逆流性食道炎や胃潰瘍などで処方される薬がネキシウムカプセル(成分名:エソメプラゾール)です。
ネキシウムはオメプラール(成分名:オメプラゾール)の光学異性体といって、オメプラールを進化させた薬です。
オメプラールは代謝される酵素の関係から効果に個人差がありました。その個人差がより少なく改良されたのがネキシウムです。
ネキシウムについて薬局で患者さんから聞かれる質問を中心にまとめてみました。
効能・効果
ネキシウムの効能・効果は下記のとおりです。
・胃潰瘍、十二指腸潰瘍、吻合部潰瘍、逆流性食道炎、非びらん性胃食道逆流症、Zollinger-Ellison 症候群、非ステロイド性抗炎症薬投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制、低用量 アスピリン投与時における胃潰瘍又は十二指腸潰瘍の再発抑制 (10mgのみ)
・下記におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助
胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃 MALT リンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する 内視鏡的治療後胃、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
ピロリ菌に効く?
効能・効果にピロリ菌の除菌とあることから、ネキシウムだけでもピロリ菌を除菌できると思われる患者さんが時々いらっしゃいます。ピロリ菌の除菌の際はアモキシシリンとクラリスロマイシンといった抗生物質とセットで処方され、ネキシウム単独ではピロリ菌を除菌する効果はありません。
妊娠・授乳中の服用
妊婦さんについて製薬メーカーの説明書では「治療上の有益性が危険性を上回る場合に投与」となっています。
妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
[妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。]妊婦へのエソメプラゾールの曝露に関するデータは限られており、動物における試験では 胚・胎児の発生に及ぼす直接的あるいは間接的な影響は示唆されていない 。
引用元 ネキシウムインタビューフォーム
また授乳中については製薬メーカーの説明書では「授乳を避けること」となっています。
授乳期の女性における臨床試験は実施しておらず、ヒトでの乳汁への移行が明らかでない。なお、本剤のラセミ体であるオメプラゾール経口投与時によるラット授乳期投与試験においては、オメプラゾールの影響は認められなかったが、ラットの体内動態を検討した試 験では、オメプラゾールが乳汁中に移行することが認められている。
引用元 ネキシウムインタビューフォーム
しかし、海外の基準では授乳中のネキシウムの服用は比較的安全に位置付けられています。
L2概ね適合(比較的安全):probably compatible
少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。
日本では少しでも母乳に移行する薬剤は「授乳を中止すること」と定められています。
しかし実際に母乳に移行する量が極めて少なく、赤ちゃんに悪影響を与えないケースもあり、日本でもネキシウムを服用中に授乳してもOKと指示する医師もいらっしゃいます。
市販薬
「ネキシウムの市販薬はありますか?」
患者さんから時々聞かれる質問なのですが、2017年時点ではネキシウムの有効成分であるエソメプラゾールが入った市販薬は販売されていません。
ネキシウムに一番近い市販薬は、胃酸を抑える作用は劣りますがH2ブロッカーのガスター10になります。
お酒(アルコール)との飲み合わせ
「ネキシウムを服用中にお酒は飲んでいい?」
と質問を受けることがあります。
アルコールとネキシウムの飲みわせは問題はありませんが、お酒を飲みすぎることで胃に負担がかかることがありますので、治療中は最小限に抑えることをお勧めします。
コーヒー・紅茶などカフェインは極力避ける
コーヒーや紅茶などに含まれるカフェインは胃酸を分泌させる働きがあります。
ネキシウムは胃酸を抑える薬なので、ネキシウムを服用中はカフェインを含む飲料を大量に摂取するのは控えるようにしましょう。
脱カプセルできる?
胃瘻の際や、カプセルが飲めない場合に、
「カプセルを外して(脱カプセル)で飲んでいい?」
と聞かれることがあります。
結論からいいますとネキシウムは「脱カプセルOK 」です。
ネキシウムはカプセルの中に腸で溶ける顆粒が入っています。そのためカプセルを外して服用しても吸収に差はありません。
また長期保存についてですが製薬メーカーによると、顆粒の状態で25度、湿度60%で12ヶ月保存した実験で、変化は見られなかったそうです。
遮光して室温保存すれば問題ありませんが、もし可能であれば服用する直前にカプセルを外すのがいいでしょう。
主治医から指示がある場合は、薬局で脱カプセルをしてくれるケースもあります。