C型肝炎はC型肝炎ウイルス(HCV:hepatitis C virus)に感染することで罹患します。

主な感染経路は輸血や医療行為、注射針の使い回しなどですが、感染原因が分からないといったケースも多いのが現状です。

自覚症状が乏しく、感染から平均して20年〜40年かけて肝硬変や肝臓癌を発症するとされています。

C型肝炎の従来の治療はインターフェロン(IFN)療法が主流でした。

しかしIFNは発熱、頭痛、倦怠感、抑うつ症状などの副作用によってQOLの低下が問題となります。

そこで登場したのが直接作用型抗ウイルス薬、通称DAA(Direct Acting Antiviral)です。

インターフェロンは免疫作用を高めてC型肝炎ウイルスの増殖を抑えますが、直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は名前の通りウイルスに直接作用し、肝細胞での増殖を抑えます。

直接作用型抗ウイルス薬でアメリカの製薬会社のギリアド社が開発したハーボニー配合錠は、日本人の7割を占めるジェノタイプ1b型のC型肝炎に対して著効率はほぼ100%となっています。

またインターフェロンのような重い副作用がなく画期的な薬剤です。

ハーボニー配合錠がどのような薬剤なのか、C型肝炎ウイルスに効果を示すメカニズム(作用機序)について解説していきます。

C型肝炎のタイプとハーボニーの効能・効果

日本人が罹患するC型肝炎は、ウイルスの遺伝子型により主に下記のように分類されます。
()は日本人のC型肝炎の割合。

  • ジェノタイプ1a (なし)
  • ジェノタイプ1b(約70%)
  • ジェノタイプ2a(約20%)
  • ジェノタイプ2b(約10%)

上記のタイプによって治療方針が異なりますので、ジェノタイプを調べてから治療が行われます。

ジェノタイプ1はインターフェロンが効きにくく、ジェノタイプ2はインターフェロンが効きやすいといった特徴があります。

ハーボニー配合錠の効能・効果です。

セログループ 1(ジェノタイプ 1)のC型慢性肝炎又はC型代償性肝硬変におけるウイルス血症の改善

ハーボニー配合錠は日本人のC型肝炎患者の7割を占めるジェノタイプ1型に効能・効果を取得しています。

代償性肝硬変とは、肝臓の機能が残った状態のことで、進行すると肝臓が機能しなくなる非代償性肝硬変となります。

治療期間は12週間で、1日1回の服用でSVR率(C型肝炎ウイルスの持続陰性化率)が100%となっています。

有効成分

ハーボニー配合錠には1錠中に下記の2成分が配合されています。

  • レジパスビル(LDV) 90mg
  • ソホスブビル(SOF) 400mg

ソホスブビルは商品名:ソバルディ錠として存在し、リバビリンとの併用でジェノタイプ2型に適応があります。

ハーボニー作用機序

C型肝炎ウイルスの蛋白にはウイルス粒子を形成する構造蛋白と、ウイルスの複製に関わる非構造蛋白が存在します。

直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は非構造蛋白に作用し、C型肝炎ウイルスの複製を抑えます。

より細かい作用点は下記の図のとおりです。

DAAが主に作用するのはC型肝炎ウイルスの非構造蛋白領域に存在するNS3/A4、NS5A、NS5Bです。

  • NS3/4A
    HCVの蛋白の適切な切断に関与
  • NS5A
    HCV複製過程で複合体の形成に関与
  • NS5B
    HCVのRNA複製に関与

ハーボニー配合錠が作用するのはNS5AとNS5Bで下記の2つのアプローチでC型肝炎ウイルス(HCV)の複製を阻害します。

ソホスブビル
HCVのRNA複製に関与するNS5Bプロテアーゼを阻害しRNA鎖伸長を直接停止 

レジパスビル 
HCVの複製とHCV粒子形成に必須のNS5Aを阻害

ソホスブビルはC型肝炎ウイルスの複製に関与する酵素であるNS5Bポリメラーゼを阻害することでC型肝炎ウイルスの増殖を抑制します。

ソホスブビルは服用後、肝臓で活性体のウリジン三リン酸型に代謝されます。

NS5Bポリメラーゼはヌクレオチドの取り込みを担っていますが、ソホスブビルの代謝物(ウリジン三リン酸型)は天然のヌクレオチドと構造が似ているため、NS5Bポリメラーゼが誤ってウリジン三リン酸型を取り込んでしまうためRNAの複製がストップされるのです。

このようにRNA鎖の伸長を停止させることから「チェーンターミネーター」とよばれます。

ソホスブビルは薬剤耐性が生じる頻度は低いと考えられています。

レジパスビルは「HCV NS5A複製複合体阻害薬」とよばれ NS5Aの二量体接合部分に作用し、NS5Aに歪みを与えHCVの複製を阻害します 。

主な副作用

製薬メーカーの資料(インタビューフォーム)での日本国内での臨床試験での報告によると157例中34例(21.7%)に副作用が認められ、主な副作用は、そう痒症5例(3.2%)、悪心及び口内炎各4例(2.5%)等となっています。

服用の注意点

ハーボニー配合錠は1日1回決められた時間に服用します。

飲み忘れた場合は、通常は気づいた時に1回服用することとなっています。

1回に2回分を服用するのは絶対に避けなければいけません。

ハーブティやサプリメントに含有されているセイヨウオトギリソウセントジョーンズワート)とは併用禁忌(へいようきんき)といって摂取してはいけません。

また下記の薬も併用禁忌とされています。

  • カルバマセピン(商品名:テグレトール)
  • フェニトイン(商品名:アレビアチン、ヒダントール)
  • リファンピシン(商品名:リファジン)

併用禁忌の理由ですが、P糖タンパクといって、細胞膜に存在し、都合の悪い物質を細胞外に排泄するポンプのようなもの数を、上記の薬が増やしてしまいハーボニー配合錠の効果が減弱してしまうためです。

このような併用禁忌薬は薬剤師がチェックをしてくれますが、健康食品やハーブなど摂取する際にも念のため薬剤師に相談するようにしましょう。