抗リウマチ薬はDMARD(ディーマード:disease modified anti-rheumatic-drug)と呼ばれ、大きく下記の3つに分類されます。
- 従来型抗リウマチ薬(csDMARD)
- 生物学的製剤(bDMARD)
- 分子標的型抗リウマチ薬(tsDMARD)
今回は分子標的型抗リウマチ薬(tsDMARD)でJAK阻害薬(ジャックソガイヤク)であるゼルヤンツ錠(トファシチニブ)について解説していきます。
JAK(ジャック)Janus Kinase(ヤヌスキナーゼ)とは?
関節リウマチによる滑膜の炎症は免疫細胞から産生される炎症性サイトカインが原因となります。
サイトカインとは細胞から分泌されるタンパク質で他の細胞に情報を伝える役割があります。
サイトカインは数百種類が存在しますが、関節リウマチ患者さんでは炎症反応を促す炎症性サイトカインが異常に分泌された状態となっています。
炎症性サイトカインは免疫細胞表面にあるサイトカイン受容体に結合後、サイトカインの刺激を細胞核まで伝えることで、さらに炎症性サイトカインを産生します。
下記の図のように炎症性サイトカインの刺激伝達によって、産生された炎症性サイトカインがまたサイトカイン受容体に結合し、さらに炎症性サイトカインを作り出すといった炎症のループを作りだします。
炎症性サイトカインが受容体に結合後、刺激を伝える際に働く酵素をJanus Kinase(ヤヌスキナーゼ)、略してJAK(ジャック)といいます。
関節リウマチの原因となる炎症性サイトカインのうち、JAKがシグナル伝達に関与しているものは下記のとおりです。
- IFN-α
- IFN-β
- IL-6,7,10,12,15,21,23
関節リウマチの患者さんはこれらの炎症性サイトカインが異常に分泌された状態となっています。
ゼルヤンツ(トファシチニブ)作用機序
ゼルヤンツ(トファシチニブ)は免疫細胞内に入りこみ、炎症性サイトカインの刺激の伝達を抑える酵素であるJAK(ヤヌスキナーゼ)の働きを阻害します。
JAKには下記の4種類が存在します。
- JAK1
- JAK2
- JAK3
- tyrosine kinase2(Tyk2)
ゼルヤンツ(トファシチニブ)は上記の中でもJAK1,JAK2,JAK3を標的にします。
JAKを阻害することで炎症性サイトカインが細胞核に伝達され、さらに炎症性サイトカインが生成されるの防ぎ炎症のループを食い止めるのです。
ゼルヤンツ(トファシチニブ)については生物学的製剤に匹敵するくらいの高い効果が認められていますが、使用実績が乏しいこともあり他の抗リウマチ薬で効果が不十分な場合にしか処方することができない薬剤となっています。