うつや、強迫性障害、社会不安障害で処方される薬がデプロメールまたはルボックスです。

どちらも同じフルボキサミンマレイン酸塩という成分の入った薬です。

薬局でよく聞かれる質問や注意が必要な飲み合わせについてまとめてみました。

デプロメール・ルボックスの作用機序

うつの状態では脳内の情報伝達物質であるノルアドレナリンセロトニンの働きが低下していると考えられています。

うつ病の原因は様々な仮説がありますが、ノルアドレナリンやセロトニンが低下している説をモノアミン仮説といわれます。

デプロメール、ルボックスは脳内でのセロトニン量を増やし神経伝達を増強させる働きがあります。

具体的は作用機序を解説していきます。

神経細胞(前シナプス)からノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質が放出され、次の神経細胞(後シナプス)に情報を伝えていきます。

神経細胞(前シナプス)から放出されたノルアドレナリンやセロトニンの一部はトランスポーターと呼ばれるトンネルのようなものによって神経細胞(前シナプス)に回収されてしまいます。

デプロメール、ルボックスはセロトニンが回収されるトランスポーターを阻害することで脳内のセロトニン濃度を上昇させ、うつなどを改善させる働きがあります。

デプロメール、ルボックスはセロトニンに対する選択性が高いことから、選択的セロトニン再取り込み阻害薬SSRI: Selective Serotonin Reuptake Inhibitors)と呼ばれます。

効能・効果

効能効果は下記の通りです。

うつ病・うつ状態、強迫性障害、社会不安障害

製薬メーカーの資料によると改善率は

うつ病・うつ状態患者における改善率は61.7%(282/457例)
強迫性障害患者における改善率は50.0%(37/74例)

となっています。

効果が出るまでの時間

一般的に服用後2週間くらいから効果がじわじわ出始めるといわれています。
飲み始めは特に吐き気やムカツキ、悪心がでますが消化器系の副作用は少しずつ弱くなってきます。

食事がとれない場合の服用

ルボックス・デプロメールは食事の影響を受けないため空腹時に服用しても効果には変わりありません。
しかし、ムカツキなど防止するために空腹時の服用は避けた方がいいでしょう。

併用禁忌の薬

ロゼレムとルボックス・デプロメールの併用

睡眠改善薬のロゼレム(成分名:ラメルテオン)と併用するとのロゼレムの最高血中濃度が顕著に上昇するとの報告があるため併用はできないこと(併用禁忌)となっています。

テルネリンとルボックス・デプロメールの併用

肩こりなどで処方されるテルネリン(成分名:チザニジン)と併用するとテルネリンの血中濃度が上がったり代謝のスピードが落ち、血圧低下等の副作用が発現するため併用はできないこと(併用禁忌)となっています。

オーラップ(ピモジド)とルボックス・デプロメールの併用

抗精神病薬のオーラップ(成分名:ピモジド)と併用するとオーラップの血中濃度が上昇することで、QT延長、心室性不整脈(torsades de pointesを含む)等の心血管系の副作用が発現するため併用はできないこと(併用禁忌)となっています。

セレギリン塩酸塩 (エフピー) とルボックス・デプロメールの併用

脳内セロトニン濃度が高まるため併用はできないこと(併用禁忌)となっています。

併用に注意する薬

セントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)含有食品との併用

セロトニン症候群等のセロトニン作用による症状があらわれるおそれがあるので、減量するなどして慎重に併用することとなっています。

ゾルピデム(マイスリー)とルボックス・デプロメールの併用

デプロメールやルボックスがマイスリーの代謝を阻害し、マイスリーの血中濃度が上昇することが報告されているため併用には注意するようになっています。

お酒(アルコール)とルボックス・デプロメールの併用

相互作用は認められていませんが、他の抗うつ剤で作用の増強が報告されているため飲酒は極力避けるようにとなっています。

デプロメール・ルボックスで太る?(体重増加)

デプロメールやルボックスの副作用で体重増加は起こりません。
同じSSRIだとパキシルが体重増加の副作用が報告されています。

妊婦・授乳中の服用

妊娠中のデプロメール・ルボックスの服用

製薬メーカーの説明書では

妊婦や妊娠している可能性のある婦人には、投与しないことが望ましい。また、投与中に妊娠が判明した場合は投与を中止することが望ましい。(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない。)

引用元 ルボックスインタビューフォーム

となっています。

妊娠末期に服用した妊婦から出生した新生児において、呼吸困難、振戦、筋緊張異常、痙攣、易刺激性、傾眠傾向、意識障害、嘔吐、哺乳困難、持続的な泣き等の症状が発現したとの報告があるそうです。

海外のFDAの基準ではカテゴリー「C」となっており、利益が危険性を上回る場合に使用することとなっています。

動物生殖試験では、胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること。

授乳中のデプロメール・ルボックスの服用

製薬メーカーの説明書では

授乳婦への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合は、授乳を避けさせることヒト母乳中へ移行することが報告されている)となっています。

しかし海外の基準では授乳中の服用は比較的安全(L2)となっています。

L2 概ね適合(比較的安全):probably compatible

少数例の研究に限られるが、乳児への有害報告なし。リスクの可能性がある根拠はほとんどない。

製薬メーカーの説明書では母乳に移行があれば「授乳は中止すること」となっていますが、実際は母乳中に移行するのはごくわずかで赤ちゃんに影響のないケースが多くあります。

海外の基準ではルボックスやデプロメールは比較的安全となっているため、授乳をしてもOKと指導されるケースもあります。