前立腺癌の中でも去勢抵抗性前立腺癌(読み方:きょせいていこうせいぜんりつせんがん)に適応のある抗アンドロゲン薬がザイティガ錠(一般名:アビラテロン酢酸エステル)です。
ザイティガ錠の作用機序や、空腹時に服用する理由、プレドニゾロンと併用する理由について解説していきます。
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)とは?
去勢抵抗性前立腺癌とはホルモン療法によって男性ホルモンの働きが抑えられているのにも関わらず悪化する前立腺癌のことをいいます。
前立腺癌細胞は男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて増殖します。
前立腺癌のホルモン療法ではアンドロゲンの分泌や作用を阻害して前立腺癌の増殖を抑えます。
しかしホルモン療法を続けていくと、効果が弱くなり、腫瘍マーカーであるPSAが上昇したり、前立腺癌が進行してしまうことが起こりまます。
このような状態を
去勢抵抗性前立腺がん(きょせいていこうせいぜんりつせんがん)
CRPC(castration-resistant prostate cancer)シーアールピーシー
と呼びます。
去勢抵抗性前立腺癌の専門的な定義は下記のとおりです。
外科的去勢、薬物による去勢状態で、かつ血清テストステロンが50ng/dL未満であるにもかかわらず病勢の増悪、PSAの上昇をみた場合、抗アンドロゲン剤の投与の有無にかかわらず、CRPCとする。
引用元 ザイティガ.jp
ザイティガ作用機序
前立腺癌細胞は男性ホルモン(アンドロゲン)の影響を受けて増殖しますので、単純にアンドロゲンの生成を抑えるか、アンドロゲンの働きを抑えればいいわけです。
ザイティガ(アビラテロン)はアンドロゲンの合成に関わるCYP17という酵素を阻害することでアンドロゲンの合成を阻害し、前立腺がんの増殖を抑えます。
CYP17は精巣・副腎皮質、前立腺腫瘍組織内にも発現していることから、精巣、副腎皮質、前立腺腫瘍からアンドロゲンが作り出されるのを阻害します。
より詳しい機序についてはこちらの図にまとめています。
空腹時に服用する理由
ザイティガ錠は空腹時に服用しなければいけません。
空腹時とは、食前1時間〜食後2時間の間を避けることをいいます。
ザイティガ錠を空腹時に服用する理由ですが、食後に服用すると吸収が高くなり血中濃度が上昇しすぎるためです。
食事30分後に服用した場合、通常の空腹時服用に比べて最大血中濃度Cmaxが7倍、薬のトータル的な血中濃度の指標であるAUCが5倍に増加したと報告があります(1)。
(1)ザイティガ錠インタビューフォーム
ザイティガ錠を飲み忘れた場合
ザイティガ錠の飲み忘れに気づいた場合、通常は気づいた時に食前1時間〜食後2時間を避けて空腹時に服用します。
また翌日からは決められた時間で服用しますが、前回の服用から最低8時間は間隔をあけることが望ましいとされています。
2日以上飲み忘れた場合は、主治医に連絡するようにしましょう。
プレドニゾロンと併用する理由
ザイティガ錠を単独で服用すると鉱質コルチコイドが上昇し、血圧が高くなるなどの事象が報告されています。
ザイティガは副腎皮質にも作用し、糖質コルチコイドの生成を抑えてしまいます。
副腎皮質からは糖質コルチコイド、鉱質コルチコイドといったステロイドが生成されているのですが、糖質コルチコイドの不足を感知した副腎皮質がステロイド合成系を活性化させます。
糖質コルチコイドの合成経路が阻害されているため、鉱質コルチコイドが上昇してしまうのです。
そのため糖質コルチコイドであるプレドニゾロンを予め投与しておくことで、鉱質コルチコイドの上昇を抑えられるのです。
通常はプレドニゾロン5mgが1日2回で処方されます。