高血圧や狭心症に処方される薬がコニール(成分名:ベニジピン塩酸塩)です。
コニールはジェネリック医薬品も多く存在し、ベニジピン塩酸塩錠+メーカー名の名前ででテバ製薬や日医工、トーワ薬品、サワイ製薬などから発売されています。
コニールを服用中の患者さんから
「薬局でグレープフルーツを避けるように言われたけど間隔あけたら食べていい?」
「ミカンも影響でる?」
といった相談を受けることがあります。
コニール(ベニジピン)についてグレープフルーツとの影響についてまとめてみました。
作用機序・血圧を下げるメカニズム
まず、コニール(ベニジピン)がなぜ血圧を下げるのか?
作用機序について簡単に説明したいと思います。
血管平滑筋や心臓の細胞内にCa(カルシウム)が流入することで血管が収縮します。
コニール(ベニジピン)はCa拮抗薬(かるしうむきっこうやく)と呼ばれ、血管平滑筋や心臓の細胞内にCaが流入するのを抑え、血管を広げます。
心臓や全身の血管を広げることで血圧を下げたり、狭心症に効果を示します。
グレープフルーツとの飲み合わせ・影響
コニール(ベニジピン)を服用中にグレープフルーツを摂取するとどのような影響がでるのでしょうか。
具体的な症状について説明したいと思います。
コニール(ベニジピン)を服用中にグレープフルーツやグレープフルーツジュースを摂取すると、コニールの最大血中濃度が1.7倍にまで増えることを大日本住友製薬が発表しています。
AUC上昇率 | Cmax上昇率 |
---|---|
159% | 173% |
少し専門的な話になりますが、AUCとは横軸に薬を飲み始めてからの時間、縦軸に血中濃度をとったグラフの総面積のことで、薬の効き目を現します。
コニールを服用中にグレープフルーツを摂取することで、AUCが1.6倍ほど上昇することが報告されています。
グレープフルーツを摂取すると薬が効きすぎてしまい、ふらつきや血圧低下などの副作用が強くでてしまう可能性があります。
グレープフルーツのフラノクマリンが代謝を阻害
なぜグレープフルーツを摂取するとコニール(ベニジピン)の血中濃度が上昇してしまうのでしょうか。
メカニズムについて簡単に説明したいと思います。
コニール(ベニジピン)を分解する小腸のCYP3A4(シップスリーエーフォー)と呼ばれる酵素をグレープフルーツの果実に多く含まれるフラノクマリン類が阻害するため、薬が分解されず、結果的に薬が効きすぎてしまいます。
本来ならコニール(ベニジピン)が小腸から血液中に吸収される過程で、消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4によって代謝・分解され、代謝・分解されない一部が血液中に吸収されています。
グレープフルーツによって消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4が不可逆的に阻害されると、消化管でのコニール(ベニジピン)の代謝が阻害され血液中に吸収される量が上昇してしまうのです。
間隔をあければグレープフルーツを摂取していい?
コニール(ベニジピン)は高血圧の場合1日1回、狭心症の場合は1日2回服用しますが、1日かけてゆっくりと分解されていきます。
そのためどれだけ間隔をあけてグレープフルーツを摂取してもコニール(ベニジピン)の分解が阻害されてしまいます。またグレープフルーツのCYP3A4阻害作用は不可逆的のため数日間回復しません。
コニール(ベニジピン)を服用中はたとえ間隔をあけてもグレープフルーツの摂取は控えた方がよいでしょう。
ミカンジュースとの飲み合わせ
グレープフルーツがダメならミカンも影響でるの?
と聞かれることがありますが、ミカンには代謝酵素を阻害する作用はないため一緒に摂取しても問題ありません。
しかしナツミカンやザボン、ボンタンにはCYP3A4を阻害することが報告されているため摂取は控えた方がよいでしょう。