ベンゾジアゼピン系の抗不安薬の中でも長時間作用するのがセルシン錠またはホリゾン錠です。

どちらもジアゼパムという有効成分が入った先発医薬品になります。

セルシン・ホリゾンについて薬局で患者さんから聞かれる質問を中心にまとめてみました。

作用機序(メカニズム)

セルシンの有効成分であるジアゼパムはベンゾジアゼピン系(BZ系)と呼ばれる薬です。

ベンゾジアゼピン系薬剤は脳内のGABA(ギャバ)の機能を賦活化させることで効果を発揮します。GABAとは、ガンマアミノ酪酸といわれ、脳内の抑制系神経伝達物質と呼ばれます。

ジアゼパムが脳内にあるベンゾジアゼピン受容体に結合すると、GABAがGABA受容体に結合しやすくなり、細胞外にあるClイオンが細胞内に入り込み、興奮が伝わりづらくなります。

ジアゼパムは主に

  • 抗不安作用(中等度)
  • 筋弛緩作用(中等度)
  • 催眠作用(中等度)
  • 抗けいれん作用(中等度)

抗不安作用以外にも幅広く作用があるのが特徴です

効能・効果

セルシンの効能・効果は下記のとおりです。

神経症における不安・緊張・抑うつ
うつ病における不安・緊張
心身症(消化器疾患、循環器疾患、自律神経失調症、更年期障害、腰痛症、頸肩腕症候群)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ
下記疾患における筋緊張の軽減 脳脊髄疾患に伴う筋痙攣・疼痛
麻酔前投薬

ジェネリック医薬品との違い

セルシン錠には薬価が少し安いジェネリック医薬品が存在します。

  • ジアゼパム錠2「サワイ」
  • ジアゼパム錠2mg, 5mg, 10mg「ツルハラ」
  • ジアゼパム錠2mg, 5mg「トーワ」
  • ジアゼパム錠2mg, 5mg「アメル」
  • ジアパックス錠2mg, 5mg

添加物に違いはありますが、有効成分や効能・効果は全く同じとなっています。

効果発現時間・持続時間(Tmax・T1/2)

薬を飲み始めてから血中濃度が最大になるまでの時間をTmax(ティーマックス)、その後血中濃度が半分ずつに分解されていく時間をT1/2(ティーハーフ)または半減期といいます。

セルシン5mgを健康な成人に1回投与した時にTmaxとT1/2です。

TmaxT1/2
1.0hr 57.1hr 

 

セルシン5mgは服用後1時間で血中濃度が最大に達します。

そして57時間かけて血液中の薬の濃度が半分ずつ分解されていきます。

効果が持続する時間は8時間ほどになりますので、通常は1日2回〜4回に分けて処方されます。

デパス(エチゾラム)との違い・強さの比較

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の中で処方頻度が高いのがデパス(一般名:エチゾラム)です。

セルシンとデパスについて、
「即効性」「持続性」「強さ」の視点から違いを比較してみました。

即効性
セルシン>デパス
Tmaxはセルシン5mgが1hr、デパス2mgが3.3hr

持続性
セルシン>デパス
T1/2はセルシン5mgが57hr、デパス2mgが6.3hr

強さ(抗不安作用)
セルシン<デパス

筋弛緩作用はデパスの方がセルシンより強く、抗けいれん作用はセルシンの方がデパスより強いとされています。

妊娠・授乳中の服用

妊娠3ヶ月以内と妊娠後期には「治療上の有益性が危険性を上回る場合のみOK」となっています。

妊婦(3ヵ月以内)又は妊娠している可能性のある婦人には治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔動物実験により催奇形作用が報告されており,また,妊娠中に他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)の投与を受けた患者の中に奇形を有する児等の障害児を出産した例が対照群と比較して有意に多いとの疫 学的調査報告がある。〕

引用元 セルシン インタビューフォーム

 

妊娠後期の婦人には,治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。〔ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に哺乳困難,嘔吐,活動低下,筋緊張低下, 過緊張,嗜眠,傾眠,呼吸抑制・無呼吸,チアノーゼ,易刺激性,神経過敏,振戦,低体温,頻脈等を起こすことが報告されている。なお,これらの症状は,離脱症状あるい は新生児仮死として報告される場合もある。また,ベンゾジアゼピン系薬剤で新生児に 黄疸の増強を起こすことが報告されている。なお,妊娠後期に本剤を連用していた患者 から出生した新生児に血清 CK(CPK)上昇があらわれることがある。〕

引用元 セルシン インタビューフォーム

また授乳中には「授乳を中止すること」となっています。

授乳婦への投与は避けることが望ましいが,やむを得ず投与する場合は,授乳を避けさ せること。〔ヒト母乳中へ移行し,新生児に体重増加不良があらわれることがある。ま た,他のベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム)で嗜眠,体重減少等を起こすことが報 告されており,また黄疸を増強する可能性がある。〕

引用元 セルシン インタビューフォーム