慢性閉塞性肺疾患(COPD)では気道が狭くなり息切れや息苦しさを感じやすくなります。
そのような状態に気道を広げる目的で処方される吸入薬がアノーロエリプタです。
アノーロエリプタについて作用機序や使い方についてまとめました。
有効成分
アノーロエリプタは「気管支の収縮を抑える成分」と、「気管支を拡張させる成分」が配合された吸入薬です。
有効成分 | 働き |
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ウメクリジニウム | 気管支の収縮を抑制 長時間作用性抗コリン薬 |
ビランテロール | 気管支を拡張 長時間作用性β2刺激薬 |
気管支の収縮を抑える成分がウメクリジニウムです。
ウメクリジニウムのみが入ったエンクラッセエリプタという吸入薬が存在します。
気管支を拡張させる成分がビランテロールです。
2017年現在でビランテロール単独の吸入薬は存在しません。
作用機序・メカニズム(LAMA+LABA)
アノーロエリプタは気管支の収縮を抑え、気管支を広げる2つの作用があります。
ここからは少し専門的なお話になります。
気管支収縮抑制作用(抗コリン作用)
気道平滑筋にはムスカリンM3受容体という部分があります。
そこにアセチルコリンが結合すると気管支が収縮します。
ウメクリジニウムは抗コリン薬といわれ、アセチルコリンが気管支に存在するムスカリンM3受容体に結合するのを邪魔することで気管支の収縮を抑えます。
ウメクリジニウムは持続性があることから長時間作用性抗コリン薬(LAMA:読み方ラマ)と呼ばれます。
気管支拡張作用(β2刺激作用)
アドレナリンβ2受容体という部分を刺激すると気管支が拡張します。
ビランテロールはβ2受容体を長時間刺激することで気管支を持続的に拡張させます。
ビランテロールも持続性があることから長時間作用性β2刺激薬(LABA:読み方ラバ)と呼ばれます。
このようにアノーロエリプタは抗コリン作用による気管支収縮抑制作用と、β2刺激作用による気管支拡張作用により、狭くなった気道を広げ、呼吸を楽にし、息切れを起こりにくくします。
吸入方法(使い方)
アノールは「エリプタ」という専用の吸入器で使用します。
①アノーロエリプタのカバーを「カチッ」と音がするまで開ける
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②息を吐き出した後にマウスピース(吸入口)をくわえる
↓
③強く深く吸い込む
↓
④苦しくない程度に息を止める(3〜4秒)
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⑤吸入口をティッシュなどで拭きカバーを閉じる
↓
⑥口の中とのどをうがいする
うがいをする理由
アノーロエリプタは「吸入後うがいをすること」と説明書に記載があります。
薬が口の中に残らないようにするために、口の中を「クチュクチュ」、のどを「ガラガラ」うがいするのが理想ですが、のどをガラガラうがいできない場合は口の中を洗い流すだけでも問題ないとされています。
どうしてもうがいや口の中を洗い流すことができない場合は飲み物を摂取するだけでも、口の中に薬剤が残ることを防止できます。
同じLAMA+LABAの配合剤であるスピオルトレスピマットやウルティブロ吸入カプセルについて製薬メーカーの説明書ではうがいの指示はありません。
ステロイド薬の場合は口腔カンジダや嗄声(させい)の防止目的でうがいは必須となります。
ステロイド以外の吸入薬について、説明書にうがいの指示がない場合でも薬剤師によっては「うがいを指示」するケースがあります。