高血圧や狭心症に処方される降圧剤がアダラート(成分名:ニフェジピン)です。

アダラートはジェネリック医薬品が存在し、ニフェジピン+メーカー名の名前でサワイ製薬トーワ薬品日医工から発売されています。

アダラートを服用中の患者さんから

「薬局でグレープフルーツは避けるように言われたけど間隔をあけたら摂取して大丈夫?」
「ミカンは一緒に食べてもいい?」

といった質問を受けることがあります。

アダラート(ニフェジピン)とグレープフルーツとの影響についてまとめてみました。

作用機序・血圧を下げる理由

アダラート(ニフェジピン)は血管を広げる作用があるため、高血圧の時に血圧を下げたり、狭くなった血管を広げ狭心症に効果を示します。

なぜ、アダラートが血管を広げる作用があるのか?

簡単に説明したいと思います。

アダラートはCa拮抗薬(カルシウム拮抗薬)に分類される降圧剤です。

血管平滑筋や心臓の細胞にCa(カルシウム)が流入すると全身や心臓の血管が収縮するのですが、アダラートはCaが血管平滑筋や心臓細胞に流入するのをブロックすることで血管を広げます。

このため、心臓の機能を抑えることなく血流を増やし、高血圧や狭心症に対して効果を発揮します。

グレープフルーツとの飲み合わせ

「アダラート(ニフェジピン)服用中はグレープフルーツを避けてください」

アダラートが処方された時、薬局でこのような説明を受けたことがあるかと思います。

大日本住友製薬が発表しているデータによると、アダラート(ニフェジピン)を服用中にグレープフルーツを摂取すると、最大血中濃度と薬の効き目が2倍ほどに増えることが報告されています。

Cmax上昇率AUC上昇率
104-194%108-203%

 

少し専門的な話になりますが、Cmaxとは血中の薬の濃度が最大になる濃度のことで、AUCとは時間を横軸に濃度を縦軸にとったときのグラフの総面積のことで薬のトータル的な効果の指標となります。

アダラートを服用中にグレープフルーツを摂取すると血圧が下がりすぎて、ふらつきなどの副作用も強くなってしまうため一緒に飲まないようにとなっています。

グレープフルーツだけでなく、グレープフルーツジュースも同様に避けなければいけません。

グレープフルーツと影響がでる理由・メカニズム

なぜ、アダラート(ニフェジピン)を服用中にグレープフルーツを摂取すると血圧が下がりすぎるのか?

メカニズムについて説明したいと思います。

アダラート(ニフェジピン)を分解する小腸のCYP3A4(シップスリーエーフォー)と呼ばれる酵素をグレープフルーツの果実に多く含まれるフラノクマリン類が阻害するため、薬が分解されず、結果的に薬が効きすぎてしまいます。

本来ならアダラート(ニフェジピン)が小腸から血液中に吸収される過程で、消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4によって代謝・分解され、代謝・分解されない一部が血液中に吸収されています。

グレープフルーツによって消化管の上皮細胞に存在するCYP3A4が不可逆的に阻害されると、消化管でのアダラート(ニフェジピン)の代謝が阻害され血液中に吸収される量が上昇してしまうのです。

間隔をあければグレープルフーツを摂取していい?

アダラートには1日効果(24時間持続)のあるアダラートCR(ニフェジピンCR)と半日効果(12時間持続)のあるアダラートL(ニフェジピンL)のタイプがあり、半日~1日かけてゆっくり分解されます。

そのため、たとえ間隔をあけてグレープフルーツを摂取したとしてもアダラートの分解が妨げられてしまうのです。

またグレープフルーツのCYP3A4阻害作用は不可逆的のため回復するまでに数日間かかります。

アダラートを服用中は間隔を空けたとしてもグレープフルーツは避けたほうがよいでしょう。

オレンジ・ザボン・ボンタン・ナツミカンの飲み合わせ

オレンジジュースやオレンジはCYP3A4を阻害する作用はないため、飲み合わせは全く問題ありません。

しかしサボンやボンタン、ナツミカンはCYP3A4の阻害作用が報告されているため、併用はオススメできません。