扁桃炎や中耳炎、クラミジアの時に処方される抗生物質がクラリスロマイシン(先発品名:クラリス、クラリシッド)です。
クラリスロマイシンは処方頻度の高い抗菌薬であることから、薬局では患者さんから様々な質問を受けることがあります。
クラリスロマイシンについて薬局でよく聞かれる質問を中心にまとめてみました。
クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)の種類・規格
先発品
先発品はクラリス、クラリシッドの2種類になります。
クラリスは大正富山さんから、クラリシッドはアボットさんという製薬メーカーから販売されています。
クラリスの規格には
- クラリス錠200mg
- クラリス錠50mg小児用
- クラリスドライシロップ小児用10%
の3種類があります。
クラリシッドも同様に下記の3種類の規格となっています。
- クラリシッド錠200mg
- クラリシッド錠50mg小児用
- クラリシッドドライシロップ小児用10%
主なジェネリック医薬品
「これクラリスのジェネリック??」
最近ではジェネリック医薬品が多く使われています。
ジェネリック医薬品の場合、クラリスロマイシン〇〇〇と「成分名+メーカー名」の名前が付けられています。
僕が薬剤師として従事する中でよく処方されるクラリスの後発医薬品(ジェネリック)を挙げてみました。
- クラリスロマイシン錠200mg
日医工・トーワ(東和)・サワイ・MEEK・EMEC・NP・サンド・タナベ - クラリスロマイシン錠50mg小児用
タカタ・トーワ(東和)・日医工・MEEK・サワイ・NP - クラリスロマイシンドライシロップ小児用10%
サワイ・日医工・タカタ・MEEK・EMEC・トーワ(東和)
クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)の作用機序
クラリスロマイシンがなぜ抗菌作用があるのか?
作用機序について解説します。
クラリスロマイシンはマクロライド系抗菌薬に分類され、細菌の蛋白質が合成させるのを阻害します。
菌を殺すのではなく、菌が増殖していくのを抑える(静菌的)作用があります。
クラミジアには効くの?
クラミジア感染症には、クラリスロマイシン200mgを1日2回で服用します。
原則として14日間までが治療期間となります。
単独でピロリ菌に効く?
クラリスロマイシン単独ではピロリ菌の除菌はできません。
ピロリ菌の除菌ではアモキシシリン(抗菌薬)とPPIと呼ばれる胃薬の3つがセットで処方されますので、ピロリ菌の除菌は必ず医師から処方を受けてください。
インフルエンザに効く?
インフルエンザウイルスに感染した時にクラリスロマイシンが処方されることがあります。
クラリスはインフルエンザウイルスには効果はありませんが、2次的な気道感染を防止するために処方されることがあります。
また説明書には「インフルエンザ菌」に効果があるとなっていますが、インフルエンザ菌はインフルエンザウイルスとは全く異なり、中耳炎や副鼻腔炎の原因となる細菌です。
インフルエンザ菌が原因の中耳炎や副鼻腔炎ではクラリスロマイシンがよく処方されます。
妊婦(妊娠中)のクラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)使用
「妊娠中だけどクラリスを服用していい?」
こちらも患者さんからよく聞かれる質問の一つです。
製薬メーカーは「有益性が上回る場合のみ服用OK」となっています。
つまり、リスクとベネフィットを天秤にかけて「ベネフィットが上回る時だけ処方してくださいね」となっています。
製薬メーカーが発表している資料を抜粋します。
動物実験で、母動物に毒性があらわれる高用量において、胎児毒性(心血管系の異常、口蓋裂、発育遅延等)が報告されているので、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。
引用元 クラリス インタビューフォーム
このように動物実験で、たくさんの量を与えた時に奇形が報告されていますが、ヒト(妊婦)に適正使用した場合はクラリスロマイシンが原因となる胎児への有害事象は報告されていないようです。
一般感染症における使用成績調査及び特別調査において、本剤投与時の安全性検討対象となった妊婦は401例、出生児は372例であった。 妊娠中における本剤による副作用発現例は4例認められたが、軽度な嘔気2例、軽度な下痢1例、中等度の発疹1例であり、妊婦に特有なものではなく、本剤投与中止及び継続のまま処置薬投与にて軽快した。また、出生児 における異常所見として、「形態学的異常所見あり」が3例(胎児仮死、不全口唇裂、心房中隔欠損症が各1例)認められたが、いずれも本剤との関連はないと報告されている
引用元 クラリス インタビューフォーム
授乳中のクラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)服用
「授乳中だけどクラリスを飲んでいい?」と質問を受けることがあります。
クラリスロマイシンは母乳中に移行することが報告されており、製薬メーカーの説明書にはこのような記載があります。
ヒト母乳中へ移行することが報告されているので、授乳中の婦人には、本剤投与中は授乳を避けさせること。 なお、動物実験(ラット)の乳汁中濃度は、血中濃度の約2.5倍で推移した。
引用元 クラリス インタビューフォーム
しかし海外の基準ではクラリス(クラリスロマイシン)は最も安全のL1に位置づけられており、特に授乳を中止する必要はないとなっています。
L1 適合(安全):compatible
多くの授乳婦が使用するが、児への有害報告なし。対照試験でも児に対するリスクは示されず、乳児に害を与える可能性はほとんどない。又は、経口摂取しても吸収されない。
そのため実際の現場では「授乳を中止しなくても大丈夫」と指導されるケースもあります。
カロナールとクラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)の飲み合わせ
熱や痛みがある時にカロナールやコカールといった解熱鎮痛剤を一緒に処方されるケースがありますが、飲み合わせは問題ありません。
ロキソニンとクラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)の飲み合わせ
発熱や痛みでロキソニンもクラリスロマイシンと同時に処方されることがありますが、相互作用もなく飲み合わせに問題ありません。
お酒(アルコール)は飲んでいい?
「クラリスロマイシン服用しているけどお酒飲んでいい?」
薬局では時々質問を受けますが、クラリスロマイシンとアルコールの飲み合わせ自体は問題ありません。
しかし風邪の時などはお酒は極力控えた方がいいでしょう。
クラリスロマイシン(クラリス・クラリシッド)の副作用
クラリスロマイシンの主な副作用ですが、
悪心、嘔吐、胃部不快感、腹部膨満感、腹痛、下痢といった消化器系や発疹、肝機能の低下といった副作用が0.1~5%未満の確率ででてきます。
効能・効果・用法・用量
もう少しクラリスロマイシンについて詳しく知りたい方のために適応菌、適応症、用法・用量について説明したいと思います。
効能・効果と飲み方
クラリスロマイシン200mg(クラリス・クラリシッド)
適応菌
クラリスロマイシン感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、カンピロバク ター属、ペプトストレプトコッカス 属、クラミジア属、マイコプラズマ属、クラリスロマイシン感性のマイコバクテリウム属、クラリスロマイシン感性のヘリコバクター・ピロリ
適応症状
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、肛門周囲膿瘍、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、尿道炎、子宮頸管炎、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎、マイコバクテリウム・アビウムコンプ レックス(MAC)症を含む非結核性抗酸菌症、胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、特発性血小板減少性紫斑病、早期胃癌に対する内視鏡的治療後胃におけるヘリコバクター・ピロリ感染症、 ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎
用法・用量
一般感染症の場合
成人にはクラリスロマイシンとして1日400mg(力価)を2回に分けて経口投与する。
非結核性抗酸菌症の場合
成人にはクラリスロマイシンとして1日800mg(力価)を2回に分けて経口投 与する。
ピロリ菌の場合
成人にはクラリスロマイシンとして1回200mg(力価)、アモキシシリン水和物として1回750mg(力価)及びプロト ンポンプインヒビターの3剤を同時に1日2回、7日間経口投与する。 なお、クラリスロマイシンは、必要に応 じて適宜増量することができる。ただし、1回400mg(力価)1日2回を上限とす る。
クラリスロマイシン錠50小児用、ドライシロップ10%小児用
適応菌
本剤に感性のブドウ球菌属、レンサ球菌属、肺炎球菌、モラクセラ(ブランハメラ)・カタラーリス、インフルエンザ菌、レジオネラ属、百日咳菌、カンピロバクター属、クラミジア属、マイコプラズマ属、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)
適応症
表在性皮膚感染症、深在性皮膚感染症、リンパ管・リンパ節炎、慢性膿皮症 、 外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、肺膿瘍、慢性呼吸器病変の二次感染、感染性腸炎、中耳炎、副鼻腔炎 、猩紅熱 、百日咳 、マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)
用法・用量
一般感染症の場合
小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kg あたり10~15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。 レジオネラ肺炎に対しては、1日体重 1kgあたり15mg(力価)を2~3回に分 けて経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減す る。 ドライシロップ:用時懸濁し、通常、小児にはクラリスロマイシンとして1日 体重1kgあたり10~15mg(力価)を2 ~3回に分けて経口投与する。 レジオネラ肺炎に対しては、1日体重 1kgあたり15mg(力価)を2~3回に分けて経口投与する。
後天性免疫不全症候群(エイズ)に伴う播種性マイコバクテリウム・アビウムコンプレックス(MAC)症の場合
小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり15mg(力価)を2回に分けて経口投与する。 なお、年齢、症状により適宜増減する。
ドライシロップ:用時懸濁し、通常、小児にはクラリスロマイシンとして1日体重1kgあたり15mg(力価)を2回に分けて経口投与する。