「寒くなるとトイレの回数が増える・・・」
「トイレが我慢できない・・・」
「旅行先で尿を漏らさないか心配・・・」
薬局ではこのような相談を受けることがあります。
このような頻尿の時に処方される薬がバップフォー(一般名:プロピベリン塩酸塩)です。
バップフォーの特徴や服用時の注意点についてまとめました。
効能・効果
バップフォーの効能・効果は下記の通りです。
・下記疾患又は状態における頻尿、尿失禁
神経因性膀胱、神経性頻尿、不安定膀胱、膀胱刺激状態(慢性膀胱炎、慢性前立腺炎)
・過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁
神経因性膀胱とは?
尿が膀胱に溜まると膀胱から脳へ「トイレに行きなさい」という信号が送られます。
しかし、何らかの原因でこの信号がうまく送られなくなることを「神経因性膀胱」といいます。
原因としては脳梗塞・脳出血・パーキンソン病・糖尿病・脊髄損傷などがあります。
神経性頻尿とは?
神経性頻尿は「心因性」と「本態性」に分けられます。
心因性はストレス、不安、緊張といった「精神的な要因」で頻尿がおこります。
原因が分からない場合は本態性に分類されます。
不安定膀胱とは?
膀胱や神経に異常がないのにも関わらず少ない尿量でトイレに行きたくなり尿の回数が増える症状がでます。
過活動膀胱(OAB)とは?
過活動膀胱はTVCMでも耳にしたことがあるのではないでしょうか?
過活動膀胱はOAB(overactive bladder)とも呼ばれ、
おしっこに行きたい尿意切迫感を必須とし
- 頻尿(1日8回以上)
- 夜間頻尿(夜間1回以上)
に加えてトイレが間に合わずおしっこを漏らしてしまう「切迫性尿失禁」を伴うことがあります。
作用機序(メカニズム)
バップフォー(塩酸プロピべリン)は膀胱の収縮を抑えることで膀胱の蓄尿機能を高め、頻尿を改善します。
ではどのようにして膀胱平滑筋の収縮を抑えるのでしょうか?
メカニズムについて説明します。
※ここからは少し専門的な話になります。
バップフォー(塩酸プロピべリン)は下記の2つからアプローチし膀胱の収縮を抑えます。
- アセチルコリンがムスカリン受容体にくっつくのをブロックする
- カルシウムイオンが平滑筋細胞内に入るのをブロックする
アセチルコリンがムスカリン受容体に結合すると膀胱平滑筋が収縮します。
またカルシウムイオンがカルシウムチャネルを通って平滑筋細胞内に入ることでも膀胱平滑筋は収縮します。
バップフォーはこの2つの点に作用し、膀胱の収縮を抑えるのです。
またバップフォーは肝臓で代謝されるのですが、代謝物にも同様の作用があります。
口の渇きの副作用がでる?対処方法は?
バップフォー(塩酸プロピべリン)を服用すると高い確率で「口の渇き」がでます。
アセチルコリン(副交感神経)の働きをブロックしますので、交感神経が優位になります。
緊張すると口が渇いた経験はありませんか?
緊張すると交感神経が優位になるため「口の渇き」がでます。
バップフォーによる「口渇」も同じメカニズムなのです。
口の渇きがあるからといって「水」や「お茶」をたくさん飲んでしまうと頻尿が改善されません。
薬による口渇の場合、シュガーレスのアメやガムを摂取したり、唾液腺マッサージをするのがよいでしょう。
唾液腺マッサージについてはこちらに詳しくまとめられています。
飲み忘れた場合の対応
通常は飲み忘れた場合は気付いた時に服用するとされています。
次回の服用は8時間は間隔をあけるようにしましょう。
主治医から特別指示がある場合はそちらに従うようにしましょう。
市販の風邪薬との併用に注意
バップフォーはアセチルコリンの作用を抑えることから抗コリン薬といわれています。
市販の風邪薬の中で、鼻水を抑える薬や咳止めの中に「抗コリン作用」があるものがあります。
絶対に一緒に飲んではいけないわけではありませんが、口の渇き、便秘、眠気といった副作用が強く現れることがあります。
市販の薬を購入する際は、自己判断でなくかかりつけの薬剤師に相談してください。