帯状疱疹の治療薬として2017年7月に承認された抗ヘルペスウイルス薬がアメナリーフ(アメナメビル)です。

帯状疱疹はヒトヘルペスウイルスの一つである水痘・帯状疱疹ウイルスVZV)が原因となります。

2〜8歳の小児が水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)に感染すると水疱瘡を引き起こします。

水疱瘡が治ったあとも水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は神経節に潜伏します。

加齢やストレスや疲労、悪性腫瘍、感染症、免疫を抑える薬、抗がん剤などが原因となり水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)が再び活発になると帯状疱疹を発症します。

帯状疱疹治療薬であるアメナリーフ(アメナメビル)の作用機序や既存の抗ヘルペスウイルス薬との違いについてまとめました。

アメナメビル作用機序

アメナリーフ(アメナメビル)はヘルペスウイルスのDNAの増殖を抑えます。

ヘルペスウイルスが増殖するためには、感染した人間の細胞核にDNAをコピーしていく必要があります。

DNAは2重らせん構造をしているのですが、DNAをコピーしていく際に2重らせん構造をほどかなければいけません。

DNAの2重らせんをほどく際に、ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体という酵素が働きます。

アメナリーフ(アメナメビル)はDNA複製の初期段階でヘリカーゼ・プライマーゼ複合体を阻害し、DNA2重らせん構造がほどかれるのを防ぎ、DNAの複製を開始させるRNAプライマーの合成を抑え、ヘルペスウイルスのDNAがコピーし増殖していくのを抑える働きがあります。

アシクロビル・バラシクロビル・ファムビルとの違い(作用機序)

帯状疱疹の治療薬として処方される抗ヘルペスウイルス薬として下記の3成分が存在します。

  • アシクロビル(商品名:ゾビラックス、アストリック)
  • バラシクロビル(商品名:バルトレックス
  • ファムシクロビル(商品名:ファムビル

これらの作用機序は同じで、ヘルペスウイルスが増殖する際に必要なDNAポリメラーゼという酵素の働きを阻害することからDNAポリメラーゼ阻害薬に分類されます。

一方でアメナリーフ(アメナメビル)が作用する点はDNAポリメラーゼ阻害薬より早い段階のため、既存薬より高い抗ヘルペスウイルス作用があると考えられています。

またDNAポリメラーゼ阻害薬が効果を発揮するには、ウイルスの酵素(チミジンキナーゼ)が必要になるのですが、チミジンキナーゼ遺伝子に変異が起こり、チミジンキナーゼが作られなくなると、薬が効きにくくなる耐性菌が現れることがあります。

アメナリーフ(アメナメビル)はDNAポリメラーゼ阻害薬と作用機序に違いがありますので、DNAポリメラーゼ阻害薬に耐性のあるヘルペスウイルスにも有効と考えられています。

アシクロビル・バラシクロビル・ファムビルとの違い(飲み方)

既存の抗ヘルペスウイルス薬は1日3〜5回服用する必要がありますが、
アメナリーフ(アメナメビル)は1日1回で治療が可能となっています。

一般名商品名帯状疱疹の飲み方
アシクロビルゾビラックス
ビクロックス
アストリック
アシビル
1日5回7日間まで
バラシクロビルバルトレックス1日3回7日間まで
ファムシクロビルファムビル1日3回7日間まで
アメナメビルアメナリーフ1日1回7日間まで

 

アメナリーフ(アメナメビル)は空腹時でなく食後

アメナリーフ(アメナメビル)は1日1回食後に服用する薬です。

「食欲ないけど空腹時に服用していい?」

空腹時に服用すると血中濃度が低下したり、効くまでの時間が遅くなることが報告されていますので、食後に服用する薬となっています。

主に肝臓で代謝・相互作用

アメナリーフ(アメナメビル)は主に肝臓のCYP3A(シップスリーエー)という酵素で代謝されます。

またアメナリーフ(アメナメビル)自体に肝臓の代謝酵素であるCYP3A、2B6を誘導することが報告されています。
 
そのためCYP3AやCYP2B6に影響のある薬と併用する際は注意しなければいけません。

併用禁忌薬(へいようきんきやく)

アメナリーフ(アメナメビル)と併用できない禁忌(きんき)の薬です。

  • リファンピシン(商品名:リファジン)

理由:相互のCYP3A誘導により、相互の薬剤の血中濃度が低下するため

併用注意薬(へいようちゅういやく)

アメナリーフ(アメナメビル)と併用に注意する必要のある薬です。

CYP3Aで主に代謝される薬剤

  • ミタゾラム
  • ブロチゾラム
  • ニフェジピン

など

理由:アメナリーフのCYP3A4誘導によりこれらの代謝が促進するため

CYP3Aを阻害する薬剤

  • リトナビル
  • クラリスロマイシン

など

理由:これらの薬剤がアメナリーフの代謝を阻害するため

CYP3Aを誘導する薬剤

  • リファブチン
  • カルバマゼピン
  • フェノバルビタール
  • セイヨウオトギリソウ

など

理由:相互に代謝が促進されるため

CYP2B6の基質となる薬剤

  • エファビレンツ

理由:アメナリーフのCYP2B6誘導によりこれらの代謝が促進するため