緑内障、高眼圧症に処方される目薬がトラバタンズ(一般名:トラボプロスト)です。

トラバタンズの緑内障治療の作用機序や使用上の注意点についてまとめました。

作用機序(メカニズム)

トラバタンズ(トラボプロスト) は房水の排泄を促すことで眼圧を下げる作用があります。

眼圧は房水の産生と排泄によって調整されているのですが、
房水産生が多かったり、房水の排泄が上手くいかなくなると眼圧が上昇してしまいます。

緑内障治療薬は大きく分けて2つに分類されます。

  • 房水の産生を抑える薬
  • 房水の流出を促す薬

房水の流出を促す薬は「流出する経路」によってさらに2つに分類されます。

  • 繊維柱帯-シュレム管経路(主経路)
  • ぶどう膜強膜流経路(副経路)

房水の排泄の割合は繊維柱帯-シュレム管経路の方が高いため、
「主経路」は繊維柱帯-シュレム管経由、「副経路」がぶどう膜強膜流経由とされています。

トラバタンズ(トラボプロスト)は房水排泄促進薬の中でも副経路であるぶどう膜強膜流経路に作用する薬です。

もう少し詳しいメカニズムについて説明します。

体内にはPGF2αプロスタグランジンF2α)という物質があり、FP受容体に結合するとぶどう膜強膜流経路の抵抗が減り、房水の排泄が促される点に着目されて開発されました。

トラバタンズ(トラボプロスト)はプロスタグランジンF2αのようにFP受容体に作用し、ぶどう膜強膜流経路の抵抗を減らし、房水の排泄を促します。

そのためトラバタンズはプロスタグランジン関連薬PG薬)と呼ばれます。

「防腐剤」ベンザルコニウム塩化物(BAK)が入っていない

トラバタンズには防腐剤であるベンザルコニウム塩化物(BAK)が含まれていません。

ベンザルコニウム塩化物は多くの目薬の含まれる防腐剤ですが、角膜上皮に障害をあたえたり、結膜に悪い影響を及ぼす報告があることから、トラバタンズはベンザルコニウム塩化物非含有製剤となっています。

着色防止のために液を拭き取る

トラバタンズ(トラボプロスト)を点眼し、こぼれた液をそのままにしておくと、付着した場所が黒っぽく変色する「眼瞼色素沈着」の副作用が報告されています。

付着した皮膚にメラニンが増加することが着色の理由です。

そのため、点眼した後はティッシュなどで目の周りを拭くことが推奨されていますが、お風呂に入る前に点眼しお風呂で目の周りの皮膚を洗い流すか、もしくは点眼後に洗顔をするように僕は薬局で指導しています。

まつ毛が増えるメカニズム

トラバタンズを点眼すると、

まつ毛が増えた
まつ毛が濃くなった

といった眼周囲の多毛化の副作用が高い確率で報告されています。

トラバタンズ(トラボプロスト)のようなプロスタグランジン関連薬はまつ毛の成長期を延長させる作用があるためです。

片方の目だけに使用を続けると、片側だけのまつ毛が濃くなられる患者さんと遭遇することもあります。

点眼後に洗顔する理由は着色防止だけでなく、このような発毛を抑える目的もあるのです。