前立腺肥大症によって「おしっこの切れが悪い」「おしっこが出にくい」といった排尿障害時に処方されるのがユリーフ錠(一般名:シロドシン)です。
ユリーフはα1アドレナリン受容体遮断薬と呼ばれる薬なのですが、従来のα1受容体遮断薬は心臓の血管を広げてしまうことから、「ふらつき」「立ちくらみ」などの副作用が問題でした。
ユリーフは前立腺により選択的に効くように設計され、血圧低下などの副作用が少ない薬です。しかし射精障害や下痢といった副作用が多いデメリットがあります。
ユリーフの作用機序、射精障害や下痢の副作用が起こる理由について解説していきます。
α1受容体の種類(サブタイプ)と存在部位
ユリーフ(シロドシン)の作用機序や副作用が起こるメカニズムを理解するために、α1受容体の種類について説明いたします。
α1受容体にはα1A、α1B、α1Dの3つがあり、それぞれ存在する部位に違いがあります。
α1受容体サブタイプ | 存在部位 |
---|---|
α1A | 前立腺・消化管 |
α1B | 血管 |
α1D | 前立腺・膀胱 |
作用機序(メカニズム)・排尿障害とは?
前立腺は尿道のまわりを取り囲むように存在しています。
前立腺が肥大すると前立腺が尿道を圧迫し、下記のような排尿障害が起こります。
排尿障害の症状
・頻尿
・尿閉
・残尿感
・尿失禁(尿が漏れる)
・尿の量が多いor少ない
・排尿時の痛み
ユリーフ(シロドシン)は前立腺や前立腺部尿道に多く存在するα1A受容体を選択的にブロックすることで前立腺の平滑筋を弛緩させ、尿道内の圧力を下げて排尿困難を改善します。
射精障害(逆行性)の副作用が起こる理由
ユリーフ(シロドシン)では非常に高い確率で射精障害(逆行性射精など)が起こります。
本剤は副作用の発現率が高く,特徴的な副作用として射精障害が 高頻度に認められているため,本剤の使用にあたっては,本剤のリスクを十分に検討の上,患者に対しては副作用の説明を十分に行っ た上で使用すること。
引用元 ユリーフ インタビューフォーム
年齢は65歳未満の方に多く見られています。
射精障害の年齢別発現率は65歳未満33.3%(26/78 例)65歳以上13.4%(13/97例)であり,65歳未満の患者に多く認められた。
引用元 ユリーフ インタビューフォーム
射精障害が起こる理由ですが、精管や精囊にもα1A受容体が存在していることから、ユリーフを服用することによって精管や精囊の内圧が低下し、精液が尿道に送ることができなくなるからです。そのため逆行射精などの射精障害が起こってしまいます。
また副作用は可逆的ですので、ユリーフを中止すると回復します。
下痢・軟便の副作用が起こる理由
ユリーフの副作用の中で多く報告されているのが、下痢や軟便といった消化器の副作用です。
シロドシン(カプセル)承認時までに実施された排尿障害患者対象臨床試験の総症例 873例中,副作用は391 例(44.8%)で認められた。その主なものは,射精障害(逆行性射精等)150例(17.2%)口渇50例(5.7%)下痢35例(4.0%)軟便34例(3.9%)立ちくらみ31例(3.6%)鼻閉29例(3.3%)めまい23例(2.6%)ふらつき22 例(2.5%)頭痛19例(2.2%)などであった。
引用元 ユリーフインタビューフォーム
消化器の副作用が起こる理由ですが、α1A受容体は消化器にも存在し、消化器のα1A受容体を遮断することで消化器の運動が活発になり、下痢や軟便がでてしまいます。