一度に吸入で治療が完了するインフルエンザ治療薬にイナビル吸入粉末剤(成分名:ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)があります。
イナビル吸入粉末剤ですが、2016年8月に子供(10歳未満)での予防投与の効能・効果を厚生労働省より取得したことから、大人、子供に対してインフルエンザの予防投与が可能となりました。
インフルエンザ予防投与の対象となる人は?
イナビルの大人、子供への予防投与が可能になりましたが、予防投与が可能となる対象者が定められています。
予防に用いる場合は、原則として、インフルエンザウイルス感染症を発症している患者の同居家族又は共同生活者である下記の者を対象とする。
(1) 高齢者(65 歳以上)
(2) 慢性呼吸器疾患又は慢性心疾患患者
(3) 代謝性疾患患者(糖尿病等)
(4) 腎機能障害患者
つまり、インフルエンザに感染した人と一緒に住んでいて、かつ上記の4つのいずれかに該当する方が対象となるのです。
けっこうハードルが高いですよね・・・。
受験を控えた小学生・中学生・高校生は対象
受験を控えていて、クラスでインフルエンザが大流行したとしても、同居者にインフルエンザの感染者がいて、かつ呼吸器疾患や心臓疾患、糖尿、腎機能障害がある方が予防投与の対象になります。
学校や幼稚園でインフルエンザが流行っているかといっても、同居者にインフルエンザの感染者がいなければ原則としては予防投与の対象外となってしまいます。
インフルエンザの予防投与は保険適応?自費?
インフルエンザの予防投与の場合、保険は適応できず、自費扱いとなります。
インフルエンザ予防投与のタイミング・期間
インフルエンザに感染した方と接触した2日以内(48時間以内)に予防投与をしなければ、予防投与の効果がないとされています。
また効果が持続する期間ですが、販売元の第一三共での実験では、インフルエンザ患者接触後2日以内に、イナビル投与10日間での予防投与の効果を評価期間としているため、目安としてはイナビルを吸入して10日間までと考えてよいでしょう。
イナビルのインフルエンザ予防投与の吸入方法
イナビルの予防投与について、大人と子供の吸入方法について解説します。
大人のイナビル予防投与方法
大人へのイナビルの予防投与の用法・用量です。
ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを1日1回、2日間吸入投与することもできる。
1回にイナビル2個を吸入して終了か、1回イナビル1個を2日間吸入する2つのパターンがあります。
1個には2充填されていますが、吸い残しを防ぐためにも、1充填分につき2吸入、イナビル1個につき4回吸入するようにしましょう。
子供のイナビル予防投与方法
子供へのイナビル予防投与の用法・用量です。
10歳未満の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして20mgを単回吸入投与する。
10歳以上の場合、ラニナミビルオクタン酸エステルとして40mgを単回吸入投与する。また、20mgを1日1回、2日間吸入投与することもできる。
10歳未満の場合は、1日1回イナビル1個を吸入して終了です。
10歳以上15歳未満の場合は、1日1回イナビルを2個吸入して終了か、1日1回イナビル1個吸入を2日間続ける2パターンがあります。
1個には2充填されていますが、吸い残しを防ぐためにも、1充填分につき2吸入、イナビル1個につき4回吸入するようにしましょう。
特にお子さんの場合は吸い残しが問題になりますので、吸入が弱いなと思った場合は、一つの容器で何度でも吸い直して問題ありません。
薬局での費用・価格は?
イナビルは2019年時点で1本あたりの薬価が2179円となっています。
薬局では受付基本料や調剤料が発生するため、薬価に加えて500円〜1000円が発生します。
解熱剤などが処方されなければ、薬局では自費で5000円〜6000円ほどとなります。
イナビルの予防投与の現状は?
僕が薬局薬剤師として活動する限り、インフルエンザの予防目的でタミフルやイナビルを処方されるケースを見ることはしばしばあります。
ここだけの話ですが、インフルエンザの診断はキットで陽性反応がでなくても主治医の判断で「インフルエンザ」と診断をつけることが可能です。
そのため、インフルエンザとして保険で処方するケースも実際にはありますが、原則インフルエンザの予防は自費で、かつ対象患者が限定されていることは覚えておきましょう。