルアドレナリンの量を増やすことができるのです。

一般的には小児期のAD/HDでは服用後2週目から改善症状がみられるとされています。

小児における主な副作用は頭痛食欲減退傾眠腹痛悪心です。

インチュニブ(グアンファシン)作用機序・特徴・副作用

インチュニブ(グアンファシン)は選択的α2Aアドレナリン受容体作動薬といわれ、脳内の神経伝達物質の調整異常を改善する働きがあると考えられています。

AD/HDでは脳の前頭前皮質において神経間の情報伝達が弱くなっていると考えられています。
インチュニブ(グアンファシン)によって脳のアドレナリンα2A受容体が刺激されると、シグナル伝達が増強されAD/HDを改善させると推測されています。

α2Aアドレナリン受容体を刺激すると血管を拡張させる作用があることから降圧剤として使用されていたこともありました。
グアンファシン塩酸塩の有効成分とする薬剤としては過去にエスタクリック錠0.5mgという名前で、本態性高血圧治療薬として販売されていました。

そのため血圧の低下や徐脈がみられることがあり、急に薬を増やしたり、飲むのを止めたりするのは避けなければいけません。

インチュニブ(グアンファシン)の主な副作用は傾眠血圧低下頭痛となっています。