吐き気を抑える薬で処方頻度の高い薬がプリンペラン錠(一般名:メトクロプラミド)です。
プリンペランについて
「なぜ吐き気に効くのか(作用機序)」
「飲み方」
「妊娠・授乳中の服用」
などプリンペランについての特徴や薬局で患者さんから聞かれる質問をまとめました。
プリンペランを服用する方の疑問が少しでも解消できると幸いです。
作用機序(メカニズム)
嘔吐には大きく分けて「中枢性」と「末梢性」に分類されます。
プリンペラン(メトクロプラミド)は中枢性嘔吐、末梢性嘔吐のどちらにも効果を示します。
中枢性嘔吐抑制作用
プリンペラン(メトクロプラミド)は脳の延髄にある嘔吐中枢の働きを抑え、吐き気を抑える作用があります。
末梢性嘔吐抑制作用
ドパミンが消化管にあるドパミンD2受容体に結合すると、胃腸の働きを活発にするアセチルコリンの分泌が抑えられてしまいます。
プリンペランは消化管のドパミンD2受容体をブロックすることで、アセチルコリンの分泌を増やし、吐き気を抑えます。
このように消化管と脳に作用することで幅広い嘔吐に効果を示すのが特徴です。
飲み方(食前に服用理由)
プリンペランは1日2~6錠を2~3回に分割し、食前に服用します。
食前とは食事の30分前です。
食前に飲む理由ですが、食事の30分前に服用することで、食事が胃腸に達する30分後に効果を最大にするためです。
効果がでる時間(Tmax)
プリンペランは服用して30分〜60分で効果がでてきます。
薬を服用して血中濃度が最大になるまでの時間をTmax(ティーマックス)というのですが、プリンペランのTmaxは約1時間となっています。
つまり、服用して1時間後くらいに効果を最大に感じることができ、即効性があるのが特徴です。
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持続時間(半減期・T1/2)
薬の血中濃度が最大に達したあと、半分の濃度に分解されていく時間をT1/2(ティーハーフ)または半減期といいます。
プリンペランのT1/2は4.7時間となっていて、服用して1時間後に最大濃度に達したのち、約5時間間隔で薬の濃度が半分ずつに分解されていきます。
効果を実感できるのは6〜8時間くらいですので、頓服の場合は6〜8時間間隔をあけるのが一般的な飲み方です。
妊娠中の服用(つわりに効く)
妊娠中の悪阻(つわり)はとても辛いですよね。
そんな悪阻時にプリンペランはよく処方されます。
「赤ちゃんに悪影響はでませんか?」
薬局でも時々心配そうに聞かれることがあります。
製薬メーカーの説明書では「危険性が有益性を上回る場合に投与」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]
引用元 プリンペラン添付文書
アメリカのFDA基準では5段階中2番目に安全の「B」に位置付けられています。
米FDA基準「B」
動物生殖試験では胎仔への危険性は否定されているが、ヒト妊婦での対照試験は実施されていないもの。あるいは、動物生殖試験で有害な作用(または出生数の低下)が証明されているが、ヒトでの妊娠初期3ヶ月では実証されていない、またその後の妊娠期間でも危険であるという証拠はないもの。
ヒトでは特に催奇形性の報告がないことから、主治医の指導のもと、適正量を服用していれば、神経質にならなくて問題ないと考えます。
授乳中の服用
授乳中の場合、製薬メーカーの説明書では「授乳を避けること」とされています。
授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合 は授乳を避けさせること。(母乳中に移行することが報告されている。)
引用元 プリンペラン添付文書
日本の基準では、少しでも母乳に薬が移行すると「授乳を中止すること」とされていますが、実際に母乳に移行する薬はごくわずかで赤ちゃんに悪影響がでないケースも多くあります。
プリンペランについて大分県の産婦人科医会、小児科医会、薬剤師会の研究チームによると「プリンペランは通常量の短期間であれば授乳との両立は可能」としています。
またプリンペランには母乳産生量を増やすことも報告されています。
母乳産生量を増やす。
通常量かそれ以下で 短期処方であれ 授乳と両立可能。引用元 大分県「授乳と薬剤」研究会
そのため、「授乳を続けても問題ない」と説明される医師もいらっしゃいます。
薬を服用する直前のタイミングで授乳をするように薬局で指導されるケースもあります。
授乳を中止するように言われた場合は、1日経てば薬はほぼ排泄されていますので、1日あけて授乳を開始すれば影響はより低くなると考えられます。
ジェネリック医薬品との違い
プリンペランには薬価がやや安いジェネリック医薬品が存在します。
- アノレキシノン錠5
- エリーテン錠5mg
- テルペラン錠5
- プラミール錠5mg
- メトクロプラミド錠5mg「ツルハラ」
- メトクロプラミド錠5mg「テバ」
先発品と比べて添加物に違いはありますが、有効成分や効能・効果は全く同じとなっています。